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異説を唱える先生に教わる学生のための対応方法

滝川沙希です。
今回は、行政書士試験を勉強する皆様が、大学で異説を唱える先生にあたった場合の対応方法をお伝えします。

ここでいう異説とは、通説ではないという意味です。

ここでは通説は、現時点で学者間で標準的に支持されている見解のことだと理解なさっていて下さい。

先生のテキストを読んで異説ぶりを確認する

まず、その先生がテキストを執筆しているかどうか、確認します。まれに多くのテキストを書く先生もいらっしゃいますが、多くの場合テキストはそんなに書きません。
テキストは、学術書かもしれませんし、教科書かもしれません。

執筆している場合は、そのテキストを(できれば購入して)よく読んでください。異説であることを確認してください。学部の場合、異説で説明される可能性があります。ただ、テキストが異説でもロースクールだとそれほどないようです。試験が控えていますからね。
ただし、学術書の場合は、軽く参照するだけでよい。『危険犯の研究』などのように、特定の論点だけを研究している本は、学部段階の勉強では、原則不要です。読まなくてよいということです。

別の先生が言及している本で異説ぶりを確認する

異説ぶりの確認方法としてもうひとつ。著名な先生の場合は、他の先生から言及されていることがあります。
古いテキストですが、『刑法総論の思考方法』『刑法各論の思考方法』(大塚裕史)という本には、山口(元東京)、前田(都立)、松原(早稲田)、井田(慶応)、川端(元明治)ら、各先生の見解が紹介されています。

刑法改正前ですが、一応参考にできるでしょう。

さあこうして皆様の目前には、異説があるわけです。
あとは、どこに注意して読むのかですが、通説とどこが違うのかをよく考えながらです。学説はどこかで必ず分かれますが、分かれるところで、何かの価値判断を行っているはずなんですね。そこが分からなければ、先生に聞いてみて下さい。

別の先生が異説ぶりを解説する本(刑法)

そのあたりをすべてばらした本が上記の、『刑法総論の思考方法』『刑法各論の思考方法』なのですが、他の分野の本も欲しいところですね。

別の先生が異説ぶりを解説する本(憲法)

古い本ですが、憲法では佐藤幸治(『憲法(第3班)』青林書店)があります。この後にも佐藤先生はお書きになっていますが、この本とはトーンが異なるように見えます。また、東大の四人本もありますが、学説の提唱者が書いていないので、読みませんた。

別の先生が異説ぶりを解説する本(民法)

民法ですが、私は我妻を読んでいません。世代的な問題かもしれませんが。加藤雅信『民法大系シリーズ』を読んでいました。随所に対立点の載っていまして飽きません。しかし、もっと対立点が欲しいのであれば、近江 幸治先生でしょうか。司法試験の短答式に有効と根強い支持があったようです。

「先生の先生」のテキストを読む?

先生がテキストを執筆していない場合でも、「先生の先生」がテキストを書いてあることがあります。

こうしたときは、そのテキストが参考になることがあります。しかし、師弟間でも芸風、いや学風が異なっていることがあり、そうしたときは参考にはならないかもしれません。
たとえば、行政法の宇賀(東大)先生の先生は、塩野先生ですが、全くアプローチが違います。塩野先生は、概念重視、宇賀先生は機能重視の印象ですね。

通説で答案を書いたらアウト?

どのような出題がなされるか次第ですが、基本的には点数(単位)は来ると思います
山口厚先生(刑法。元東大・最高裁判事)は、はっきりと「私の説でなくとも(行為無価値でも)説得的であれば単位を与えます」旨、発言なさっています。

一応信用してよいだろうと思います。
ただ、その先生の講義やテキストを読んでないと、何が問題となっているのか分からない、分かりにくいということはありますので、注意して下さい。
その先生の学部過去問を収集して、早めに対策することが大切です。

判例で書かないとアウト?

注意すべきは通説よりも判例です。判例が存在する場合は、必ず、判例の立場に言及してください。民法から具体例をあげましょう。

債権譲渡の「対第三者対抗要件」という論点について、判例は三転していますが、①現在は、確定日付ある通知の到達の日時、承諾の日付の先後で二重譲渡の優劣を決める見解を採用しています(到達時説。有力説)。

しかし旧判例は、②確定日付説というもので、通知行為・承諾行為があった事実を確定日付のある証書で証明することを必要とする見解(届いた日付よりも早い日付が付いた内容証明郵便があとから届くかもしれない。旧通説)です。

さらに、とある大御所は、③通知受領日につき確定日付のある証書で証明することで、第三者対抗要件を具備すべきであると唱えています(通知受領時等確定日付説。明治時代の旧・旧判例。『新民法大系Ⅲ債権総論』P318.加藤雅信)。

さて、いずれの説で答案を書いたとしても、判例は①だと指摘して、その内容を簡潔に紹介してください。そのあとは、筆力によって、②でも③でもよいでしょう。しかし、その説の理由は必ず言及してください。異説の出番です!「言うだけ番長」は無意味で評価されません。その理由付けは異説が書いてあるところですよね!

判例に言及がないと、「判例、知らないのかな?と思う」(某司法試験委員)だそうです。

まとめ

判例とその先生の異説と、上手にお付き合いしましょう。
判例通説→批判→異説 ということになります。判例通説は当然に習得しているという前提なのです。
苦労なさいますね。

できればサポートお願いします。法律学の勉強の苦痛から少しでも皆様が解放されるように活動しています! 新規六法の購入費用に充てていきます(笑)