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一回の緊急事態宣言で一兆円の損失、だからワクチンを急ぐ

先日編集部内で「いますぐワクチンを受けたいか?」と議論になった。千田は「早い方がいいけど、順番があることだから無理やり早くなくていい。自分の番が来たらで。」と言ったのだが、黒田から「なんで?!ワクチンがあるのに、なんで早く打とうと思わないの?!自治体の人に言って早く打たせてもらえばいい。なぜそうしない?」と、いつものなぜなぜ分析が行われた。公式情報を見ていくうちに、ワクチンを急がねばならない事情、待たなくて良い理由が明らかになってきた。今回はその内容をお伝えしたい。

ワクチンはすでに必要分確保されている

あまり報道されていないことだが、ワクチンは十分に確保されている。ワクチン確保に関する取り組みを政府の資料から抜粋する。

ワクチン確保

武田薬品工業・モデルナ社との契約では、5,000万回分、アストラゼネカ社との契約では1億2,000万回分、ファイザー社との契約は1億9,400回分の供給を受けている(もしくはこれから受ける予定である)。国内での流通のもと、とあるので、接種が進めばその分供給されるということなのだろう。参考に、ファイザー社の配送スケジュールを以下に記す。

ファイザーワクチンスケジュール

こちらによると、一番右下「6月末までに、高齢者約3,600万人2回分の配布を完了」とある。政府は希望する高齢者に対して7月末までの接種を要請しているが、その背景には、確保されているワクチンを一刻も早く使わなければならないという事情がある。6月に配布されるものを、長々と使わずに延ばす状況をつくってはならない。

ワクチンの保管期限は6ヶ月しかない

ワクチンには期限がある。各社で保管温度など条件に違いがあるが、原則、6か月だ。

ワクチン期限

先入れ先出しが徹底されていたとしても、2月に配布されたワクチンは8月以降には使用不可となり、3月に配布されたものは9月以降に使用不可となる。もし期限の遅いワクチンから使用してしまった場合、初期に配布されたものが残ってしまう、その可能性もゼロではない。

冷凍庫の電源切れで使用不可になり、自治体がお詫びするというニュースが連日報道される。だが、そもそもワクチンの保管方法はとても複雑だ。

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「ワクチンの納品形態には10バイアルが収納されたバイアル箱とバイアル箱が12箱1ケースの包装箱とがあり、包装箱単位で納品された場合は包装箱のまま冷凍庫のまま冷凍庫に格納することを原則としつつ、開梱が必要な場合は1包装箱ずつ冷凍庫から取り出し、速やかに行うこと。また冷凍庫の頻繁な開閉、長時間の解放による庫内温度の上昇や結露に十分留意すること」とある。

取り扱いには十分注意が必要だし、初めて扱うのに安全性とスピードがどちらもが求められる。ただでさえ難しいものを扱っているのだから、人為的なミスが起きてしまうのはある程度仕方がない。そこを「けしからん」と叩くのは、少し酷な気がしている。謝罪することによってワクチンが増えるわけではない。その対処時間、報告に費やす時間は、一刻も早く今あるワクチンを接種することに注力したほうが、健全なのではないだろうか。

長引けば長引くほど、お金がかかる

ワクチン接種が延長すればするほど、接種の会場費、運営費、スタッフ、ワクチン配送、分配、保管、冷凍庫の電気代…など費用がかさんでいく。その間の生活は、給付金などで耐え凌がなくてはならない。飲食店や観光施設の利用が制限され続け、限界を迎えて経営破綻する企業が、外食・宿泊、交通、他の個人向けサービス業で相次ぐだろう。国は早期接種にむけて新たな支援策を打ち出したが、このような支援をしてでも早く進める必要性があるのだ。

緊急事態宣言の損失額は1.7兆円

もしワクチン接種が進まず、第5派で緊急事態宣言が発令された場合、経済へもさらなる影響を及ぼす。どのくらいの規模かというと…

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直近発令された宣言では1.7兆円の損失がと見積もられている(詳しくはこちらを参照)。
ちなみに、第一回は6.4兆円、第二回は6.3兆円、第三回は3兆円と推定。
緊急事態宣言を回避することは経済損失の防止につながる。そのためにいま一番有効な手立ては、ワクチン接種なのだ。

負担を強いられるのは、誰か?

そうは言っても、一兆円が自分の財布から取られるわけではないと思う人もいるかもしれない。飲食業や観光業など一部の業界を除いて、経済損失インパクトのイメージがつきづらいのも正直な感覚だろう。
だが、忘れてはならないのは、この財源は我々国民の税金だということ。今の世代に負担がなくとも、将来に必ず負担がのしかかる。これからの10年、20年、30年を支える世代が、そのツケを払わされる。今の財布が痛まないからといって、目をつむって良い問題ではないのだ。

早く接種して、未来のためになる活動をしたい

今はワクチンをどのように打つか?に注目が集まりすぎているように思う。どの会社のものを打つか、どこで打つか、集団か個別か職域か、副作用が不安、仕事が忙しく時間がとれないので打つのが難しい…どれもとても大切なこと。自分の体に関わるから。

でも、私たちはワクチンを接種するために生活しているわけではない。その先の未来、新しい社会を作るために今を生きている。早く次のステップに進みたいと思うのだ。

根拠のない情報で不安に駆られている暇はない。高速大名行列でも、そのほかのやり方でも、行政も接種する人もされる人も三位一体になって乗り越えていくときなのだ。
そのために編集部は、正しい情報、明るくなる話題をこれからも提供していく所存である。

編集部 ちだ(仙台在住)

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