(セミナー動画) Morse Theory 〜 1. Morse Lemma
概要
Morse 理論の基礎 に関する セミナー動画 を始めます。Morse 理論はトポロジーにおける基礎的な道具の一つです。多様体上で定義される Morse 関数を使い、その臨界点を調べることで多様体の「形」を調べることができます。
このセミナー動画では、Morse 関数の存在から、ハンドル分解やポアンカレ双対性まで解説する予定です。
セミナー動画の目的
このセミナー動画シリーズは、大学の数学科で行われる セミナーを模倣する ことを目指しています。セミナーはレクチャー(講義)とは異なり、発表者自身が発表を通して学んだり、聴講者との質疑応答を通してお互いに理解を深めることを目的とします(というのが僕の認識です)。
動画をご覧頂いた上での質問やコメント、間違いの指摘などは歓迎します。
目次(予定)
1. Morse Lemma ← 今ココ
2. Morse Functions
3. Gradient Like Vector Fields
4. Handle Decomposition
5. The Rearrangement Theorem
6. Intersection Number and Poincare Duality
→ 「h-cobordism Theorem セミナー」へ続く
予備知識
・多変数の微積分、線形代数
・位相空間論、多様体論
・(Section 6 のみ) CW複体、(コ)ホモロジー理論
参考文献
位相空間論・多様体論の基礎からモース関数の存在まで解説されている入門書です。
モース関数の存在からハンドル分解、Poincare 双対性まで解説した素晴らしい入門書。このセミナー動画で扱う内容はほとんど全て含まれます。
動画
完成した板書(pdf 形式) は記事最下部からご購入頂けます。
訂正箇所
・p.1 l.8: (∂^2/∂x_i ∂x_j)の (p) が抜けている。
・p.5 l.4: 各 g_i は smooth であるという記述が抜けている。
・p.6 l.3: U は convex であるという記述が抜けている。
・p.7, l.6: det(H_f)_0 ≠ 0 なので「座標の並び替えによって」h_11(0) ≠ 0 と仮定できる、と述べたのは誤り。対角成分が全て 0 ということもありうるため。正しくは次の通り:「対称行列は直交行列によって対角化できる」「二次形式の行列表示は基底変換に関して P^{T}AP なる変換で移る」、この二つを合わせて h_11(0) ≠ 0 となるような適当な座標変換が取れる。
・p.7, l.9: u_1 の定義式、Σ_{i > 1} のあと x_1 があるが、正しくは x_i 。
コメント・質問
・Hadamard の補題で得られる g_i の第二の条件である g_i(0)=∂f/∂x_i(0) は実際には第一の条件 f=Σ x_ig_i の両辺を x_i で偏微分すれば出てきそうですね。
→ 確かにそうですね!
・Hessian が well-defined で対称的であることの証明は何でもないようにやっていますが大変巧妙ですね。Lie bracket がベクトル場として定義されることをうまく利用していますね。
→ この証明は J. Milnor "Morse Theory" に書かれていました。df_p = 0 であることが(局所座標系の取り方によらず) Hessian が well-defined であるために必要であることも見えて、僕も感心しました。
・非退化な臨界点はn個に分類できるということですね。グラフの絵が書いてあったので、MをM×Rにp↦(p,f(p))で埋め込んだものに自然な?計量が誘導されたりするのかなぁなんて考えました。例えばMがコンパクトだったら最大値を取る点では断面曲率が全て正になっていてほしいように思いました。
・動画のスピードが私には少し早くてついていけませんでした。理由の一つとして、次の板書がどこから始まるかわからないので(途中で図が入ったりするため)視線の移動が後手に回ることがあるように思いました。あと、やはり前のページが見えないのが辛かったです(1-2の最後の部分など)。画面を2つにわけて半分ずつずらしていくとかできると少なくとも直前の板書が残って見やすいかもしれないと思いました。
→ ご指摘ありがとうございます。動画の見せ方についてはまだまだ改善の余地があると思います。今回は「正確に喋る」ことに意識が行きすぎてしまったので、次回はもう少し行間に時間的な間を空けるようにしてみます。
・Morse の補題の証明で「det (Hf)_0≠0 なので、座標の入れ替えを行うことで h_11(0)≠0 としてよい」とありますが、h_11(0),…,h_nn(0) は同時にゼロとなり得るので、座標の入れ替えだけでは一般には不十分ではないでしょうか。
→ おっしゃる通りです、ご指摘ありがとうございます。上の「訂正箇所」に訂正を追記しました。
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