§221.01 「預金」の意義
1.事件のその後
(略)
2.事案の検討
(略)
本件判決は、「その具体的な契約内容が民法上の消費寄託契約のみではなく、他の様々な約定も存在するものであっても、銀行その他の金融機関を受寄者として消費寄託された金銭としての性質を有するものについては、原則として預金であるということができるものと解するのが相当である。」と判示している。
本件判決は、「預金の経済的な意義としては、銀行等の金融機関が、預託を受けた金銭を一定期間運用して利益を上げる一方、通常、預金者に対しては、預金を自ら運用することにより収益を上げることの対価として、当座預金を除き、一定の割合の金員(利子)を支払うものであるということができる。」と判示している。
⑴における長戸評釈のデットアサンプション契約の内容のうち、元利金償還債務(社債、銀行借入等)を有する企業が、銀行に金銭を預託する点は、⑵の消費寄託された金銭としての性質を有するものに対応するという関係を有し、⑴における元利金償還債務を銀行が肩代わりするという約定は、⑵の他の様々な約定のひとつであるという関係を有するものと思われる。
まず、①の事実は、本件預金の法的性質に関する事実にあたると考える。なぜなら、A金員の預託と、B金員の指定先への支払いという法的義務について述べており、消費寄託契約との類似性を窺わせる事実だからである。
次に、②の事実は、本件預金の経済的意義に関する事実にあたると考える。なぜなら、支払い総額であるB金員が、預託されたA金員を超過するということは、差額分が、利子に対応することを窺わせる事実だからである。
そして、③の事実は、本件預金の経済的意義に関する事実にあたると考える。なぜなら、A金員が、B金員に一定の割引率を適用し、B金員を現在価値に割り戻した金額であるということは、銀行が適用利率については、支払いを約束したに等しく、預金利子の約定との類似性を窺わせる事実だからである。
次に、④の事実は、それ以外の事実にあたると考える。なぜなら、銀行がB金員を支払う相手が誰であるのかという点は、法的性質に関する要素のようにみえるが、消費寄託契約であっても、預金の返還先を指定することはできるのであって、決定的な要素ではないと考えられるからである。
さいごに、⑤の事実は、本件預金の経済的意義に関する事実にあたると考える。なぜなら、銀行が、A金員の預託を受けた後で、それを運用していたと認められるということは、本件預金の経済的意義の指摘するものだからである。
3.預金利子以外の利子所得
設問①
「利子所得とは金銭消費寄託契約にもとづいて受け入れた金銭に対して支払われるものである」(協和工業事件判決)とされ、通説は、これに「定期に定率で多数の者に同じ条件で支払われる点に特色がある」という説明を付け加えると、解説されている(佐藤〔第3版〕60頁)。そして、公社債の利子についても利子所得と扱われる理由は、「『定期に定率で多数の者に同じ条件で支払われる』という性格が、預貯金の利子と共通していること」に求められると解説されている(同61頁)。信託からの収益の分配についても、同様の理由から、利子所得と同様に扱われているのではなかろうか。
設問②
利益参加型社債は、普通社債と異なり、発行体において一定水準の利益が生じたとき、通常の利率による利子に加えて、株主に優先して、一定率の利子を受け取れるという仕組みの社債のことを指しているものと考える。このような社債は、「定期に定率で多数の者に同じ条件で支払われる」という特色を依然として有しているといえる。なぜなら、利益参加するときも一定率の利子の支払いを受けるものであって、株主が分配可能額から株主総会決議に従って支払いを受ける配当とは性質が異なるからである。この点、仕組債の利子は利子所得として扱われているようである。ただ、「今のところ、このような商品の『利子』であっても、その基礎となるのが法的に『社債』である場合には利子所得に該当すると解されているが、その当否には議論の余地がある。」(佐藤〔第3版〕65頁)と指摘されている。
4.関連裁判例
(略)
5.相互参照
(略)
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