「こんにちは」
えーっと誰のママだっけ、ん?
「こんにちは。あ!」
わたしたちは、お互いのTシャツを見て指さしあって笑った。
デザインは違えど二人ともZAZEN BOYSのTシャツ。
子どもを迎えに来た幼稚園の門の前でこんなふうにわたしと美幸ちゃんの友情が始まった。

「フジロック今年も配信あるじゃん」
公園のベンチでわたしは美幸ちゃんとコンビニのアイスコーヒーを飲んでいる。
年長の遥と年少の晃、美幸ちゃんの娘の年少の千里ちゃんは3人で砂場遊びに夢中だ。
「いい時代になったねー!家でゴロゴロしながら見られるよ」
「けどさ、実際はそうもいかんよね。子ども放ったらかしにするわけには、ねえ」
美幸ちゃんはアイスコーヒーのカップを開けて氷を口に入れた。
「ねえ、1日ぐらいなんとかならないかな?久と大樹さんに協力してもらってさ!夏休みとってもバチあたらんくない?私たち毎日がんばってるもん!」

そして迎えた7月30日。子どもたちは2人のパパに連れられ8時にプールへ出発。
わたしと美幸ちゃんは我が家でのおうちフジロックの準備を始めた。
庭に出したビニールプールに水を張り、氷も入れてビール、ハイボール、酎ハイを冷やす。
カレーとご飯は準備できてる。焼きそばの具を切っておく。ポテトと唐揚げを揚げる。アイスもスイカも冷えてる。
回線も問題なし。チャンネル選択もほぼ意見は一致。夜中に再配信もあるしね。
あとは配信を待つばかり!

まだ午前中なのにビール開けちゃった!笑いが止まらない。
パパ達からはLINEでじゃんじゃん子どもの写真が送られてくる。いいお天気でよかった。

あー楽しい。フジロックは口実で、ただただ自分だけのために使える時間が欲しかったのかもしれない。

わたしたちは歌ったり踊ったり飲んだり食べたり、そしていろんなことを話した。
子育ての不安、夫婦の危機、親にされた嫌なこと、学生時代の武勇伝、忘れられない恋、一生許せない奴、プチプラコスメ、美容医療、なんで親戚は子の人数や性別をあーだこーだ言うのか、ほっといてくれ、なんで義父母は相談もなしに子のおもちゃや本や服を買ってくるのか、etc.etc.

「おやすみ」というメッセージとともに、子どもたちが美幸さん家の和室で仲良く寝ている写真が送られてきた。
パパ達今日はお疲れ様でした。ありがとう。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?