再会
火曜日。いつも通り定時ぴったりに打刻して更衣室へ向かった。着替える前になんとなくスマホを見たら通知がきていた。
前の職場の先輩からだった。懐かしいメンバーで飲んでるから来ない?という内容だった。
わたしは、「行きます!」と即答した。
わたしは飲み会自体はそんなに好きではないので、気が乗らない誘いは適当に断ってしまうこともある。
だけど今回は何も考えずにすぐに返事をしていた。
先輩は一緒に働いている時からよく飲みに誘ってくれていた。遅番の日でも帰りに一杯だけ飲んで帰るとか、次の日オフだったら朝までいるということもあった。2人で飲む日もあればみんなと一緒の日もあった。
そういう時間にわたしはよく、仕事や恋愛の相談をしていた。相談とも言えないようなレベルのこともよく話した。
あとから思うとわたしはその時間に支えられていたのだと思う。わたしが異動してコロナ禍になって、そうしているうちに先輩は地方に異動になってしまった。
わたしの異動先の人たちもみんな良い人だったけど、あんなに心を開ける人はいなかった気がする。
小さなモヤモヤを気軽に話せる相手がいなくなって、いつのまにかわたしは元気がなくなってしまった。
今だったらほかの方法で自分を励ますこともできるかもしれないけど、当時のわたしはそういうのが下手くそだった。
今だって、すぐ近くに何でも話せる人はいないから、どうしようもなくなることもあるけど。
まあとにかく、その先輩のことを慕っているということだ。
先輩とはわたしが新しい仕事に就く前に色々と話した日以来約1年ぶりに会った。連絡をとるのも半年ぶりくらいだった。
ほかのメンバーとは2年とか、もしかしたらもっと長い間会っていなかったかもしれない。
だからよく考えたら、その先輩以外のメンバーにはわたしが会社を辞めた話をきちんとしていなかった。みんな異動してバラバラだったし、みんなに話せるほど元気じゃなかった。
そんなわたしのことを、その場のノリだったとしてもこうして、おいでよって呼んでくれるのは素直に嬉しかった。
わたしが到着する前までに先輩がほかのメンバーにわたしが退職した経緯を説明していたという可能性もあるけど、わたしとひさしぶりに会ってもなんで辞めたのかとかそういうことを聞いてくる人はいなかった。
まあわたしが逆の立場でも聞かないけど。
ひさしぶり!元気?よく来てくれたね笑
今はどんな仕事してるの?
今の仕事で嫌なことはない?
そのくらいの話をした後は、一緒に働いていた頃の仕事終わりの一杯とあまり変わらない雰囲気だった。
わたしはその頃のことを思い出して、なんともエモい気持ちになっていた。
ほんとにカッコ悪いけど、あの頃はたのしかったなとか、あのまま同じメンバーで同じ場所で働けていたら辞めてなかったかもなとかも考えてしまった。
わたしはこの1,2年で、自分自身の考え方まで含めていろんなことが大きく変わったけど、この日はほんとにタイムスリップしたみたいだった。
この日みんなに会ったおかげで、わたしが前の仕事も楽しんで頑張っていたこととか、あたたかい人たちと出会えていたことをはっきりと思い出すことができたから、翌日からの今の生活も心なしか前向きに送ることができている。
昔から、わたしは自分に大した才能がない代わりに人との出会いに恵まれているな。なんて思っていたけどほんとにその通りだ。
今の職場の人間関係もおおむね良好だし。
今でも自分のこととてつもなく嫌になっちゃう日もあるけど、自分の性格を変えることもできないから、そんなわたしに優しくしてくれる人たちに感謝して生きてくことしかできないなあって、真面目なこと思っちゃった。
そして、みんなに優しくされてる自分のこと、自分でも大切にしてあげなきゃな。
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