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第6章 結論

 東京の町と深い関わり合いを持って来た日本橋川は、その時代の影響を受けて周辺地域ともどもその姿を変えてきた。こうした日本橋川とその周辺地域はどのような性格を持っているのか。以下の点にまとめる(図6-1)。

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図6-1 日本橋川と周辺地域との結びつき(筆者作成)

1.「川と地域の一体感」がある地域

 この地域は、川沿いの倉庫や商業地といった日本橋川を中心にした街並みがみられる地域である。また、以前ほどの中心性はないものの、金融・証券の中心地であり、日本橋川周辺では最もにぎやかな地域である。こうした地域にあって、橋も地域に欠くことができないものとして捉えられており、積極的に橋詰空間の整備などがおこなわれている。また、この地域はウォーターフロントの再認識や日本橋川の持つ歴史的重層性により、日本橋川を中心とする水辺の空間を都市内部における貴重な空間として再認識しつつある。

2.「地域を分ける境界としての川」を持つ地域

 この地域は、日本橋川が江戸時代の外濠として城内・城外を分けていた。その名残がみられる地域である。旧城内の官庁・ビジネス街、旧城外の住宅商業混在地と、川を挟んで分かれている。

 この地域に架かる橋は、地域を結ぶ役割よりも、それぞれの地域の入口といったものだといえる。このため1の地域の橋ほど地域との密接な関係性はみられない。故に、橋詰空間は貧弱なものとなっている。

3.「川の存在が欠如」している地域

 この地域は、江戸時代に水路が埋め立てられていた。明治期に入り水路が復活した地域である。このため、川により右岸と左岸が分けられているといった様子も、逆に川を中心として町が成り立っているといった様子も見られない。川の存在が希薄な町並み景観となっている。

 従って、この地域に架かる橋は前出の2地域とは異なり、水路により分断された地域を結ぶための機能的な橋だと言える。

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