幻冬舎文庫「南国再見」を読んで

※久しぶりの投稿です。

病院で外来診察を受け、その帰りに古本屋へ立ち寄り中古本を購入しました。

以下、感想です。


幻冬舎文庫「南国再見」狗飼恭子著

亡くなった人や居なくなった人に思いを馳せる。
日常生活の中に突如として訪れる別れは辛い。
「辛い」という言葉で済ませられない人もいる。
その人にとって大切な人やかけがえのない人はどれだけ想っても想い足りない。

「私」はそんな喪失感からその人への想いを拗らせている。
その人が身にまとっていたものを身につけて出かける。
その人の痕跡を探す。
その人の匂いを探す。
その人の言葉を探す。

「俺、天国って南の国のことだと思うんだ」
その人の言葉を信じて南国を探す「私」。
そして、ギョエンに辿り着き、温室の熱帯植物や色とりどりの花に目を向ける。

ただ名前の羅列だけで文中に組み込まれていたら、あまり頭に残っていなかっただろう。
そこに登場する植物の名前と解説付きで「私」と同じ場面にいるかの様に読み手に知識が加わる。
また、この本に登場するのは赤と緑だけだが、1つの色にも数多くの色があり、赤だけでも25の色彩がある。

題名である南国再見は、南国の色味を感じられる。時系列の描写や「私」が行く道が見える。まるでショートムービーを観ているかの様に。
寂しさや亡くなった人を哀しむ場面が多いが、「私」と一緒に歩きながら色を感じてみるのも面白い。

作中、「ポオ詩集」(新潮文庫)の「アナベル・リイ」という詩を多く引用している。
その一節がとてもマッチしている。
作中では「ポーの詩」とあり、エドガー・アラン・ポーのことと分かる。
ちょっと怖いと感じる作品も多いが、綺麗な一面をもつ作品もあるのだと知った一冊だった。

最後まで読んで下さって、ありがとうございました。

また、不定期更新にはなりますが、読み終わった本の感想をnoteに書かせていただきます。

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