見出し画像

メガホン(ランダムワード小説)

僕の妹のあだ名はメガホンといいます。
本名は実花。実花ちゃんとか実花ちんとか言われていたのに、いつしかメガホンになってしまいました。たしかにちょっと太っているし、実花ちゃんというよりはメガホンのほうがしっくりはくると思うのですが、それでも年頃の女の子(年頃っていつなんでしょう)を捕まえて、メガホンは可哀想。
ただはじめは実花ちんが変形してメガホンになったと思っていたのですが、どうやらそうじゃないみたいなのです。
妹の同級生の女の子で、さゆりちゃんという子がいて、その兄と僕が仲が良かったこともあって、さゆりちゃんにこっそり耳打ちされたのです。
ある日、実花ちんに内緒話をした友だちがいて、次の日にその内緒話がクラス中に知られていたんだって。しかも、倍くらいに話が膨らんで……。
内緒話というのは、その友だちがある男の子を好きになって、ラブレターを書いたけど、恥ずかしくてまだ渡せていない、という話でした。だけど、次の日に広まった話は、その友だちが好きな男の子の家に忍び込んで、その男の子のパンツを盗んだ話になっていたというのです。
メガホンどころじゃないな。僕はついそうつぶやいてしまいました。そりゃまるっきし原形がないじゃないか。
ね、どう思う?
さゆりちゃんは、僕の耳元で聞くのです。生ぬるい吐息がくすぐったくて、僕の耳は赤くなります。
70人目の伝言ゲームじゃないか。
僕はかっこよくそう例えました。
次の日、あだ名が変わりました。
キメ顔たとえたとえ君。
もちろん、メガホンの兄の新しいあだ名です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?