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山花に想う。「立坪菫 タチツボスミレ」

山を始める前は全く花に興味がなかったので、スミレと言われてもその形や花色も想像できなかった。それでも自分の山サイトの記事を書くため、花の写真の同定を続けるうちに、結構なスミレの種類を覚え、一端のスミレ好きと公言してもいいぐらいにはなっていた。

だけど、山行と言うほどの山から6,7年遠ざかってしまった今は、写真や山の記事すら見返すことがなくなり、花の名前などすっかり忘れてしまった。

春になれば日本の野山にはたくさんのスミレが咲く。そのスミレの中でも登山者に最も身近なものはこの「タチツボスミレ」だと思う。そう断言してもいいぐらい、どこにでも咲くスミレだ。

本家の「スミレ」は路地や田畑のあぜ道に咲く濃い紫色をしているが、このスミレは薄紫色で低山や登山口によく咲き、個体ごとの変化も多いので、これが「スミレ」と思っている人もいると思う。

タチツボスミレ

このスミレを初めて撮った時のことを憶えている。初めての天泊縦走で奥多摩駅から瑞牆山荘まで6泊7日の山旅の時だった。GWなので耐寒装備も入れて28kgの大荷物で、慣れない重さに苦労しながらこのスミレを無理な体勢で撮ったのだが、それに懲りて花の写真はその1枚だけで、あとは山の展望だけを撮って歩いた。

甲武信ヶ岳からの朝日(当時のプリント写真より)
朝日岳からの金峰山(当時のプリント写真より)

その珠玉?のスミレの写真を探したが、その山行のデータはぽっかり空いて何も無かった。まだネガフィルムで撮っていた山行だった様で、当時はプリントした写真をスキャンして記録に使っていたらしい。後にポジフィルムを使うようになってからは、フィルムスキャナーを購入し、山のサイトの記録に使うようになった。

残っているデータから一番古いタチツボスミレの写真を探したら、有った、これも見覚えがある。その大縦走の翌年、同じくGWに友人と奥多摩の長沢背稜を歩いた山行だ。途中、残雪の森の中を少し迷って不安になりながら歩いたことを思い出す。2日目は雨降りで冴えない天気だったが、薄暗い岩稜地帯で「イワウチワ」の白とピンクが点々と輝くように続いていたのが救いだった。

イワウチワ(コンデジ)

3日目、早朝の快晴の雲取山で友人と撮った写真が懐かしい。そして、奥多摩駅へ駆け下りる途中で、余っていたポジフィルムで最後に撮ったのが「タチツボスミレ」だった。

数枚余ったフィルムは何かしら撮って使い切るので、その役目がこの山行では、少しピンボケしたこの写真になった。

タチツボスミレ(ポジフィルム)

それ以後、何度もタチツボスミレの写真は撮ったが意外と良いのが無く、冒頭に載せた高尾山で撮ったコンデジの写真がお気に入りの一枚になっていた。

でも、最後に載せたポジの写真も、木漏れ日を受けて岩の傍らにひっそりと佇む姿が可愛らしく、‘’私たちもたまには撮ってね”と、こちらへ囁いているようだ。余り物のフィルムで適当に撮った写真だけれど、今見ると、とても懐かしく、そんなに悪くない絵にも思えてくる。

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