みずたまり

わすれたくないもの

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プリマ

もう23時か…そう思いながら、鳴りやまぬお腹をさすった。たべたい。何か食べたい。ガッツリ、それでいて優しいもの。 カツ丼…そう、カツ丼の卵とじ。そんなことを考えながら5本目のバナナを食べ終えると、皮が話しかけてきた。「自分カツ丼食ベタイン?バナナガ作ッタロカ?」 一人称バナナなんだ…とちょっと引いてしまった。しかしカツ丼は食べたいので、「人間カツ丼食べたい!卵でとじたってやァ!」と返すと、「バカニシトンカワレェ!」と言いながらスーパーに出かけて行った。うちの冷蔵庫には納豆のタ

    • ブランコ

      雨の日。ビニル傘を忘れた私は少し憂鬱だ。細い銀色のワイヤーにビニルがピンと張られ、傘越しに空が覗く。通り雨の風物詩、季節外れの季語。パツ、パタと雨粒が眼の前で弾ける。濡れた傘越しに見やると、無機質なビルがぐにゃりと歪んで、土の匂いがする。ビニル傘があれば、雨の日は別の街への旅になるのに。 仕方なく、折りたたみ傘を取りだした。折りたたみの、必要ではないが、たしかにそこにあると安心するといった曖昧な優しさが私はすきだ。問題は色なのである。私の持っているのは絵の具で塗りつけたよう