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救うのも子

なんでこんな言葉が生まれてしまったのだろう…
そんな気持ちになった時があった。

"親ガチャ失敗"

冗談とはいえ、
グサッと刺さった。


思春期の息子は、
何か会話が始まると、
常に納得いかないような態度で向かってくる。

何を話しても反論ばかり。
まさに、あー言えばこー言う状態。

思春期だから仕方ないと分かっていても、
責められると、わたしもイライラしてしまう。

辛い時期だった。


ある時…
"友達の親は優しい"
"その家に生まれたかった"
"親ガチャ失敗"
と息子は笑いながら言いはじめた。

そうかもしれない…。
両親がちゃんと揃ってる家庭で暮らしたかったよね。
そんな負い目を感じていた。
笑って吹き飛ばせれば良かったけど、笑える余裕が全然なかった。

ひきつる顔…
その言葉が突き刺さる。

今まで、頑張ってきたのは何だったんだろう…。
わたしは間違ったまま、ここまできてしまったのか…。


そんな出来事から一年…。

"あの言葉"は薄らいで頭の隅に、
布をかけられるように追いやられている。

その姿と同じように、
息子の心模様も穏やかになった。
思春期…終わったのかな…。

お互い会話がちゃんと成立するようになって、
どこか、ホッとしてる。

先日、息子の、友達の親の話になった時、
あのグサッと刺さった日の事、"あの言葉"の事を、
思い出として話した。

"やっぱり、友達の親の子になりたい?"
"その家に生まれたかった?"

息子は笑いながら、気まずそうに、
"いやー…"と言う。

あの時のショックだった事を、
笑いながら話すと…
"ごめん"…と優しく謝る息子。

その姿を見て、心が救われた気持ちになった。
息子の成長した姿に、嬉しさが溢れた。

これで良かったんだと。


"あの言葉"に刺されてしまったけど、
その言葉を放った息子が、救ってくれた。

とても辛かったあの頃。
きっとお互いが辛かったはず。
だけど、こうして笑って許せる日がきた。

ガチャを失敗しても、取り戻せるのかな…。
そんな気持ちになった。



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