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オペラ「カーリュー・リヴァー」(ブリテン)

ようこそ、CLASSIC BAR VERSTECKへ。


さて、"本日のオススメ"は、ブリテン作曲の『オペラ「カーリュー・リヴァー」』です。(数字は20-400・名曲解説全集第20巻P398)


ベンジャミン・ブリテン先生。 1913年-1976年(63歳)の、イギリスの作曲家ですね。


アマチュアのソプラノ歌手を母にもち、7歳ころにはピアノを、のちにヴィオラなどを学び始めます。5歳で歌曲を、7歳でピアノ曲を、9歳で弦楽四重奏曲を作曲した、早熟な方でした。

11歳のころには、ブリッジ先生の曲を聴き感銘を受け、ブリッジ先生もブリテン先生の才能を認め、和声法や対位法の本格的な指導が始まります。

17歳ころには、王立音楽大学に入学し、作品番号のつく作り始めました。

卒業後は映画会社に入り、ドキュメンタリー映画や記録映画のための伴奏音楽を作曲する仕事を行っていました。


24歳ころには、師である『フランク・ブリッジの主題による変奏曲』を作曲し、国際的な名声を得て、この作品は出世作となりました。

26歳ころには、第2次世界大戦の戦火・兵役を避けるため、アメリカに渡りますが、まだ戦争中である29歳ころ(1942年)に、結局イギリスへ戻ります。

32歳ころには、このアメリカ時代に収集した題材をもとに、オペラ『ピーター・グライムズ』が初演され、成功をおさめます。33歳ころには『青少年のための管弦楽入門』を、36歳ころには『春の交響曲』など、ブリテン先生の代表作が次々と作られていきました。


日本との関係もあり、27歳ころには「皇紀2600年奉祝曲」の依頼を受け、『シンフォニア・ダ・レクイエム』を作曲。内容的に日本側がNGを出し、この機会に演奏されることはありませんでしたが、のちにアメリカで初演されています(「皇紀2600年奉祝曲」は、山田耕筰先生のオペラ『黒船』の回で出てきましたね)。

また、43歳ころには日本を訪れ、NHK交響楽団を指揮し、自作を演奏しています。この来日の際、能楽『隅田川』を鑑賞し、深い感銘を受けて教会上演用の寓話『カーリュー・リヴァー』を生み出すことになります。

能の、無駄のない簡素で厳しい様式美、力強い謡の詠唱、謡と1つになる鼓や笛のおどろおどろしい不気味な音楽、四方を客席にした舞台。

イギリスへ戻った後もこの事は頭から離れず、『カーリュー・リヴァー』として結実することになります。

15世紀の能のストーリーを、イギリスの教会内で行われる中世の奇蹟劇に、都鳥の鳴く隅田川をダイシャクシギ(カーリュー)の鳴く川(カーリュー・リヴァー)に、仏教的なものをキリスト教的なものに置き換えます。

この勢いは止まらず、『燃える炉』『放蕩息子』まで続き、「教会オペラ3部作」へと結実しました。

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あらすじ、概要

このオペラの音楽の全てが内包された古今聖歌「この日も終わりぬ」を唱え、登場すると、暗闇の中に金の十字架が浮かび上がります。演奏者も修道服を着て、観客は会衆としてその場に参加することになります。

修道院長が、「先日起こったカーリュー川のほとりで神の恩恵を受けて正気に戻った奇蹟の劇を見せよう」と語ると、修道士たちは衣装を変え、奇跡劇が始まります。

カーリュー川の船頭が、旅人を船に乗せていると、不思議な女性の声がします。船頭は、さらわれた一人息子を探し求めているうちに、気がおかしくなってしまったらしい、ということを伝えます。

興味を持ったお客たちは、その女性が来るのを待っていると、ほどなくやってきて、船頭に乗せてほしいと依頼します。最初は拒否しましたが、その女性はカーリュー(ダイシャクシギ)に「心があるなら私に息子がどこにいるかを教えて欲しい」と訴え、船頭も旅人も同情し、一緒に出発します。

その後は船頭により語られます。ある一人の男が子どもを連れて船に乗せた。旅の疲れで死んだようにしていたが、力尽きて教会の近くで倒れてしまった。男は怒り殴った挙句、置き去りにしてしていってしまった。不憫に思った村の人が介抱したが、とうとう尽きてしまった。女性は、それが探していたわが子である事を悟ると、カーリューに私の魂をわが子のところへ連れて行ってほしいと」願う。

船頭と旅人はその子のお墓に連れていってあげ、嘆き悲しむ母に対し、愛の力でなぐさめてあげなさい、母親の祈りだけが子どもの魂を慰めることができると伝え、ようやく母も祈り始めます。

月が昇るころになり、祈りの声に交じり、懐かしいわが子の声が聞こえてきます。耳と目をこらすと、わが子の霊が現れ、神の恩寵を解きます。気がおかしくなっていた母はこの瞬間狂気から解き放たれます。

奇蹟劇が終わり、修道院長が締めくくると、最初に唱えられた「この日も終わりぬ」を唱えながら暗闇に消え、幕となります。

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いやー、すごい作品ですね。

敬虔な感じ、清廉な感じでスタートします。

奇蹟劇が始まると、シンプルな伴奏により、展開していきます。

なるほど、中世くらいの教会音楽だと、少ない楽器を伴奏に曲が進行していたのもあるんですかね。

そのシンプルな伴奏が、余計に劇を劇的にします。



本日の音源は、Nigel Verneyさんのチャンネルを視聴しながら書き進めてきました。ありがとうございます。


本日もご来店いただきまして誠にありがとうございました。

またのお越しをお待ちしております。

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