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ビールのなまえ

ビールのなまえは大事だ。

ビールのなまえは、ビールを選ぶときの重要な情報のひとつであることは間違いない。

まだ飲んだことのないビールを選ぶとき、いろいろ見て、調べて、考えるのは、多くのビール好き/ビアギーク/ホップヘッズに共通する行動であると確信する。
ビールのなまえ、ラベルのデザイン、スタイル、アルコール度数、IBU/EBU、原料、副原料、加熱/非加熱、濾過/無濾過、原産国(醸造所の所在地)、ブランド、醸造所、マスターブルワー、輸入元、搬送方法、容器形態や形状、量、価格、販売店(流通と保管)、稀少性、背景の物語、などなど。
色と香りと味わいはまだ開栓してグラスに注いでないのでわからないから、それ以外の情報を頼りに、好みのビールか、あるいは試してみたくなるような面白いビールかを、推察し想像し検討するのだ。

そこでビールのなまえは、軽視できない情報源のひとつなのである。

ビールのなまえの傾向

ビールのなまえには、大きくふたつの対極がある。
⚫️スタイル名をそのままつけたもの
⚫️個性を主張する独創的ななまえ

前者はとてもわかりやすいが味気なく、後者は興味を惹かれるがどんなビールかはよくわからない。

善し悪しは一概には言えないが、どのような意図でそのなまえがつけられたかを想像すると、造り手の作品に対する想い入れが強く感じられる分、後者の方が個人的には好ましく感じられる

ビールのなまえのつけ方を、段階的に

スタイル名そのまま~独創的ななまえ、の間を段階的にみてみよう。

(1)スタイル名をそのままつけたもの
前述の通り、事務的で味気ないが、反面非常にわかりやすい。
スタイル名そのままなので、どんなビールかは読んで字のごとくだ。
「ベアレン アルト」「箕面 W-IPA」「ヴァイエンシュテファン ヘーフェヴァイスビア」「フラーズ ESB*1」「ストーン ペールエール」とか。
意外と大手メーカーはこれをやらない。どちらかと言えば小規模醸造所の方に多いように思う。
また、独創的ななまえをつける醸造所でも、定番品だけはスタイル名ままという例も少なくない。
*1 「ESB」がスタイル名か固有の商品名かは議論がある

(2)スタイル名にひと工夫したもの
わかりやすさを保ちつつも個性を出しに行く、固有のワード+スタイル名(順序が逆の場合もある)。
「ブリュードッグ パンクIPA」「エチゴ フライングIPA」「ローグ ブルータルIPA」「グランドキリン 雨のち太陽のセゾン」など。
比較的普及した(流行った)スタイルに少し個性を持たせたいときに採用されている感がある。

(3)定番かどうかを表したもの
スタイル名ではなく、その醸造所の定番か(クラシックとかスタンダードとか)、定番ではないか(スペシャルとかグランクリュとか)を表現したもの。季節や季節イベントを明示する場合もある。
「ローデンバッハ クラシック」「ローデンバッハ グランクリュ」「ローデンバッハ ヴィンテージ」「サンフーヤン キュヴェ・ドゥ・ノエル」「ベアレン クラシック」など。
ヨーロッパの伝統的醸造所、あるいはその気風を引き継いだ小規模醸造所(日本だと主にドイツ系)に多い気がする。

(4)何かのシリーズ
何らかの法則性があるもの。
「シメイ ルージュ/ブラウ/グード」は色、「セント・ベルナルデュス パーテル/プリオル/アプト」は修道士の位階、バラストポイントは「スカルピン」「マンタレイ」など海に関するもの(主に魚のなまえ)、シングルホップやシングルモルトだとその品種名、など。
ぱっと見よくわからないが、造り手なりのルールがある。
少なくとも無軌道ではないと知り、不安がいくらか和らぐ。

(5)個性を主張する独創的ななまえ
個性的である。
「ミッケラー ミッケルズ・ドリーム」「ヘア・オブ・ザ・ドッグ マイケル」「ローデンバッハ アレクサンダー 」「ハービストン オールド・エンジン・オイル」「デュカート ブレット・ピート・デイドリーム」など。
しかしちゃんとなまえには意味があり、意味を知ればそのなまえであることの必然性に納得がいく場合が多い。

(6)個性的すぎてだんだん意味がわからなくなってきたもの
個性を主張したその先にあるもの。
「スリーフロイズ ゾンビーダスト」「ハーフエイカー アカリ・ショーグン」「ブリュードッグ デッドポニークラブ」「ヘット・ネスト デッドマンズ・ハンド」など。
意味不明とまでは言わないが、初見ではなんなのかわからない。わからないが、80年代・90年代のHM/HRバンドの曲名めいていてカッコよく、ラベルデザインも凝ったものが多い印象で、勢い込んでジャケ飲み(ラベルデザインで選んで飲むことを個人的にこう呼んでいる)しやすい。
ビールそのものもなまえに劣らず個性的である。

(7)もはやなまえかどうかも判然としない
自由がすぎる。
「Schooner Exact Wa Dat?」「Evil Twin Ryan And The Beaster Bunny」「Anderson Valley Highway 128 The Kimmie, The Yink, and the Holy Gose」「Schooner Exact Whiskey Dick Cantwell. Hey Matt, where's my fucking pumpkin beer? 」「Struise C-DOS Cuvée Delphine On Steroids aka Pablo Eiscobar」
カタカナ表記すると、より意味がわからなくなる。とても面白い。
ここまで来ると、ビール自体も突出したエクストリームさのものばかりとなる。

で、どうなのか

ビールのなまえは大事だ。

ビールのなまえから得られる情報は多い。
たんにスタイルがわかるだけではない。
その醸造所がどのような姿勢でビールを造っているか、マスターブルワーがイカれたヤツか、マーケティング担当者がどうやって売り込もうとしているか、などなど、いろいろ汲み取れるのだ。
(注)どれだけの情報が得られるかは、想像力に依るところが少なくない。

さて、いつも通り言いたいことを言いたいだけ言ったので、ここらで切り上げる。
気が向いたら追記するかもしれない。

さあビール飲んで寝よう。

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