そこでしか聞けない、「お客さんの声」がある。/今週の、いちばん。75
もしかしたら、ちょっと場違いな会社に入ったのかもしれない。
急な話だが、9月30日に半年勤めた株式会社BOLBOPを辞め、翌10月1日からサンクチュアリ出版で働いている。
肩書きは、あいかわらず「編集者」だ。
サンクチュアリ出版は「本を読まない人のための出版社」を標榜し、ビジュアルを多用した、読みやすくて楽しげな本作りで有名な会社である。
社員も出版社らしくない雰囲気をまとったお洒落な人々ばかりだ。
以前いた出版社やベンチャーで「ビジネス、ビジネス」を連呼していた僕は、若干の「お呼びでない感」を醸し出しつつ、心機一転、働いている。
本当は前職について、「まとめ」のようなことも書きたいのだが、それはまた改めて。今回は、いまの会社に入ってからの話をする。
10月4日、僕はTシャツにスエットパンツ姿で、早朝から、お台場の潮風公園にいた。
「旅祭2015」というイベントに出展していたサンクチュアリ出版のブースで、「売り子」をするためだ。
このイベントは、一言で言えば、「旅好きのためのフェス」。
ブースでは、まさに旅行関連本や、世界一周もした創業者の高橋歩さんの本などを揃えていた。
時間帯にもよるが、思った以上にお客さんが押し寄せる。
200冊用意した、歩さんの新刊も、飛ぶように売れる。
売り子として、本からスリップを抜き、袋に詰め、お釣りを用意する。
その感にも、「お客さんの声」が聞こえる。
「かわいい〜」「かっこいい!」「おしゃれ」「歩さんってヤバくない?」
若い旅好きの友達同士が、ハイテンションで語り合う声。
それはやっぱり、そこでしか聞けない声だ。
編集者という仕事は、どうしても「お客さん」から遠いところがある。
これまで、お金を出して本を買ってくれる人のことを考えながら編集してきたつもりだけど、編集部の中では、「あの声」は聞こえてこない。
紙の上も大事な現場だが、それは「本が売れる現場」ではない。
だから、油断すると、「お客さん」とずれてしまう。
僕は縁あって、サンクチュアリ出版に入社したが、必ずしも「サンクチュアリ出版王道の本づくり」を求められているわけではないだろう。
ビジネス書の老舗版元に10年以上いた経験、たった半年だったけどベンチャーで学んだこと。それらをすべてリセットするのでは、もったいない。
けれど、あの潮風公園で聞いた「お客さんの声」は、やはり大事にしたい。
僕のこれまでと、サンクチュアリ出版のこれまでを丁寧に混ぜ合わせて、「これから」の本をつくることが、きっと大事な仕事だから。
新しい環境で迷うことがないわけではないけれど、あの声はこれからの道標になるはずだ。
今週のいちばん、「お客さんの声」を聞いた瞬間。それは10月4日、お台場の潮風公園で「売り子」をしていた瞬間です。
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*「今週の、いちばん。」は、その1週間で僕がいちばん、心が動かされたことをふりかえる連載です
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