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『たそがれマイ・ラブ』。区分所有法改正。マンションはどうなる?

令和5年11月12日(日)の読売新聞に『老朽マンション 建て替え同意4分の3に緩和』という記事がありました。
区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)の改正への要綱案についての記事で「老朽化した分譲マンションの再生をめぐり」ともあります。

同記事によると〈取り壊しを決議する際に必要な所有者の同意について、全員から「5分の4」以上に緩和し、耐震性などに問題がある場合は「4分の3」以上で建て替えや取り壊しを可能とする〉とのこと。

いずれにしても、自分の一存ではどうにもならないのが分譲マンションであって、つまり『自己の専有部分(区分所有)』の“存在”には『マンション全体の躯体(コンクリートの壁・柱・床・天井など)』が必要で、その躯体部分は『住民全員の共有となっている』という"ややこしさ”が、その根っこにあります。


空き家の別荘をDIY。遊びの延長ともいえる暮らしぶり

知り合いの別荘です。
これ、「DIYでリフォームしたんです」だそうです。
すげー。

なるほどこれが『2拠点ライフ』かぁ〜。遊びに行って実感してきました。

指値激安で入手した空き家別荘を、これまた廃材などをうまく活用したり、コンパネを打ち付けて耐震性を強化したりしての暮らしぶりです。

きっと彼ら夫婦は長生きをすると思う。
楽しそうだ。

広々としたリビングにはバカでっかい薪ストーブが設置されてて、薪ストーブならではの“はぜる音”と“遠赤外線効果”で、我々は半袖になってクッキーとアイスコーヒーだ。

でね。
マンションだとこういったことができない。
勝手に解体できないし、再建築もできない。

そもそも分譲マンションは、一つの建物(区分所有法では「一棟の建物」という表現になる)を多数の住民で共有し、その建物の内部の一部分を専有部分(ひらたくいうと「部屋」)として個人所有するという考え方(権利形態)による。

これが、"老朽化した分譲マンションの再生"というような問題に直面したとき、ややこしい問題として立ちふさがるわけです。

マンションを解体するには

一棟の建物(マンション全体)を解体するには、住民(区分所有者)全員の合意が必要で、これは民法の規定によります。

マンションを解体(区分所有関係を終了)して敷地を売却しましょう。
その代金を住民で分け合いましょう。
とはいえ建物の解体費も昨今は高額で、もちろんそれも住民で負担し合うことになる。
所有者責任というやつですね。

建て替えを前提とする解体であれば区分所有法の規定により「5分の4以上の同意」となるが、単に解体ということになると全員の合意だ。

住民の老いとマンション躯体の老い。
2つの老いのはざまで、マンション全体の内部に『所有者不明の部屋(専有部分)』も出てくるでしょう。
となると、解体にあたっての『全員の合意』の壁はとてつもなく高い。

念のためですが、現行の区分所有法には“単なる解体”のための規定はありません。
ちなみに。
区分所有法の制定は昭和37年(1961年)です。
当時の世の中は高度経済成長期、まさに黄金の60年代で、ニッポンがいちばん元気だったときですね。
なので・・・

マンションが老朽化するとか解体とか、そういったことは考えてなかった。

まさに”イケイケどんどん”、ずっと経済成長が続くし人口も増えていく。
いえーい、ニッポンサイコー。

・・・のはずでした。

でもね。
まぁしかたないかもしれませんが。
人間でいうと、青春ド真ん中(←ってか、そもそも『青春』という言葉がいまや死語だ!!)のとき、自分の老後は考えぬ。

今後、老朽化したマンションは増えていく。
同記事にも〈国土交通省によると、築40年以上の分譲マンションは2020年末で約126万戸に上り、10年後には倍増するとみられている〉とある。

ではここで1曲。大橋純子さんの『たそがれマイ・ラブ』です。

マンションを再建築するには

これは区分所有法にも規定されていて、建て替えには所有者の『5分の4以上』の同意が必要となる。
これを『4分の3以上』に緩和しようというのが今回の案だ。

とはいえ、建て替えともなると、その費用はどれくらいか。
解体費よりは高くなるだろう。
もちろん住民で負担しあうことになるが、「このままでいい」という住民もいる。
慣れ親しんだここにいたい。
それからおカネ。
まさに“老後の資金が足りません”だ。

となると、『建て替え派』と『現状のまま派』のぶつかりあいも。
『建て替え派』のなかには、建て替え費用と再築後の物件売却益を天秤にかけ、利は我にありと踏んでいる連中もいるだろう。
改正案のとおりとなれば『建て替え派』は勝利しやすくなる。

『建て替え派』が勝利した場合、「このままここで静かに老後を過ごしたい」という人たちはどうなるかというと、追い出されます。
区分所有法第63条の「区分所有権等の売渡し請求等」ですね。

『建て替え派』が『現状のまま派』に第63条の売渡し請求をするとどうなるかというと、『現状のまま派』の意向にかかわらず売買成立となる。
『現状のまま派』の権利はなくなる。
その後、『現状のまま派』が居座り続ければ不法占拠となる。
立ち退きの強制執行もありうる。

結局、壮大な社会実験だったのか。

今後に起こりうる『マンション問題』に、果たして我々はどう折り合って行けばよいのでしょうか。

そのとおりです。
わかりません。

これが超高層マンションともなると、関係する住民(区分所有者)も膨大な数に及ぶため、全員の同意も、5分の4の同意も、はじめから放棄しているようにも感じます。

都会の夜。過密であるがゆえ集合住宅も必要とされる。

集合して人が住む。
これが賃貸だったら住民のみなさんも身軽でいられました。
しかし昭和37年に生み出された区分所有権という概念のもと、一棟の建物の内部を区切って所有させた。

そして今日も、東京・23区の新築マンションの分譲価格は、軽く1億円を超えている。

区分所有という概念を生み出してから、かれこれ60年。
もしかしたら、壮大な社会実験をやっているのかもしれませんね。
果たしてどうなる『区分所有』?

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