好きな詩人の話


私は中原中也が好きだ。

彼の顔や独特な人間性も勿論好きだが、やはり彼の書く詩が一番好きだ。


『山羊の歌』にある「憔悴」という詩を読んだことはあるだろうか。無ければ是非読んでほしい。

語彙が絶望的なまでに少ない私の言葉で説明すると、「比喩表現がめちゃくちゃに多い自分語り」のように感じられた。貶す気持ちは一切無い。

かの有名な「サーカス」や「汚れつちまつた悲しみに……」とは違う感じがした。自分に語彙が無い事をいま心の底から悔いている。本当に違う気がするのだ。


初めて読んだ時は非常にドキドキして、顔が熱くなった。同じ時代に生まれてこなかったことを後悔した。私は彼の詩に恋をしてしまったらしかった。

私は別に真面目な人間ではない。授業も適当に受けていたし、現代文で習ったことも抜け落ちているものが多い。中原中也の事だって、「なんか愉快なオノマトペを使う人」程度の認識だった。馬鹿野郎。

彼の過去の恋人や奥さんが羨ましかったし、彼が息子を亡くしていた事を知った時はとても悲しかった。私はとても傲慢なので、彼に順風満帆、悲しみなど一つもない人生を歩んで欲しかった。しかし、悲しみがあったから「春日狂想」のような詩が生まれたことも知っている。

彼は悲しみや苦しみも全部ひっくるめて詩人・中原中也なのだ。

尊いとか、最高なんていう拙い、感情的な言葉で表すことが申し訳なく感じてしまうほど、彼は魅力的で「詩人」なのだ。あまりに語彙が乏しいのでそろそろ純文学に手を出そうかと思っている。

特に落ちるものも無いが、私は彼が好きだ。これからも好きでいるだろうし、来世も日本で生を受けて彼の詩を読んだらきっと好きになる。

私は中原中也が好きだ。

 

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