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詩織

お腹が空いて泣く人に初めて会った。
それは私の息子。もうすぐ3か月になる。

そういえば前付き合ってた男が空腹で不機嫌になる奴だった。不機嫌になるのはいいとして、それをこっちが察して「お腹すいたよね。そこの○○で何か食べようか?」って解決策まで提示しないとならないという非常に面倒くさい奴だったのですぐに別れた。彼はきっとすごく世話焼きなお母さんに育てられて感謝も湧かないほどそれが当たり前になっている人なんだろう。

そんなことより息子だ。
生まれてすぐはフニャフニャでたよりなくて抱っこするのもおそるおそるでこんなことならお腹の中にいた方がお互い楽だったのでは、なんて思っていたけど、やっと首も据わって扱いやすくなってきたし、こっちも慣れてきた。
なんとなくだけど授乳と睡眠のサイクルも出来てきた。
それでも彼が言葉で意思を伝えるようになるのはまだまだ先のことなので、たいていのことは泣くことで伝えてくる。
「お腹すいた」「ねむい」「気持ち悪い」「暑い」「寝かされているのはいやだ、抱っこしてほしい」等々…

泣くといえば、産院を退院する前夜私は不安で泣いた。出産はそりゃあ痛いし大変だったけど、産んだあとがこんなに大変だなんて知らなかった。母乳出すのも一苦労だし夜中も何回も起きないといけないし沐浴だってうまくできる自信ない。明日からしばらくは実家だけど、両親とも仕事があるから昼間は自分でなんとかするしかない。
こんなに小さくてはかない者を私は守り育てることができるだろうか。私にそんな力がはたしてあるのか。

そんな不安をよそに息子は成長している。そうだ、親が子を育てる力だけじゃなくて、子もまた自ら育つ力を持っているのだ。
What a wonderful world .

今日も息子は泣いている。私に何を伝えようとしているのだろう。
ちょっと外に出てみようか。気持ちいい風が吹いている。

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