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【大人の流儀 伊集院 静 心に響く言葉】 第86回




大人の流儀

 伊集院 静氏の『大人の流儀』から心に響く言葉をご紹介します。私は現在『大人の流儀』1~10巻を持っています。このうちの第1巻から心に響く言葉を毎回3件ずつご紹介していこうと考えています。全巻を同様に扱います。

 時には、厳しい言葉で私たちを叱咤激励することがあります。反発する気持ちをぐっと堪え、なぜ伊集院氏はこのように言ったのだろうか、と考えてみてください。しばらく考えたあとで、腑に落ちることが多いと感じるはずです。

『大人の流儀3 別れる力』をご紹介します。

 ご存知のように、伊集院氏は小説家(直木賞作家)で、さらに作詞家でもありますが、『大人の流儀』のような辛口エッセーも書いています。


大人の流儀 伊集院 静 心に響く言葉 第86回

第3章 正義っぽいのを振りかざすな


「勝てばいいってモンじゃない」から

伊集院 静の言葉 1 (255)

 なぜ、テレビはあれほどオリンピックだと騒ぐのか? 視聴率のためとしか思えない。
 オリンピックを日本人が皆見る国民だとしたら、それは少しおかしい。
 ”金があれば何だって手に入る”
 と、
 ”オリンピックのメダリストは最高”
 はどこか似ている。
 どっちも間違っているし、金もメダルもたいしたもんじゃない。それに勝者ばかりにスポットを当てる所が品がないったりゃありゃしない。   

大人の流儀 3 別れる力 伊集院 静 


「大人の男の覚悟とは何か」から

伊集院 静の言葉 2 (256)

 ひとつ俳句を紹介する。

 六月を 綺麗な風の吹くことよ

 さわやかと言うか、まことに気持ちの良い句である。
 正岡子規の句である。
 私たちがこの句に、或る種の爽快感を感じるのは、冬が終り、春一番が吹き荒れて、そこからしばらく寒の戻り、短い雨、思わぬ陽気をくり返すのが春であり、目にあざやかに映る梅、桃、桜などが咲くが実際は不安定な天候が続く。
 それを一掃するのが、初夏の風、薫風である。そこからは梅雨を越えれば、あとは力強い夏である。
 日本という国の風土、四季のうつろいは、おそらく世界の中で、一、二番に変化にとみ、美しいのではなかろうか。    

                        大人の流儀 3 別れる力 伊集院 静 
                             



「大人の男の覚悟とは何か」から

伊集院 静の言葉 3 (257)

 正岡子規は明治元年に生まれた。
 時代が大きく変わろうとする時である。
 子規の親友、夏目漱石こと、夏目金之助も同じ年に生まれた。
 時代が激しく変わる中で、二人は寄席で落語、講談を聴いたり、芝居小屋で浄瑠璃を見て愉しんだりしている。
 二人が互いを認めたのは、たとえば寄席で落語を聴いていても、大声で茶化すなど、人の品性の卑しい行為を嫌悪した点である。もう一点は、喀血を若くして経験し、死を、自分の生の間近に見た子規と、ノイローゼ気味で、{初中後《ちょっちゅう》体調が良くなかった漱石も己の生涯を考えたからである。
 二十七、八歳の若者が、それをきちんと考えたのである。
 明治期にはまだ、たとえ若者であれ、己の生に覚悟があった。
 それは歴史で見るとほんの少し前のことである。
 だからと言って私は彼等が現代人より偉いとか、たいしたものだとは言わない。
 そういう時代で、大人の男の覚悟が今と少し違っていただけのことである。 

                          人の流儀 3 別れる力 伊集院 静 
                               


⭐出典元

『大人の流儀 3 別れる力』

2012年12月10日第1刷発行
講談社


表紙カバーに書かれている言葉です。

人は別れる。
そして本物の大人になる。


✒ 編集後記

『大人の流儀』は手元に1~10巻あります。今後も出版されることでしょう。出版されればまた入手します。

伊集院静氏は2020年1月にくも膜下出血で入院され大変心配されましたが、リハビリがうまくいき、その後退院し、執筆を再開しています。

伊集院氏は作家にして随筆家でもあるので、我々一般人とは異なり、物事を少し遠くから眺め、「物事の本質はここにあり」と見抜き、それに相応しい言葉を紡いでいます


🔷「冬が終り、春一番が吹き荒れて、そこからしばらく寒の戻り、短い雨、思わぬ陽気をくり返すのが春であり、目にあざやかに映る梅、桃、桜などが咲くが実際は不安定な天候が続く。
 それを一掃するのが、初夏の風、薫風である。そこからは梅雨を越えれば、あとは力強い夏である」

今日(2023年7月16日)も気温が30°Cを超え、湿度も60%くらいで高止まりしています。沖縄を除き、全国的には、まだ梅雨明けはしていないようです。

そんな中で、「初夏の風、薫風」ではないですが、風が吹いています。乾燥した風とは言い難い湿気を帯びた風ですが、「梅雨を越えれば、あとは力強い夏」がやってきます。

ただし、地球環境の変動によって、日本は四季の移り変わりが年々はっきりしなくなって来ています。

私見ですが、季節の変わり目が年々前倒しでやってきている、とさえ感じています。また、梅雨明け前にはよく雷雨が降り、その後梅雨明けというプロセスを、私が子供の頃によく経験しました。

ところが、最近ではいつの間にか梅雨明けしていたということがよくあります。

そうした事象が、地球温暖化と何らかの関係があるのかは知りませんが、もしかしたら関係があるのかもしれません。


🔶『大人の流儀3 別れる力』について『由美子のいなくなった夏 亡き最愛の妻への想い』の中で言及しています。

伊集院静と城山三郎
『別れる力 大人の流儀3』
私が伊集院静さんに興味を持ったのは、彼の先妻が女優の夏目雅子さんであったこともありますが、『いねむり先生』という題名の小説を読み、不思議な感覚を味わい、また『大人の流儀』という辛口のエッセーを読んだからです。 

由美子のいなくなった夏 亡き最愛の妻への想い p. 212


夏目雅子さんのプロフィール



🔶伊集院静氏の言葉は、軽妙にして本質を見抜いたものです。随筆家としても小説家としても一流であることを示していると私は考えています。


<著者略歴 『大人の流儀』から>

1950年山口県防府市生まれ。72年立教大学文学部卒業。
91年『乳房』で第12回吉川英治文学新人賞、92年『受け月』で第107回直木賞、94年『機関車先生』で第7回柴田錬三郎賞、2002年『ごろごろ』で第36回吉川英治文学賞をそれぞれ受賞。
作詞家として『ギンギラギンにさりげなく』『愚か者』などを手がけている。


⭐ 原典のご紹介



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