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顰蹙が読めないの件

顰蹙(ひんしゅく)が読めない読者が作者に感想で噛み付いたというのが話題になっています。
ここでは読者の態度とかの話ではなく、周辺の情報のやや技術よりの補足的なことを書きました。

ことの概要

ことの発端はこのツイート参照。

読者の言いがかりには、作者さまも、大変だっただろうと思います。

この小説のタイトルのようです。
https://ncode.syosetu.com/n9587fn/

クラスごと召喚……のち、固有スキル名で王女様のヒンシュク買って追放された俺だけど、実のところ神スキルだったので成り上がる

と現在はヒンシュクがカタカナだけど、元々は漢字で顰蹙だったのが、キャッシュなどでわかります。
ちなみに削除されたのは記述箇所のほうではなく、読者の感想だと思われます。

指摘されたらしいのは、本文中とかではなく、タイトルという点も重ねて指摘しておきます。
本文であれば「ルビを振ればいい」という、単純な、回答が導き出されます。
作者様は書籍家作家のようでした。
書籍においてどんな単語にはルビが振られるかくらいは把握しているでしょう。
対応として「顰蹙(ひんしゅく)」のように括弧書きではなく、カタカナを選んだのも十分に理解できます。括弧書きはなんか嫌だというのは筆者も分かります。

顰蹙の字の難しさ

さて「顰蹙」はどれくらいの難読漢字であるか、という点についていくつか情報を挙げまました。

 顰、蹙ともに
 常用漢字:いいえ
 人名漢字:いいえ
 漢字検定:1級
 JIS漢字:第2水準

 漢検水準
 2級:常用漢字すべて、2136字
 準1級:JIS第1水準と常用漢字、約3000字
 1級:JIS第2水準と常用漢字、約6000字

どちらも同じくらい難しいです。
JIS漢字のコード表を見ると第2水準は部首順なので顰の部首は「頁(おおがい)」蹙は「足」であるのが分かります。
まず常用人名ではないので中学校までに習ったり、新聞テレビで見る機会はあまりないと考えられます。漢字コードの第2水準もある程度比較的難しい画数の多い字がほとんどです。
もし漢字検定「準1級」であったなら、読めるくらいはする人が多いと思いますが、顰蹙はどちらもバリバリの「1級」です。
だから「読めて当たり前」「読めないとか学がない」とまで言えるとは、筆者は思いません。
ただし「顰蹙を買う」は比較的ラノベであっても、わりあい見かける表現ではあるので「ほぼすべての人が読めないほど難しい」とも思いません。
赤ちゃんで生まれてきて後天的に漢字や言葉は覚えるものである以上は「読めないのを馬鹿にする」のも「常用漢字でないものを読める前提とは常識がない」とするのも説得力に欠けていて、不毛な言い争いに感じます。

なお筆者の主観で言えば、本文中ならという但し書き前提では、ルビを振って漢字で書く処理にすると思いますが、それもケースバイケースで絶対ではありません。
余談ですが、ルビを振って漢字にしそうな頻出語には例えば、絨毯(じゅうたん)、依怙贔屓(えこひいき)、躊躇(ちゅうちょ、ためら-う)、攫(さら)う、轢(ひ)く、などでしょうか。

タイトルの難読漢字

タイトルに難しい漢字を使うのは一般的にはよくないとされると思います。
しかし「涼宮ハルヒの憂鬱」というふうにアクセントとして使う場合もあります。

憂鬱の鬱は難しい漢字として有名になり、2010年に常用漢字入りを果たしました。
新常用漢字で難しい漢字は中学校で読めるようになり、高校で書けるように指導するらしいですが、コンピューターの発達により文字入力と読みさえできればある程度よいという方針のようでした。
だから常用漢字だから書けなければおかしいというのも今は的外れになったみたいです。

あまりシステムのことを話題にする人はいないようですが、小説投稿サイト側もタイトルにルビ振りができれば、だいぶ問題も解消するんではないか、とも考えられます。
適当ですが「幽霊退治屋(バスターズ)がゆく」みたいに思い思いの漢字にルビを振る自由が僕はもっとほしいです。

ググれ

さて次は安易に「辞書を引け」と指摘する人もいますが、そのへんの話をしたいです。

まずここでは「ググれ」と「辞書を引け」が別であるとします。

今回の場所は「小説家になろう」なので「ググれ」も有効です。
多くのウェブ小説またはKindle、epubのリーダーなどの「まともな」小説アプリでは、文字列を選択し、グーグル検索することが可能です。
PCブラウザではドラッグで選択後、右クリックメニューから文字列を検索すればいいです。
スマホでは長押ししたあとドラッグして文字列選択をするとメニューがポップアップするのでウェブ検索を選べばよいです。
もっとも、そういう方法をどの利用者も必ず理解しているかと言われれば、知らない人も中にはいるのではないでしょうか。

「ググればいい」にはググれるアプリ、サイトが限定的である点を指摘しなければなりません。
まずウェブサイト「アルファポリス」では小説本文の選択が不可能で検索できないのです。今はなき「セルバンテス」も同じ仕様でした。
またAndroid標準PDFアプリなどでも、文字列を選択しウェブ検索することができません。
そもそも一部のPDFなどでは画像化などがされているとテキスト検索できない場合もあります。
「読めないならググれ」は正しい指摘でしょうけれど、無理な場合は的外れでもあります。

次にとても難しい語をそのままタイトルに使うような作者が書いた小説本文も、難読漢字が多いと予想するのは、当然だろうと思います。
該当の感想を書いた人の書き方言い方には、問題がかなりもちろんありますが、指摘のごく一部はあながち間違いとまでは言えないのではないでしょうか。

読めない語が頻出して、いちいちググっていたのでは、とてもライトな小説など読んでいられません。

一部読者の実情

筆者の高校生時代、筆者と同様に漢字が苦手なクラスメイトが紙のラノベ本をよく読んでいました。そこで疑問に思い聞いてみたところ、どうも一部の漢字は勘で読んでいる、または発音は気にせずに無視して読み進めていました。

どれくらいの割合の人かは定かではありませんが、ウェブ小説でも、読めない漢字、意味不明な語彙は「読み飛ばす」層は確実にいます。
それ以前に台詞だけ読んで、あとは斜め読みが横行していると囁かれていました。
いちいち漢字の読み方なんて調べないのです。

辞書を引け

本題に戻ります。辞書を引くにはどうしたらいいでしょうか。
安易に「辞書を引け」という人は難しい漢字を本当に辞書を引いたことがあるのでしょうか。

そもそも漢字辞典が家にあるのでしょうか。我が家には小学生用しかありませんでした。

国語辞典を引くには、読み方が分からなければ、引きようがないのは、言うまでもありません。

家に辞典があったとして、多くの漢字辞典は部首順に漢字が掲載されていると思います。
では「顰」と「蹙」の部首はなんでしょうか。パッと見でわかるのでしょうか。正解は上に書いた通りですが「歩」「頁」「卑」を順に似たような難しい画数の多い漢字の中から探し当てる作業は必要になります。この3つ以外だったらお手上げです。これはネットの漢字辞典を使っても同じです。そもそもとして「頁」が分からない、いや筆者は「ページ」と読むのは知っているから変換できますけど、それも知らないと、まず部首一覧から探すのも必要になります。
字が潰れていてよく見えない、または目が悪いという場合もありそうです。
現代の感覚でいえば、かなり面倒くさいのは、理解できると思います。
それが頻出したりしたら、とてもゾッとします。

手書き入力

しかしさいわいにして、コンピューターには賢い選択もあります。
それのひとつは「手書き入力」です。
文字が画数など正確に書けるのが前提ですが、手で書いて文字コードすなわちテキストにおこしてくれるのです。

ここにも問題点があります。そもそもとして、利用者が手書き入力ソフトを認識している必要があります。
MS-IMEならまずツールの出し方が分からないだろうし、Androidではインストールされているかすら分かりません。未インストールならアプリを探す必要があります。

あとパッと見てパッと読む、ライトな読み物であるウェブ小説で、手書き入力みたいなクソ面倒くさい方法で調べるくらいなら、無視したほうがいいという判断をすることもあるでしょう。
またスマホでは他の画面を見ながら違うアプリを操作することが、そもそもできない場合があるので、見ながら書くのが難しいです。

文字認識OCR

もう一つ、どれくらいの人が知っている分かりませんが、OCRというものもあります。
手書き入力と違い、画数などを考慮せず活字の画像から文字をおこします。
グーグル画像検索などでも、画像内のテキストが文字列化されて、検索結果に反映されるようになったといいます。
OCRには似たような字を誤字するという特徴があります。しかし近年のAIの発達により、文字列のテキスト化の際、前後の内容などからこの誤字を減らすような技術もあります。
手書きでなくとも、スクリーンショットを文字列化することができ、場合によっては便利に使えるかもしれません。

その他

顰蹙だけでなく、多くの漢字を読めない場合には、異なるアプローチも有効です。

ひとつは「自動ルビ振り」のツールやサイトを利用します。一太郎でも可能です。
他には「読み上げブラウザ」「スクリーンリーダー」などを使う方法があります。
PCには「棒読みちゃん」などの専用読み上げソフトもあります。
ただし、文脈依存の高い漢字の読み上げ精度はいまいちなものが多いので注意です。

まとめ

なんだかまとまりのない記事になってしまったし、何が言いたいかも、よく分からないですが、とにかく読めない文字はググりましょう。そしてググれないときもあります。ググれないと、とても面倒くさいと分かってもらえたらうれしいです。
ユーザーフレンドリーを目指すのであれば、読めそうもない文字には、ルビをなるべく振りましょう。

おまけ

Twitter上では「顰蹙(ズワイガニ)」とか「饕餮(とうてつ)を買う」とかの派生話題も少しあるので、興味がある人は検索してみると面白いかもしれません。
なお「饕餮」は小説、十二国記にも出てきて、麒麟(きりん)である泰麒(たいき)の事実上の唯一の使令で、とてつもなく強い妖魔でもあるので、馴染み深いです。

お疲れ様でした。ここまでお読みくださりありがとうございます。以上です。

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