2021古民家合宿 9日目 受動的
机に向かい続けない。
Yは机に向かうも問題が解けずに椅子から離れて庭に出る。
庭にはまき遠野が置いてあり、気の向くままに薪を割る。気がつけば雨も上がり、炎天下の日差しが生暖かい空気をひたすら生み出している。
しばらくするとまた部屋の中に入ってくるが、机にまっすぐは帰れないので、他の生徒に話しかけて話しかけて話しかけてから席を目指す。
彼にとって机に向かい続けることのできない理由は無限にある。
昼食が気になる、暑い、隣の人のやっていることがきになる、話したいことを思い出す、近くを虫が飛ぶ、などなど理由は様々。
それでもしぶとくしぶとく学習を回避する。
デバイスでなくとも、普段自分が信頼し、没頭しているツールが突然なくなれば不安になるように、室内でゲームばかりして動画を見ている状態が長い場合、突然デジタルデバイスから離れると落ち着かないような気持ちになる。だが、ここはインターネットも通っていない古民家。古民家には余計な情報はないので、静かな時間が訪れれば自然に自分の避けていることが浮き彫りになるのだ。
デバイスに夢中な生徒の多くは大抵の場合、目を背けたいと思う事に遭遇すると、周囲の人に話しかける事が多い。 話すが能動で聞くが受動であるならば、周囲の人に話しかけるという行動は、「受動的な状態になりたい」という欲求の表れでもある。能動的な頭を用いなければならない学習と、受動的に情報を受け取り続けるデバイスとでは脳の働き方には大きな違いがあるのだ。
学習に集中できない人や、デジタルデバイスをやめられない人は、受動的な頭の使い方に快感を覚えているかもしれないので、まずは受動的な状態の自分をしっかりと認識しよう。そして指先を動かしたり体を動かすことによって、能動的な行動に少しずつ意識を切り替え、能動的な脳の使い方によって快感を得る経験を繰り返し体験し、少しずつ深い集中を手に入れよう。
いよいよ日差しも強くなってきた。先ほど急いで囲んだ洗濯物をもう一度庭に干す。
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