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ノーベル賞技術・ゲノム編集の産業の紹介

昨夜、今年度のノーベル化学賞の受賞者が発表された。受賞するのは米カリフォルニア大学バークレー校のジェニファー・ダウドナ教授と、仏出身で独マックスプランク感染生物学研究所のエマニュエル・シャルパンティエ所長であり、同時に受賞するのではないかと思われていたマサチューセッツ工科大学のFeng Zhang教授は選考から漏れてしまったようだ。このゲノム編集技術であるが、私がセツロテック(https://www.setsurotech.com/)の会社紹介で説明するときにはいつかノーベル賞を受賞する技術ですと申し上げてきたが、どのタイミングで受賞するのかが焦点であり、いつか受賞して当然の技術であった。簡単に申し上げれば、自由自在に遺伝子や塩基配列を切り貼りして、ワープロのテキスト編集のようにコントロールする技術である。ダウドナ教授、シャルパンティエ教授らは、そういったゲノム編集の用途にCas9とガイドRNAを伴ったCRISPR/Cas9がシステムが使えることを示したのである。

20201008カオスマップ

こちらに示した図はゲノム編集産業のカオスマップで、セツロテックの会社紹介で時々使っている図である。業界を俯瞰するのに役立つ。ゲノム編集技術は、基本的にはバイオ分野の研究活動を支援する目的で、試薬や実験方法として利用されている。また、遺伝子を自由にコントロールできる可能性が示唆されたことで、この技術を薬作りやウイルス検査などの医療分野で利用しようとするグループや、植物、動物などの品種改良に利用しようとするグループなどが存在し、事業活動を行っている。セツロテックもそういったゲノム編集技術を活用した企業の一つであり、製薬会社をはじめとした企業や大学の研究者らの研究をより早く、効率的に展開できるよう、研究支援事業を提供している。また、セツロテックではゲノム編集技術を畜産分野に最適化して活用しようと研究開発に取り組んでいる。

日本国内でゲノム編集技術を産業化するという面で最先端にあるのは、モダリスであろう。本年8月に株式公開し、難病の治療にゲノム編集技術を活用し創薬開発に取り組んでいる。彼らはノーベル賞技術であるCRISPR/Cas9自体ではなく、その発展版ともいえるクリスパーガンダムを活用しているという。世界で見れば、ノバルティスなどのCAR-T細胞療法がゲノム編集技術を活用して臨床応用され、すでに上市している(Cas9で作った細胞ではなく、前世代のTALENで作られていたと思う)。

検査の分野でもゲノム編集技術は商品化手前まで来ているようで、コロナウイルスの迅速検査にゲノム編集技術を応用して商品開発しているマンモス社(米国)などがある。

そして、農業分野では品種改良を高速化することを目指し、育種技術として開発を目指している企業がある。これまでの品種改良は、雄雌を掛け合わせ、たくさんの子孫の中で選抜していくというような確率論の世界観であったが、ゲノム編集技術を活用した育種方法というのは、遺伝子情報を活用し、まず遺伝子を選定して、ゲノム編集を実施し、形質を評価する、という流れにより基本的には1世代、もしくは2世代ぐらいで結果に結びつく可能性のある育種方法である。世界的には植物での開発を目指している企業が多く、日本でもトマトの開発が先行している。また、京大・近畿大発のリージョナルフィッシュは鯛の品種改良にチャレンジしており比較的早い上市が期待される。セツロテックでは徳島大学発のGEEP法という哺乳類受精卵を効率的にゲノム編集する導入技術を活用し、家畜の品種改良にチャレンジしている。まだ相当時間がかかりそうであるが、いつかお披露目できる日が来ると思うので、いずれ紹介したい。

セツロテック https://www.setsurotech.com/

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