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さんかくオニとももたろう②

さんかくオニは、やる気をみなぎらせて、桃太郎たちのところへ向かいました。もちろん手には金棒。トラ柄のパンツ。
鬼ヶ島の中腹で、桃太郎たちを見つけました。犬と猿がオニたちを襲い、オニたちはかわいそうに犬に噛まれたり、猿にひっかかれたり、逃げまどっています。大きな鳥がそのまわりをぎゃあぎゃあ、わめいて飛び回っています。
桃太郎は、刀をぶんぶんと振り回しています。見るからにこわい。近づいたら切られると思いました。さんかくオニは、大きな木の陰に隠れて、しばらくその様子を見ることにしました。
あわれなオニたちは、顔が丸であろうと、四角であろうと、赤でも青でも、容赦なく桃太郎たちのえじきになっていきました。オニたちの大きな体が、道に転がっていて、足場がなくなっていきます。
さて。
さんかくオニは考えました。これはけっこうまずい事態です。このままいくと、明日の朝にもこの島は鬼ヶ島から桃ヶ島になるでしょう。犬ヶ島か猿ヶ島か大鳥ヶ島かもしれません。
それにしても、あの鳥はなんて種類の鳥なんだろう。
気づいたら辺りは静かになっていました。ひとしきり、オニたちがやられてしまったのです。
桃太郎たちは、のんきに団子を頬張りながら、興奮冷めやらぬ様子で、オニたちの丸や四角や赤や青の顔を指さして、笑ってます。
よし。
そして、ようやく、さんかくオニの出番です。
やあ、君たち。
僕はさんかくオニだ。なかなか盛大にやってくれたね。しばらく前から見てたけど、すさまじい戦いだった。
まだいたのか。犬が唸り、猿が飛び跳ね、鳥が羽を広げました。桃太郎は刀を抜こうと構えます。
待って待って。困るよ君たち。ちょっと考えてごらん。ここで僕をやっつけると、もうこの島にはオニはいなくなってしまう。
ああ、全滅だ。村のみんなのカタキ。たくさんの人たちがお前らにやられ、たくさんの宝がうばわれたんだ。
そこ、そこです。
なんだ、どこだよ。
鬼退治に来たんでしょ。じゅうぶんです。ご立派。次は何しましょう。
なんだ、次は。
お宝ですよ。村の人たちは、退治して来ただけでは満足しません。それでお腹いっぱいなりますか。そもそも信じてもらえますか。お宝です。お土産が大事です。
それはもちろん後でもらうさ。
桃太郎が笑うと、犬や猿も笑いました。一番笑ったのは、大きな鳥です。下品なくらいに。
僕が案内しましょう。きっと僕なしでは見つけられなかったとたいそう感謝しますよ。
そう言って、さんかくオニはニンマリと笑いました。そして桃太郎たちは笑うのをやめて、じっとその三角の顔を見つめたのです。
さあ、行きましょう。
さんかくオニはくるりと背中を向けて、歩き出しました。桃太郎たちは黙って、その後を付いていくしかありませんでした。

つづく

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