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【第32話】えっ?まさかっ!? 元火葬場職員が驚愕したお坊さんの、驚きの行動とは?【下駄華緒の弔い人奇譚】


―第32話―

これは知り合いの火葬場職員から聞いたのですが…。

その方と話している時、「色んなお坊さんがいるよね」という話題に花が咲いていました。本当に色んなお坊さんがいて、たとえば「ナンマンダブ~」と唱えるときに「ナンマンダ~ブッ!!」と、ブッ! で唇を使って口をブー! って鳴らすお坊さん。高確率で毎回遅刻するけどその後遺族さんに時間の大切さを説法するお坊さん。頻繁に屁をこくお坊さん。言い出したらキリが無いほど、色んなお坊さんを見てきました。
が、その知り合いの火葬場職員さんから聞いたお坊さんはそのどれよりも強烈でした。

ある日やってきたお坊さん、終始無言でムスッとしていてちょっと扱いづらい方なのかな…と思いつつ、火葬が始まる前の炉前の読経が始まる直前、急にお坊さんが鞄の中から何かを取り出して焼香台にポンっと起きました。
ん? カセットデッキ? え? まさか? え!?…と思っているのも束の間、慣れた手つきでカセットを再生するとスピーカーから大変美しい声のお経が流れてきたそうです。そしてそのお坊さんはその間何をしているのか?
「…チーン」とリンを良い感じのタイミングで鳴らしていたそうです。
「うわぁ、なんなのこのお坊さん…」と知り合いは思ったそうですが、「いや、まてよ、もしかすると声が出せないのかも知れない」とハッと気づいたそうです。
そう、声が出せなくとも仏の道に進めば立派なお坊さんです。しかし、便宜上こういう場ではカセットを使うということで対応しているのだ。そう思うと自分のさっきまでの気持ちがとても恥ずかしくなったそうです。

読経も終わり、遺族さん達の焼香も終わり、火葬炉の扉が閉じました。
二時間後、お骨あげなので遺族さん達は火葬場の休憩所にゾロゾロと向かいました。
と、そこであのお坊さんがこっちにやってきてニコニコ話しかけて来たそうです

「いやぁー暑いですねぇー!」

いや、話せるんじゃん…。


著者紹介

下駄華緒 (げた・はなお)

2018年、バンド「ぼくたちのいるところ。」のベーシストとしてユニバーサルミュージックよりデビュー。前職の火葬場職員、葬儀屋の経験を生かし怪談師としても全国を駆け回る。怪談最恐戦2019怪談最恐位。2020年末に初の単著を上梓!!

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