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学部改組ビフォーアフター(神戸大学国際人間科学部編)

2017年4月に神戸大学に国際人間科学部が発足してから約1年半が経ちました。このノートでは、発達科学部と国際文化学部という2学部が合併する改組を所属教員として目撃した立場から、主に組織とカリキュラムのビフォーアフターを解説します。

このノートは以下のような方々を主な読者と想定して書くものです。

・改組の渦中にいて何が起きたか知りたい新旧学部の学生
・国際人間科学部への進学を検討している高校生
・他学部、他大学のカリキュラムに興味がある学生・教職員
・政策の議論のため等、「大学改革」の実例・生の声を知りたい人

客観的な事実を主体とした前半パート、それに対する私個人の主観的な意見や気持ちを補足する後半パート(有料)の2部構成でお送りします。

学部・学科の構成

次の図に示すように、2つの学部が合併して1つの学部になるという改組が行われました。旧発達科学部には4学科あったところが3学科に再編成され、元々1学科だった国際文化学部は、定員・教員組織そのままで新学部のグローバル文化学科となりました。(もう少し歴史をさかのぼると、発達科学部は旧教育学部で、国際文化学部は旧教養学部です。)

この程度の小さな(?)組織変更にとどまった理由の1つには2学部のキャンパスを隔てる物理的な障壁が挙げられるでしょう。キャンパス移動に10分程度の登山(誇張ではない)が必要であるうえに、傾斜地を切り開いてできたキャンパスでは建物や部屋を簡単には増やしたり減らしたりできない状況では劇的ビフォーアフターは難しいというわけです。

Global Studies Program

派手さのない組織変更を補うためと言ってはなんですが、新しい学部の目玉として用意されたのが Global Studies Program (以下、GSP)です。一言で言うと「留学しないと卒業できないよ」プログラムです。全学生必修です。

主に旧国際文化学科のノウハウを拡大する
・留学コース(1年の交換留学)
・実践コース(2週間程度~の海外スタディツアー・インターン)
に加えて、旧発達科学部の国内フィールドワークの蓄積を活かせる
・研修コース(短期海外研修+国内フィールドワーク)
の3コースから選択して参加することになります。

全学生必修にすることを前提に現実的に検討した結果、各学生の希望や経済的事情等に合わせてある程度柔軟に対応できるようにしつつ、事前学修・事後学修を単位化することで「行っただけ」にならず、学修効果が高くなるように設計されています。

3コースの中にも豊富なメニューが取り揃えられています。これは客観的にすごいと言っていいと思います。学部生にして大学教授のアフリカ調査に着いて行くとか夢広がりすぎですよね。もはやガンダムや少年ジャンプの域。圧倒的じゃないか、我が軍は(フラグ)

学部共通科目

キャンパス移動は極めて大変ですが、学部共通カリキュラムがGSPだけというわけにはいきませんので学部共通科目が設計されています。完全新作が多いです。

・協働型リーダシップ論
・異文化コミュニケーション論
・フィールドワーク基礎論
・情報科目(情報リテラシー演習、プログラミング基礎演習等)

必修のものとそうでないもの両方ありますが、なるほどそれは全員向けでよさそうですねな科目が厳選されていると思います。巨大教室で開講したり、同じ講義を2か所で開講したり、改組の大変さが物理で出るところです。膨大な人数の学生がぞろぞろと登山をすることになるので、上り下りしやすい階段を作る工事が行われました。実話ですよ!

国際文化学部→グローバル文化学科(コース選択)

あとは国際文化学部(以下、国文)とグローバル文化学科(以下、グロ文)のことだけ書くことにします。(自分の所属学科のこと以外はよくわからないからです。)

まず、2年生になる時点で選択するコース選択が4講座から3プログラムに再編されました。数が4から3に減ったことに加え、講座からプログラムという名称に変更に現れている通り、コース選択による卒業要件への縛りが緩くなっています。

具体的には以下の通りです:
・国文:所属講座の講義を指定数+所属講座の演習を毎学期
・グロ文:選択プログラムの演習を指定数
コース選択後の変更についてもしやすくなっています。

私は国文では情報コミュニケーション論講座で、今はグローバルコミュニケーションプログラムの担当です。教員組織は変更なしでした。残りの3講座が2コースに再編されたということですね。

国文→グロ文(講義&演習)

講義については、各講座が1年生への分野紹介的に開講していた「概論」がなくなり、その代わりに高校で言うところの世界史や地理に当たる基礎的な科目を開講することになったのが一番大きな変化です。

少人数の演習についてはコース選択後の2年生から開始していたのが1年生後期から開始するように半年前倒しされ、各分野について演習を受けたうえでコースを選択することはできるようになりました。卒論指導教員の決定時期についても半年前倒しされました。

ただし、この1年生後期での演習は3プログラムの中から最大2種類までしか履修できません。各プログラムの中にもさらに細かく色々な分野があることを考えると「広く抑える」という概論が果たしていた役割を代替するものにはならないと思います。

演習については、国文では「教員は何科目でも開講し放題、学生も何科目でも履修し放題」という状態だったので
・卒業単位の大部分を演習で埋めている学生
・全学期演習を開講して私塾を形成する教員
という客観的にはあまり健全とは言えない状態が散見されました。同じ科目名が成績表にずらっと並ぶおかしな光景があるあるでした。

グロ文では「各学期には同じプログラムの演習からは1つしか履修できない」というルールができました。同じ科目名は1つまでというまあ普通のルールです。しかしこれはこれで、たとえばグローバルコミュニケーションプログラムが情報分野の演習と心理学分野の演習を同じ学期に開講するとどちらか一方しか履修できないという状況を生んでいます。

プログラム内でうまく連携して不幸な重複がないように演習を開講すれば以前より幅広い分野を学ぶことができますし、半年前倒しされた卒論期間を活かしてその成果が花開けば理想的です。が、改組のドタバタの中でまだ段階的に整備されていっている途中というのが実情かもしれません。ポジティブに考えれば、今なら新しい学部・新しいカリキュラムを完成させる行程に参加できます!

有料パート予告編

後半はもっとゆるゆるに書きます。買ってまで読むものでもないと思いますが、もしたくさん売れたら 神戸大学 カフェオレ パーティ(仮)を開催する費用に使います

・そもそもなんで学部改組したの?
・名前かっこ悪くない?
・Global Studies Program すごい「大変」
・学部共通科目どうなの?学科共通科目どうなの?
・コース選択の縛りが緩くなるのはなぜ?
・各講座の概論はなくてよかったの?

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