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にしみのライナー運行開始に寄せて(1章)

2021年7月17日から、ホニャラノイエがある大野町から、名古屋駅までの直行高速バス・にしみのライナーが運行開始というニュースが入った!
これを機会に、大野町の公共交通についてあれこれ書いてみつつ、今後こうなっていくといいな!という展望も記してみたい。
第一章では、大野町を中心とした公共交通の現状を書いてみる。

①大野町の公共交通の歴史(鉄道もあったなあ…)

「大野町」と聞いて、直ぐにああここか。と言ってもらえることは中々ないので、簡単に説明すると、大垣市から、揖斐川沿いに北上し、大きく二股に(揖斐川と根尾川)分かれるところ、その二股の間の町。
という説明が一番イメージしやすいだろう。

古くは、岐阜市内に向けて、名鉄揖斐線が走っており、一時は大野町内・黒野駅にて、本揖斐方面(揖斐線)と、谷汲方面(谷汲線)に分かれる、拠点駅としての機能もあったが、利用客の減少もあり、まずは黒野駅から本揖斐・谷汲側が2001年に廃止。黒野駅がターミナルという時代も長く続かず、結局2005年には全線が廃止されるに至った。

この背景には、少なからずJR東海道線の利便性の向上や、名古屋の求心力の向上が挙げられる。

岐阜市内線は、交通渋滞に巻き込まれての遅延によって、当時の新岐阜駅で折り返すことが常態化。晩年は、駅前整備の関係で、JR岐阜駅までの運転を休止していた。
両駅間は徒歩5分ほど離れていることもあり、岐阜市内・揖斐線は、名鉄本線との接続を前提になっていた(名鉄が運営していたこともあり、当然ではあるが)
国鉄時代は名鉄の方が利便性で優っていたこともあり、この体系でも通用したのだろう。

しかし、JR東海になってから東海道本線の快速系統が劇的に進化し、岐阜~名古屋間はJRの圧勝。
こうなると、沿線の人の動きも変わっていく。

名鉄揖斐線→新岐阜→名鉄本線というルートで向かっていた名古屋方面の通勤客も、穂積駅までクルマで向かい(または送迎)、そこからJRで向かう流れが主流になる。

また、名古屋駅周辺の発展と、岐阜中心地の衰退もこの時期に起こる。確かに岐阜中心地へ行くなら、駐車場の問題もあり、柳ヶ瀬商店街の至近に電停がある名鉄揖斐線&岐阜市内線の価値はまだまだあったものの、そこへいく人の流動が減り、名古屋集中傾向が進めば、揖斐線の利用者が減るのも当然のことだ。

さらに名鉄自体も、JRの攻勢により本線系統の不振。そうなるとしわ寄せは、赤字路線の切り捨てとなるのも自然なこと。沿線自治体は存続を求めたものの、根本を抑える岐阜市が否定的な立場だったということもあり、路線廃止となる。この瞬間、大野町から鉄軌道系の公共交通機関が消滅したのだ。

②大野町の公共交通、現状と課題

主に、大野町役場を基点として以下のような体系になっている。

1 岐阜方面(岐阜バス路線)

大野バスセンター又は、パレットピアおおの~JR岐阜駅間を、50分~1時間ほどで結ぶ。
また、特殊系統として平日朝のみ、岐阜方面に大野バスセンター発、モレラ岐阜経由の新快速が運転される。
運行頻度は、平日の日中は1時間おき。しかし土日になると半減し、2時間おきの運転となる。

岐阜方面へのアクセスとして、朝晩はそこそこの乗車がある模様。基本的に、通勤及び通学客がメインの路線だ。大野バスセンター発の便は、元々の名鉄揖斐線の停車駅に沿った形で運行している。

2 穂積方面(岐阜バス路線)

大野バスセンター〜穂積間を、40分前後で結ぶ。あまり速達性はないようだが、快速便が運行されているのも特徴だ。
運行頻度は、平日は概ね1時間に1本程度が確保されているものの、土日は半分以下に減少し、2時間~3時間おきの運転となる。
乗車したことはないが、恐らく穂積からJR乗り継ぎで名古屋方面の利用を想定しているものと考えられる。

3 大垣方面(名阪近鉄バス路線)

大野バスセンター~大垣駅間を30分前後で結ぶ。日中の便は、パレットピアおおのを経由するため、少し遠回り。5分ほど余分に時間が掛かる。
なお大垣から先、総合庁舎前までも運転され、大垣駅北口と南口(こちらが大垣駅前と称される)と、二度、大垣駅を通るのも特徴。
運行頻度は、平日が1~2時間おき。
土日になると、2~3時間おきとなり一気に本数が減る。

4 地域内交通(揖斐川町コミュニティバス&デマンドタクシーあいのりくん)
大野町によるコミュニティーバスに代わる移動手段として、デマンドタクシーあいのりくんという、システムがある。
乗車前、30分前を目途に乗車区間を予約し、指定停留所から乗車。指定停留所は町内各所にきめ細かく設定されているため、ほとんどの行先はカバーできるだろう。一乗車300円だ。
また限られた条件はあるが、自宅を発着点として登録することも可能。

また、大野バスセンターから、揖斐川町方面へのコミュニティーバスもある。こちらも一乗車300円。街を跨いでコミュニティーバスが走るケースは少ないように思う。
廃止となった、名鉄揖斐線の代替路線の意味合いもあるのだろう。


<問題点>

・利用客の少なさ
どの路線においても言えることだが、平日日中・および、土日においては利用客が相当に少ないことが挙げられる。
大野町内のバスを見る限り、日中に走っているバスの乗客は、せいぜい数名程度。明らかに厳しい状況だ。
この地方は、やはり車社会。一般的には各家庭に1台ないし、一人一台車があるのが普通な地域。家の敷地も広いため、駐車場所にも困らないことも背景にある。

・時間が掛かりすぎる
対岐阜で考えた場合、やはりバスはどう考えても時間が掛かる。
自家用車で行けば30分少々で行けるところを、バスは倍近くかかり、運賃も安いモノではない。
路線バスの宿命ではあるものの、途中で狭い道を通ったり、非効率な運転経路になっているのも原因の一つ。
大垣方面へのバスは、比較的最短距離を走ることもあり、自家用車との速度差はそんなにない。

次章では、いよいよ走り始めるにしみのライナーの概要と可能性について、考えてみたい。

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