対話型鑑賞とアンコンシャス・バイアス
私は2003年からキャリアコンサルタント、2008年からワークライフバランス、ダイバーシティコンサルタントとして組織の中で様々なプロジェクトをご支援させていただいている。
その中で「違いを活かしあうとはどういうことか?」「深い対話とはどういうものか?」・・・そんなことを考えているとき、ワークショップデザイナー仲間とバーチャルランチクラブでご一緒したご縁で「対話型鑑賞ファシリテーション」に出会い、2021年7月から京都芸術大学アートコミュニケーションセンター主催の「大学生と学ぶ対話型鑑賞ファシリテーション講座」に参加させていただくことにした。
2021年7月からスタートしたこの講座で、私は、他者との対話を通して自分では気づかない見え方、視点、解釈、それによる視野の広がりが楽しく、すっかりはまっている。
そして、「人は見たいように見ている」ことを実感している。
私たちは常に自分の経験や価値観を通して物事を見ていて、ありのままに見ているわけではない。人それぞれに多様な見方、多様な解釈が存在する。また、同じものを見ていても注目する部分が違うと、そこにあるものに気づいていないこともある。
それが他の人と話すことで気づける。
違う枠組み、違う見え方、対話を通して気づくことができ、今、私はダイバーシティ推進の中で「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見、思い込み)」に力を入れているが、対話型鑑賞はアンコンシャス・バイアス対策にも繋がるのはでないかという可能性を感じている。
対話型鑑賞で基本となる問いに
■どこからそう思う?(解釈に対して事実や根拠を訊く問い)
■そこからどう思う?(事実に対して解釈や見解を促す問い)
■他に/さらにない?(別の可能性に目を向けさせる問い)
がある。
この問いによって、なぜ私はそう思うのか?
自分自身のものの見方や感じ方を改めて考える機会になっている。
そして、他の方の多様な見方、多様な解釈を聞く中で、自分のものの見方が広がり、気づきを得ることができ、選択肢が広がったり、自分が気づいていないことに気づくきっかけをもらっている。
まさにオピニオンダイバーシティ(視点の多様性)!
それを楽しんでいる中で、傾聴力や他者を受容する姿勢が身につくことにも繋がっていることを感じている。
アートを介した学びは、
1:誰でも参加できる(年齢・性別・障害などに関わらず様々な人々を繋ぐ)
2:思考力を育むだけでなく、他者の想いを想像する力を持つ
3:問題発見&問題解決能力を磨ける
4:人間関係の基礎を学ぶことができる(多様性の受容、他者と生きていくための基礎)
5:自分との対話が促進される
これらは、答えが決まっていない問題に取り組まねばならない今、まさに求められている学びではないかと思うし、多様な視点から学ぶことの多さからダイバーシティの良さも実感できる。
最近は、一緒に学びあっている仲間との自主練習会や美術館が開催していているオンライン対話鑑賞を見つけては参加したり、すっかりはまっているが、先月参加させていただいた山口情報芸術センター(YCAM)主催の「見えない方がよく見える」というイベントは本当に興味深かった。
見えている人と見えていない人がお互いに補完しあいながら作品を鑑賞していく中で、「本物を見るってなんだろう?」「深く鑑賞するって何だろう?」ということを考えさせられた。
全盲の白鳥さんが「見えていないから純粋に聞ける」とおっしゃっていた言葉を思い出しながら、純粋に聞かれて、改めて言葉にすることで気づけることがある。そこからまた思考が促されることがある。
見えていても、わかったつもりになると見えないものがある。
このタイトルにある「見えない方がよく見える」・・・まさにそうだなと思う時間だった。
人は1つのものの見方に囚われやすく、他の見方の可能性に気づけないことが多いけど、別の可能性に目を向けることを大事にすると同時に、「あれ?」って思ったことは口にする大切さも学んだ。
あれっ?と思ったこと、つっこまずにそうなんだ・・・と受け入れるのではなく、なぜそうなのか?聞いてみること。そこで相互理解できる。
違和感があったり、私はこう見えた、こう思うということを表明しながら、みんなで発見を楽しむ。深めていく。
そんな対話型鑑賞を、企業でのダイバーシティ&インクルージョン推進、アンコンシャス・バイアス対策に活かしていけないか、、、
まだまだ対話型鑑賞ファシリテーションのスタート地点にいながらも、そんな可能性を感じているのでこれからも引き続き探究していきたい。
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