§233.01 費用収益対応の原則
1.費用収益対応の原則
費用収益対応の原則は、「『ある支出は、それが収入を得るのに用いられた年の必要経費として控除される』という原則」(佐藤〔第4版〕270-271頁)と説明される。
引用教材は、「ただ、この場合に注意しなければならないのは、対応に際して基準になるのは収益の側であって、費用ではないということである。つまり1期の経常収益をとらえ、この収益をあげるに要した費用を抜き出すのである。」と説明する。このため、「収益」が先に決まると考える。
売上高と売上原価の対応のように個別対応と呼ばれるものでは、個別の商品等の売上が発生した年度に、その商品等の売上原価を対応させて、その年度に帰属させる(直接的対応)。これに対して、販売費および一般管理費は、特定の売上との対応を確認することが難しいため、その年度の売上総利益に対応するものとみなして、その年度に帰属させる(間接的対応)。
所得税法37条1項のうち、太字部分(A)が「直接的対応」、太字部分(B)が「間接的対応」にかんする規定であることを確認できる。
「その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額……の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額(A)及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額(B)とする。」
2.費用収益対応の原則の応用問題
あらかじめ、将来、費用が発生することを見積り計上することが考えられる。つまり、設例では、経験的に、無料保証により将来発生する費用を予測し、引当金として、購入による売上が発生した年度に、費用を計上することが考えられるのである。「ただし、引当金を使ってまだ生じていない損失やまだ支払っていない費用を必要経費に算入することを緩やかに認めると、納税者がかってに必要経費を増やしてある年の課税所得を減らす……という濫用の恐れが大きい。そのため、現行法では貸倒引当金(52)と退職給与引当金(54)の2種類の引当金が認められているだけである」(佐藤〔第4版〕272-273頁)と説明される。
令和4年に一括して必要経費への算入を認めると、翌年以降に発生する売上との個別的対応がとれなくなる。このため、令和4年に一括して必要経費への算入を認めるのではなく、資産として計上したうえで、売上に対応する期間にわたって償却することが考えられる。つまり、「このことを実現するためには繰延資産(2Ⅰ⑳、令7)の計上とその償却(50、令137)という会計技術を用いる。」(佐藤〔第4版〕272-273頁)ことになる。
3.別の側面
(略)
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