見出し画像

贈り物

自宅に一つのダンボールが届く。
心当たりはなかったが、宛先を見るとそこに入っているものがおそらく夏野菜だという事が判明した。
実は先日、彼の働く農場の少し南側にある温泉に行ったのだが、何とも絶妙なタイミング。
 箱を開けると、長野県から来たみずみずしい野菜が入っている。
都会のスーパーで並んでいる野菜とは、ひとまわり程大さが違い、手に取るとずっしりとした重みがある。ナス、玉ねぎ、インゲン、赤い色のオクラ、身がひしめき合って六角形がみえるトウモロコシ。
 早速トウモロコシを茹でようと、鍋に水を入れ塩を一振り、トウモロコシを茹でる。トウモロコシの黄色い香りが部屋を満たす。
 ふと、箱の中を見ると箱の中に一通の手紙がある。トウモロコシをお湯の中で転がしながら手紙を手に取った。
「お土産に小笠原で拾った石も送ります。」
相変わらずお元気そうで何よりである。

友達から野菜と手紙が届くのは、単純には形容しがたい嬉しさがある。
 自分の周囲の人が、幸せであることが伝わると自らも幸せになる、と何度も感じれるのは幸福な事だ。
「私の一番大切なものは友達である。」と言い、年間に千通以上も手紙のやり取りをしていた西洋の哲学者もいたそうだが、こういうときは彼の持っていた哲学へ共感を思い出す。
日本最南端の青い海を思いだす。長野の温泉と森を思い出す。
箱の底にはサンゴ石にペイントされた小笠原くんが静かに横たわっていた。

画像1


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?