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ヴォツェック(ベルク)

いらっしゃいませ。

ようこそ、CLASSIC BAR VERSTECKへ。


さて、"本日のオススメ"は、ベルク作曲の『ヴォツェック』です。(数字は20-280。名曲解説全集第20巻P274)


アルバン・ベルク先生。1885年-1935年(50歳)の、オーストリアの作曲家でしたね。

3つの管弦楽曲の回以来、2回目の登場です。


本日の曲は、『ヴォツェック』です。

オペラですね。


この曲の完成には、なかなかの


29歳ころのおはなし。

ビューヒナー先生(ドイツの革命家、医師、劇作家で23歳で早世)の最後の戯曲で未完のまま残っていた『ヴォイツェック』の上演を観たベルク先生はこの戯曲をオペラにしようと考え、作曲を始めました。

ところが、時は第1次世界大戦のころで、30歳ころには戦争に動員されなかなか仕事は進みませんでした。

なんと先生、ご自身でオペラ用の台本を書かれ、32歳ころに完成し、作曲は35歳ころに終え、翌年にはオーケストレーションも終え、完全に完成したのは37歳ころのようです。

ちなみに、前回の3つの管弦楽曲は、この作品制作と完全に並行するというか、交わるというか、みたいな感じになります。3つの管弦楽曲に直接的に影響をしています。


初演は先生が40歳ころ。かの、エーリッヒ・クライバー先生のタクトの公演でしたが、あまり成功とは言えませんでした。でも、無調手法のオペラなので、そうですよね。

最終的には成功を収め、無調の大規模作品が可能であることを世に知らしめた、超重要作品となったのでした。


ヴォイツェックというのは人の名前で、実在の人物。なんと情婦を殺して死刑になった人。元の戯曲を書いたビュヒナー先生は、これを理髪師上がりの一兵士として、殺人をおこし、最終的には自らの命を絶つ、という過程を描いています。ただし未完のため、物語の順序や、結末も様々なバージョンがある状態でした。

ベルク先生は、この元戯曲で20以上あった場面を整理して、15の場面にし、ヴォイツェックを死なせる台本に仕上げました。

1幕5場の3幕構成。なので15場ですね。


<超おおすじ>

第1幕:ヴォツェックと、ヴォツェックをめぐる人物との関係が描かれる

第2幕:ヴォツェックが情婦マリーに疑惑をいだく過程が示される

第3幕:マリーの殺害、ヴォツェックの死


無調的な音楽でありながら、全体が器楽的形式で統一され、その中で人間的に人間の生々しい生態を憎いまでに明確に描き出した、現代オペラの最高傑作。



<登場人物>

ヴォツェック:貧しい理髪師上がりの一兵士

鼓手長:マリーの愛人

アンドレス:ヴォツェックの同僚の兵士

大尉:ヴォツェックの上官

医師:ヴォツェックを実験台に生体実験している

マリー:ヴォツェックの内縁の妻

マルグレート:マリーの隣人のおかみ



<カンタンなあらすじ>

第1幕:結婚をせずに子どもを産んだ、ヴォツェックさんと内縁の妻マリーさん。ヴォツェックさんは、元理髪師で現在は兵士。現在は、大尉さんのひげを剃ったり、怪しい医者さんの人体実験をするなどしてお金を稼いでいます。この医者さんのせいもあるのか、ヴォツェックさんはよくわからない事を言い、マリーさんは、ヴォツェックさんから心が離れていき、鼓手長さんに心を奪われます。

第2幕:マリーさんは子供をあやしています。ヴォツェックさんは、マリーさんの変化に気づき、また、医者さんも、大尉さんも、マリーさんが浮気をしている事をほのめかします。そしてとうとう、大尉さんとマリーさんが一緒に踊っているところを見つけてしまい、大尉とけんかになるも、やり込められてしまいます。

第3幕:マリーさんは、聖書を読んでいます。ヴォツェックさんはマリーさんに近づくと、ナイフで刺し、殺めてしまいます。怖気づいたヴォツェックさんその場から走り出すと、近くの酒場へ行きますが、血がついているため怪しまれます。人を殺めてしまった事がバレてはいけないと、戻り、ナイフを探すと、それを池に投げ捨てます。ところが、これでは近くて見つかってしまうからもっと遠くへ投げよう、と池の中に入り、そのまま溺れてしまいます。他の子どもたちと遊んでいた2人の子どもは、他の子から母が亡くなった事を聞き、母のところへ向かおうとするところで、幕。


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曲の印象は、ベルク先生、無調音楽、という一瞬身構えるキーワードにも関わらず、確かにとても聞きやすいです。確かに新ウィーン楽派の香りだし、この時代の曲だなと思いますが、聞けますね。

なるほど、現在でもレパートリー上演されている作品の理由は、聞けばわかりました。ぜひ、聞いてみてください。

その前の時代のオペラの設定の仕方とはなんか違うように感じます。男女関係を扱っているのはプッチーニ先生やその他19世紀のオペラと同じなんだと思いますが、この作品は、そういう風に見えない。

実際に起きた殺人事件を題材にしている、社会的な問題をテーマにしているという部分がとても印象として強く、逆にそのお陰で、この無調的な音楽が、むしろしっくりきていると思います。



本日の音源は、コチラからお聞きいただけます。


本日もご来店いただきまして誠にありがとうございました。

またのお越しをお待ちしております。


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