人として

アルバイトスタッフが突然辞めた。
夏の繁忙期、シフトの割り振りもギリギリの人数。
ライブ当日、間もなく会場入り時間。
代わりはいない。今いるスタッフで対応しなければいけない。
必然的に、PAをしながらビールを注いで、転換はすべて一人でこなす。
照明スタッフは操作の合間に受付をして、ドリンクの注文にも対応する。
なんとかなったりはする。でも、本来のクオリティは出せない。悔しい。

ここ数年、働く側の待遇向上や環境改善が叫ばれていて、バイトの時給もどんどん上がり、ちょっと勤務時間が長かったりキツかったりすると、すぐブラックだなんだとSNSで批判する。
もちろん、働きやすい環境を作るのは大事だし、バイトの人権を無視していいとは思っていない。
しかし、個人事業主も、経営者も、人権はある。
大きな企業の就業環境の話ではなく、もっと小さな、単純に言えば「人としてそれはどうなの?」レベルの話だ。

突然、しかも何の前触れもなくラインで「今日で辞めます、迷惑かけてすいません」、本当に迷惑をかけていると思っているのだろうか。
足りない状況で普段の何倍も気を使いながら本来の業務プラスアルファをこなし、体力的にも精神的にもキツイ仕事となるスタッフ、当然ストレスもたまる。お客さんも、対応の遅さにイライラしてしまうかもしれない。アーティストも、優しいから口には出さないかもしれないが、いつもよりバタバタしているスタッフを見て快くは思わないかもしれない。
全てがマイナス。
辞めたい側からすれば、そんなこと言われても無理です、すいませんで終わりの話かもしれない。しかし、人として、少なくとも同じチームの一員でやってきた人であれば、もっとやるべきことはあったのではないか?
事前の相談、代わりのシフトを誰かに頼む、その日の業務をこなしてから辞める、最大限妥協しても、普通は直接来て話すものだろう。それがLINE一本、あとはスルー。
あれこれ注意をしても、SNSで呟けば誰かが擁護してくれる。そんなバイト辞めちゃいなよ、自分が一番大事だよ、なんて甘やかす。

現場のアルバイトスタッフの募集をしても、高いギャラとゆとりの労働時間が提示されないとさっぱり集まらない。
一人で何もできない、学生のちっぽけな覚えたてスキルで、自分の何を過大評価しているのだろう、といつも呆れる。と、そんなことを言うとブラックだなんだと叩く人がいるのだが。
甘やかしすぎては覚えるものも覚えないし、しばらく経つとすっかり忘れて、一からまた教えないといけない、そんなポンコツに高いギャラを払って仕事を教える。ミスをフォローする。先に帰らないといけないーを見送り、残った作業を一人でこなす。こっちの方がよっぽどブラックだ。

辞めるのは簡単。ほんとにそう。
今当たり前にある場所、仕事、それらを維持しているのも人間。
誰かの軽率な行動一つで、なくなってしまうこともあるんだってことも、しっかりと理解してほしいものです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?