見出し画像

いわきFC:またまた岩渕、神ってる!

 J2リーグ第25節、7月9日(日)、対水戸ホーリーホック戦をいわきグリーンフィールドで観戦。結果は、4-3の大逆転勝利、勝ち点を27とし、自動降格圏を脱出、19位(22チーム中)に浮上した。このド派手な「岩渕劇場」をライブで見ることができたのは、実に幸せだった。
 いわきグリーンフィールドは、小規模なスタジアムなので選手達までの距離が近く、観客の満足度は高い。しかも、今回は、「もうだめか」という絶望的な状況からの大逆転劇。その上、主役が、4試合連続ゴールの背番号19なのだから、脚本の質が極めて高かった。ヒーローインタビューでの第一声「最高で~す!」を聞いたとき、2016年の広島東洋カープの25年ぶりの優勝をけん引した鈴木誠也選手(2試合連続サヨナラホームラン)お立ち台の言葉を思い出した。鈴木選手の活躍ぶりを緒方監督は、「神ってる」と表現し、この言葉が、同年の流行語大賞に輝いた。岩渕選手の活躍もだんだん神がかってきた。
 試合は、前回対戦(第2節)同様、立ち上がりに先制点を許す苦しい展開。前回は、後半谷村選手のゴールで追いついたものの、今回同様寺沼選手に勝ち越し弾を決められた。前回は、有田選手の左足のボレーシュートで2-2と同点にしたが、逆転には至らずドロー決着だった。今回は、水戸の立ち上がりの強度が予想以上で、開始5分でクリーンシュートを決められた。またまた追いかける展開となったが、今回は、前半29分に石田→有田選手と渡り、有田選手が鋭いクロスをゴール前に入れると、水戸のCBのクリアミスを誘いオウンゴールで同点とした。しかし、水戸の選手たちの戦闘意欲はなかなかのもので、前半終了間際に、コーナーキックから、フリーで寺沼選手にヘディングシュートを決められ、1∸2で折り返すこととなった。
 中3日での試合ということもあり、後半頭から吉澤、谷村選手を近藤、永井選手に代えて投入、反撃を開始した。リードを許していることもあり、岩渕選手の投入はいつもより10分ほど早めの後半6分からだった。岩渕選手が入ると「また何かをやってくれるのでは」といわきサポーターの期待は、いやがおうでも高まる。しかし、この日の水戸は、サポーターも含め元気一杯で、後半15分に直接FKを見事に決め、リード2点に広げた。残り30分で2点差、「うまくマネージメントされたら勝利は遠いな」と思っていたが、岩渕効果は、そんな不安を軽々と吹き飛ばしてくれた。河村→下田→岩渕と渡ったボールは、ゴール右隅へと吸い込まれたのである。このシーン、栃木戦のゴールと重なる部分がある。栃木戦では、スルーバスの出し手は、宮本選手だったが、この日は下田選手。どちらもワンタッチでのパスを岩渕選手が見事にコントロールして、前回は狭いニア側を、今回は遠い逆側へ思い切りよく蹴りこんだ。両ゴールとも落ち着きと高い技術に裏打ちされたものだった。
 こうなるといわきは押せ・押せとなり、攻撃の強度を強めていく。1点差とした直後、今度は、宮本→有田→吉澤→谷村選手による見事な同点劇が完成した。ゴールエリアの両脇エリアをポケットと呼ぶが、このエリアを上手に利用した美しい連携ゴールであった。宮本選手がポケット付近にパスを送ると、走りこんだ有田選手がヒールでバックバス。これを吉澤選手がゴール前へ横パス、それを谷村選手が押し込んだ。再三好セーブを見せていた水戸GKも至近距離からのシュートは防ぎきれなかったのである。
 残り時間がまだかなりあったので、水戸は選手交代で何とか勝ち越しを狙ってきた。しかし、ドラマは、後半43分に待っていた。水戸は、CKで勝ち越しのチャンスを得たが、もはや、キッカーの武田もターゲットの寺沼選手もいなかった。CKのボールを跳ね返した後、ボールを処理しようとしている水戸の選手へ、岩渕、宮本選手が猛然とプレッシャーをかけ。するとバランスを崩した水戸選手から、ボールは岩渕選手のもとへ転がる。岩渕選手は、前方スペースへ蹴る。宮本選手が追いつきドリブルでセンターラインを超えて運ぶ。ペナルティエリア付近に来ると、シュートではなく、左前へのパスを選択。より確実な岩渕選手に主役の座を譲った。岩渕選手のシュートも決して易しいものではなかったが、見事にゴールネットを揺らし、ここに「岩渕劇場」は、大円団を迎えたのである。サポーターは総立ちとなり、歓声が21世紀の森にこだまするという結末となった。「興奮して今夜は眠れないかも知れない」という声もちらほら聞こえるほどであった。
 次節は、7月15日(土)、アウエーでの山口戦(午後7時KO)。第2節3月5日(日)のホーム戦では、0-1と敗れた相手。押していたのに、後半20分、CKからの混戦から押し込まれての悔しい敗戦だった。今回勝利すれば、勝ち点で並ぶだけでなく、得失点差でも山口を上回ることができ、さらに順位を上げることが可能だ。ただ、「勝って兜の、、、」ということもあるので、平常心が大切だろう。水戸戦でも、ポゼッションが54%と相手を上回り、縦に速いだけでなく、落ち着いたビルドアップもできる新しいいわきスタイルが確立しつつある。筋書が面白いだけでなく、サッカーの内容も「玄人受け」するものに進化することを期待する。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?