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非公表裁決/20年前の同族会社への宅地の譲渡が不合理分割に該当するか?

相続開始の18年~20年前に行われた同族会社への不動産の譲渡が著しく不合理な分割に該当するものとして、当該譲渡前の画地を「1画地の宅地」として評価をすべきかどうかが争われた事案です。

宅地は利用の単位となっている1区画の宅地(1画地の宅地)を評価単位とすることとされていて、所有者が異なる宅地は、原則として、別々に評価すべきことになるのですが、贈与、遺産分割等による宅地の分割が親族間等で行われ、その分割が著しく不合理であると認められる場合における宅地は、その分割前の画地を「1画地の宅地」として評価することとされています(財産評価基本通達7-2(注))

この取扱いは、典型的には遺産分割による宅地の分割に適用されるものなのですが、必ずしも遺産分割による場合に限定されている訳ではなくて、国税庁の質疑応答事例では、亡父甲から以下の図のような宅地のうち、A部分を生前贈与により取得していた場合に、分割前の画地(A、B土地全体)を「1画地の宅地」として評価するのが相当であるとされていますし、財産評価基本通達の逐条解説では、「この取扱いは同族会社間等でこのような不合理分割が行われた場合にも適用される」と解説されています。

ただ、この裁決の事案では、被相続人が宅地の一部を同族会社に譲渡したのが相続開始の18年~20年前のことであったことから、そんなに昔の宅地の分割にも上記の取扱いが適用されることになるのかが問題となったのですが、審判所は、以下のように分割(譲渡)前の画地を「1画地の宅地」として評価すべきであるという判断をしました。

少し長いですが全部引用します。

イ 法令解釈等
評価通達7-2(1)は、宅地については、「1画地の宅地」(利用の単位となっている1区画の宅地)を評価単位とし、贈与、遺産分割等によって宅地の分割が行われた場合でも、原則として、分割後の画地を「1画地の宅地」として評価する旨定めているものの、同注書は、分割後の画地が宅地として通常の用途に供することができないなど、その分割が著しく不合理であると認められるとき(不合理分割となる場合)は、当該分割前の画地を「1画地の宅地」として評価することとされている。
これは、親族間等の特別な関係者間において、例えば、現実の利用状況を無視した分割により、無道路地、帯状地又は著しく狭あいな画地が創出されるなど、分割後の画地では現在及び将来においても有効な士地利用が図られないと認められる場合等、著しく不合理な分割が行われた場合に、当該分割後の画地を一つの評価単位として評価すると、評価対象地の実態には即さず、評価額が不当に低下して課税の公平を害することとなることから、このような場合には、実態に即した評価を行い、課税の公平に資するために、分割前の画地を1画地の宅地として評価することとしたものである。
そして、上記通達注書の趣旨は、上記のような不合理な分割が、売買など贈与以外の譲渡方式や、被相続人自ら又は親族の主宰する同族会社に対する譲渡という方法等によって行われた場合でも、同様にあてはまるものであるから、このような方式・当事者問によってされた不合理な分割についても、上記注書の「贈与、遺産分割等」や「親族間等」に含まれるものとして、不合理分割に該当し、当該注書が適用されると解するのが相当である。
ロ 認定事実
原処分庁関係資料、請求人ら提出資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
(イ) 本件士地1と■■■■との間に存する土地(本件隣接地1)の状況
本件隣接地1は、間口距離(■■■■との接面距離)が約70m、奥行距離が約4mである。
また、本件隣接地1は、本件譲渡1の前後を通じて、本件建物1の北側の平面駐車場及び通路等の施設の敷地の一部として利用されていた。
(ロ) 本件土地2と■■■■との間に存する土地(本件隣接地2)の状況
本件隣接地2は、間口距離(■■■■との接面距離)が約38m、奥行距離が約4mである。
また、本件隣接地2は、本件譲渡2の前後を通じて、本件建物2の敷地の一部として利用されていた。
(ハ) 本件土地3と■■■■との間に存する土地(本件隣接地3) の状況
本件隣接地3は、間口距離(■■■■との接面距離)が約30m、奥行距離が約15mである。
また、本件隣接地3は、本件譲渡3の前後を通じて、本件建物3の敷地の一部として利用されていた。
ハ 検討
(イ) 本件土地1の評価単位及び評価方法
A 本件土地1の評価単位を検討する前提として、本件譲渡1が不合理分割に該当するか否かについて検討する。
まず、上記1の(3)のロの(ロ)のB、上記(3)のロの(ニ)のA及び上記ロの(イ)からすれば、本件隣接地1は、本件譲渡1の前から本件相続開始日までの間、その直前の■■■■■■の閉店という事情はあったものの、本件士地1と一体として、本件建物1 及びその関連施設の敷地として■■■が管理•利用するという利用状況に変動はなかったものと認められる。
また、別紙4及び上記ロの(イ)のとおり、本件隣接地1は、東西に細長い帯状地であり、かつ、本件土地1と一体として利用されていたもので、上記(3)のハの(ロ)のAの本件地域における「標準的な宅地の地積」(5,500㎡から6,000㎡まで)に照らしても、本件隣接地1のみでは、現在及び将来においても有効な土地利用が図られないと認められる。
そして、上記1の(3)のロの(ロ)のB及び同(ヘ)のAからすれば、本件譲渡1は、本件被相続人及びその親族から、その親族が主宰する同族会社である■■■に対してされたものであると認められるところ、本件譲渡1により、本件被相続人共有の土地が主要地方道である■■■に接しないこととなり(別紙4)、本件土地1のみではその価額が大きく低下することになると認められる(当審判所の調査の結果)一方で、本件全証拠によっても、本件譲渡1について、合理的な理由があったものとは認められない。
以上のとおり、本件譲渡1により、本件被相続人が所有又は共有しない帯状地の本件隣接地1が創出されたというべきであり、一方、本件隣接地1は、本件譲渡1後も利用状況に変動はなく、さらに、本件譲渡1後の本件隣接地1の画地では、現在及び将来においても有効な土地利用が図られないと認められ、本件譲渡1は著しく不合理というべきであることから、本件譲渡1は、不合理分割に該当する。
B したがって、本件土地1は、評価通達7-2(1)本文及び注書により、本件隣接地1と合わせて「1画地の宅地」とし、これを一つの評価単位として、■■■に付された路線価を正面路線価、■■■■に付された路線価を側方路線価として評価するのが相当である。
(ロ) 本件土地2の評価単位及び評価方法
A 本件土地2の評価単位を検討する前提として、本件譲渡2が不合理分割に該当するか否かについて検討する。
まず、上記1の(3)のロの(ハ)のB、上記(3)のロの(ニ)のB及び上記ロの(ロ)からすれば、本件隣接地2は、本件譲渡2の前から本件相続開始日までの間、本件土地2の一部と一体とじて、本件建物2の敷地として利用されるという利用状況に変動はなかったものと認められる。
また、別紙4及び上記口の(ロ)のとおり、本件隣接地2は、東西に細長い帯状地であり、かつ、本件土地2と一体として利用されていたもので、上記(3)のハの(ロ)のAの本件地域における「標準的な宅地の地積」(5,500㎡から6,000㎡)に照らしても、本件隣接地2のみでは、現在及び将来においても有効な土地利用が図られないと認められる。
そして、上記1の(3)のロの(ヘ)のBからすれば、本件該渡2は、本件被相続人及びその親族から、その親族が主宰する同族会社である■■■に対してされたものであると認められるところ、本件譲渡2により、本件被相続人共有の土地が■■■■に接しなくなり、本件土地2のみでは、無道路地である(別紙4) から、有効な士地利用が図られず、その価額が大きく低下することになると認められる(当審判所の調査の結果)一方で、本件全証拠によっても、本件譲渡2について、合理的な理由があったものとは認められない。
以上のとおり、本件譲渡2により、本件被相続人が所有又は共有しない帯状地の本件隣接地2が創出されたというべきであり、一方、本件隣接地2は、本件譲渡2後も利用状況に変動はなく、さらに、本件譲渡2後の本件隣接地2のみ又は本件土地2のみでは、それぞれ現在及び将来においても有効な土地利用が図られないと認められ、本件譲渡2は著しく不合理というべきであることから、本件譲渡2は、不合理分割に該当する。
B そして、本件土地2の各土地は、上記1の(3)のロの(ハ)のBのとおり、本件相続開始日において、いずれも本件建物2及び本件立体駐車場の敷地として■■■に貸し付けられていたから、本件土地2は、評価通達7-2(1)本文及び注書により、本件隣接地2と合わせて「1画地の宅地」とし、これを一つの評価単位として、■■■■に付された路線価を正面路線価として評価するのが相当である。
(ハ)本件土地3の評価単位及び評価方法
A 本件土地3の評価単位を検討する前提として、本件譲渡3が不合理分割に該当するか否かについて検討する。
まず、上記1の(3)のロの(ニ)のB、上記(3)のロの(ニ)のC及び上記ロの(ハ)からすれば、本件隣接地3は、本件瞭渡3の前から本件相続開始日までの間、本件土地3と一体として、本件建物3の敷地として利用されるという利用状況に変動はなかったものと認められる。
また、別紙4及び上記ロの(ニ)のとおり、本件隣接地3は、不整形地であり、かつ、本件士地3と一体として利用されていたもので、上記(3)のハの(ロ)のAの本件地域における「標準的な宅地の地積」(5,500㎡から6,000㎡)に照らしても、本件隣接地のみでは、現在及び将来においても有効な土地利用が図られないと認められる。
そして、上記1の(3)のロの(ニ)のB及び(ヘ)のCからすれば、本件譲渡3は、本件被相続人及びその親族から、その親族が主宰する同族会社である■■■■に対してされたものであると認められるところ、本件譲渡3により、本件被相続人共有の土地が■■■■に接しなくなり、本件土地3のみでは、無道路地である(別紙4)から、有効な土地利用が図られず、その価額が大きく低下することになると認められる(当審判所の調査の結果)一方で、本件全証拠によっても、本件譲渡3について、合理的な理由があったものとは認められない。
以上のとおり、本件譲渡3により、本件被相続人が所有又は共有しない不整形地の本件隣接地3が創出されたというべきであり、一方、本件隣接地3は、本件譲渡3後も利用状況に変動はなく、さらに、本件譲渡3後の本件隣接地3のみ又は本件土地3のみでは、それぞれ現在及び将来においても有効な土地利用が図られないと認められ、本件譲渡3は著しく不合理というべきであることから、本件譲渡3は、不合理分割に該当する。
B したがって、本件土地3は、評価通達7-2(1)本文及び注書により、本件隣接地3と合わせて「1画地の宅地」とし、これを一つの評価単位として、■■■■に付された路線価を正面路線価として評価するのが相当である。

最初にこの裁決を読んだときは、相続開始の18年~20年前に行われた譲渡が不合理分割に該当するの?という違和感もあったのですが、本件土地1と本件土地2については、不合理分割に該当するという判断でよいのではないかと思います。

というのも、不合理分割の場合に分割前の画地で評価するという取扱いというのは、同族関係者間で不合理な分割がされている場合には、たとえ所有者が別であっても、分割前の画地が一体的に利用・処分されることが見込まれるということを根拠としているのだと思われるところ、本件土地1と本件隣接地1/本件土地2と本件隣接地2のように隣接する帯状地と無道路地が別々に利用・処分されることは考え難いからです。

他方で、本件土地3については微妙な気がします。

本件隣接地3は、間口が約30m、奥行が約15m、地積が450㎡の土地ですので、それだけで利用・処分される可能性があるように思えるからです。

裁決では、本件地域における「標準的な宅地の地積」が5,500㎡から6,000㎡であることを理由に、本件隣接地3のみでは有効利用できないと判断しているのですが、そのことだけで奥行きが十分にある450㎡の本件隣接地3が本件土地3と別々に利用・処分されることが考え難いとまでいえるのかという疑問は残ります。

ただ、土地3だけが問題となった場合であれば兎も角として、土地1や土地2に関して同じ時期に不合理分割が行われていることからすると、土地3についても不合理分割であると判断されたのは仕方がないのかもしれません。

この裁決と同じような事案というのはあまりなさそうではあるのですが、一般論として、時間が経過していても不合理分割の取扱いが適用される可能性があるということには注意が必要なのだろうと思います。

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