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【第26話】なんでもかんでも棺に入れるのはNG!元職員が教える、もっとも棺に入れてはマズいものとは!?【下駄華緒の弔い人奇譚】


―第26話―

お葬式の最後のお別れの際、棺にみんなで故人の好きだったものや象徴するものを納める風習は日本全国大体同じようです。
そのときに、納めてはいけないもの、大丈夫なものがあります。お葬式の経験のある方はご存知かと思いますが、一体なぜ納めてはいけないものがあるのかを説明します。

納めてはいけないとよく言われるものは、まず金属類です。
これはなんとなく分かると思いますが、金属が溶けて大切な故人の骨にひっついてしまったらどうでしょう? もう剥がすことはできません。骨にへばりついた金属を剥がすとしたら、骨を砕いて金属からこそぎ落とすくらいしか方法がないでしょう。
さらに火葬場の設備にもあまり良くありません。台にこびりついた金属はお骨上げ後に職員がヘラなどで取り除きます。その際にどうしても台が傷付いてしまうので設備の寿命に影響を与えます。

ガラス製品も納めてはいけないとよく言われるものです。
これも金属と同じで溶けて骨にひっついてしまうと綺麗に剥がすことは困難です。しかも金属よりよく溶けることが多いので溶けたガラスが台に大きく広がることもあります。全国の火葬場の事故事例として、溶けたガラスが台と炉内の壁の間に入り込み、火葬が終わってお骨上げをしようとして台を引っ張るも、溶けたガラスが強力な接着剤の役割を果たしてしまいお骨上げができない…ということもあったそうです。

さらに、古いメガネはガラス製のレンズであることもあり、その眼鏡を故人にかけさせたまま火葬すると大変なことになります。遺骨の顔の部分にベターッとガラスが張り付き、一番良くないのは首の骨の上から二番目、第二頸椎である大事な喉仏にベターッとガラスが引っ付いてしまうと手の施しようがありません。

一度、金属フレームでガラス製のレンズのメガネをかけたまま棺に収まっていたようでそのまま火葬したら、まるでウルトラセブンのように、ベターッと顔についていて……「あんた達がこんなことするから!」と遺族さん同士で揉めていたことがありました。
おそらく葬儀屋さんの忠告を無視して遺族さんの一部の人達でしたことでしょう。こういう不要な心配や争いを避けるよう、なるべくプロの意見は聞いた方がいいと思います。
ですが、同業者の立場として厳しい目で見たら、その担当した葬儀社の方はアレは駄目コレも駄目と言うだけではなく「なぜ棺に入れてはいけないのか」をしっかりと伝えるべきだったのではないか、とも思えます。
この文章を読んで、なるほどなと思って頂ける方がいれば幸いです。

著者紹介

下駄華緒 (げた・はなお)

2018年、バンド「ぼくたちのいるところ。」のベーシストとしてユニバーサルミュージックよりデビュー。前職の火葬場職員、葬儀屋の経験を生かし怪談師としても全国を駆け回る。怪談最恐戦2019怪談最恐位。

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