ノート

出版業界は楽しい、たぶん君が思っているよりも。/今週の、いちばん。50

長年ビジネス書の編集者をやっていたので、セミナーやワークショップの類いには数多く参加してきた。
そこで得た、はなはだ個人的な学びに、「本当に大事な話は、講義のあとの飲み会で聞ける」というものがある。
もちろん、講義時間の中でも、重要な知識や経験則は伝えられている。
けれど、そこにお酒の力が加わり、ときには二次会三次会と夜が更けたタイミングで、「ここでしか聞けない大事な話」に出合ったことが何度もある。

先日、ゲスト講師として招かれた、ライターの上阪徹さんが主宰するブックライター塾も、まさにそんな場であった。
講義中、僕ら編集者は、インタビュイーとして、ライターの卵(すでに活躍されている方もいたが)のみなさんに取材を受け、ときにはそこで思ったことも指摘する。
それはたしかに得がたい経験だったけど、その後の懇親会、しかも二次会・三次会で、上阪徹さんを少数で囲み、オフレコまじりの話を聞くのが、いかに楽しく、勉強になったか。まさに役得である。

また、以前から親しくさせていただいてた、各社の優秀な編集者たちの話を聞くのも、とても刺激的だった。
みな僕よりも実績がある方ばかりだけど、それぞれがそれぞれの立場で、よい本を作るため、また編集者として息長く仕事をするために、どれだけ知恵を絞っているか、伝わってきた。
彼らの話に安易な勝ちパターンを見いだすようなことはしたくないのだけど、一つだけ気づきを書いておくと、「長く活躍する編集者こそ、積極的に変化し続けている」ということだけは間違いなさそうだ。

最近、出版業界以外の人に会うと、「大変なんでしょう?」と聞かれることが多い。
とくに、僕のように、「出版業界から逃げ出してきた」ように(もしかすると)見えている人間を前にすると、「いよいよヤバい」と思う人もいるのだろう。
また、それこそ就職活動中の学生さんには、いまの出版業界は、幾分時代遅れの「オワコン」扱いかもしれない。
けれど、いまだにこの業界に片足を突っ込んでいる身の僕としては、強くこう言いたい。
出版業界は楽しいし、いまでも可能性にあふれていると。

そりゃ、景気のいい会社ばかりじゃないし、業界全体の課題もあるだろうし、(角が立つ表現だが)イケてない編集者だって探せばいるだろう。
でも、僕が勝手に「戦友」のように思っている同業者のみなさんは、そんな状況を前にしても、楽しく、面白い仕事を仕込んでいる。
そもそも、誰かに楽しくしてもらうんじゃなく、誰かを楽しくさせるのが好きな人たちが来る業界なのだ。
だから、まだまだ、出版業界は楽しいし、それを維持するのもまた、僕らの仕事なんじゃないかな?

今週のいちばん、楽しく、学びになった瞬間。それは4月11日、護国寺の居酒屋でハシゴしてまで飲んでいた瞬間です。

*「今週の、いちばん。」は、その1週間で僕がいちばん、心が動かされたことをふりかえる連載です(下の「このマガジンに含まれています」のリンクから全部の記事が読めます)

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