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§312.02 公益法人等


1.法令の定め

(略)

(ケースブック租税法〔第6版〕359頁)

2.事案の検討

⑴ 判旨は、本件の事実関係を「外形的に見ると」、本件ペット葬祭業がどのような形態を有するとしているか。

(ケースブック租税法〔第6版〕359頁)

 本件判決(ペット葬祭業事件判決)外形的に見ると、本件ペット葬祭業は、「請負業、倉庫業及び物品販売業並びにその性質上これらの事業に付随して行われる行為の形態を有する」と判示した。

⑵ そのような形態を有する事業が収益事業に該当するかを判断するにあたり、判旨は、いかなる判断基準を採用しているか。それらの判断基準は、「競争条件の平等を図る」という法人税法の趣旨理解と、どのような論理的関係にあるか。

(ケースブック租税法〔第6版〕359-360頁)

設問前段について
 「宗教法人の行う上記のような形態を有する事業が法人税法施行令5条1項10号の請負業等に該当するか否かについては、事業に伴う財貨の移転が役務等の対価の支払として行われる性質のものか、それとも役務等の対価でなく喜捨等の性格を有するものか、また、当該事業が宗教法人以外の法人の一般的に行う事業と競合するものか否か等の観点を踏まえた上で、当該事業の目的、内容、態様等の諸事情を社会通念に照らして総合的に検討して判断するのが相当である」としている。

設問後段について
 判断基準は、①対価の性質と②宗教法人以外の法人の事業との競合可能性などの観点を踏まえることを求めている。この点、②の観点は「競争条件の平等を図る」ことと直接的な論理的関係にある。①の観点は、支払が、役務等の対価なのか、宗教法人への喜捨なのかということを問題としている。インターネットで調べると、「喜捨(きしゃ)」は、宗教倫理的な行為であり、「惜しむ心なく,喜んで財物を施捨すること。施捨は仏・法・僧の三宝を守るためでもあり,また財物に対する執着や物欲から離脱させる意味もある。」と説明されている。喜捨であれば、喜捨する側が、自発的に支払う額を決定するのではないか。
 これに対して、役務等の対価は、原価に利益を乗せて業者から顧客に提示される価格であろう。そして、役務等の対価として提示された価格は、競合他社の役務等の品質と価格を比較されることになろう。
 このように考えると、①の観点は、競争の最大関心事である価格について抜き出したうえで、喜捨の場合は競合しないが、役務の対価であれば競合するということを強調した説示のように思える。このため、①の観点も、「競争条件の平等を図る」ことと直接的な論理的関係にあると考える。

⑶ 判旨第2段落の説示を吟味せよ。
 ①料金表が存在していたという事実は、結論に影響しているか。
 ②もしペット供養業を行う民間事業者の数がはるかに少なかったとすれば、結論は異なったであろうか。

(ケースブック租税法〔第6版〕360頁)

設問①について
 判旨は、「本件ペット葬祭業においては、Xの提供する役務等に対して料金表等により一定の金額が定められ、依頼者がその金額を支払っているものとみられる」とした。このことは、前述の業者からの価格提示があったこと、そして、料金表の提示価格は依頼者によって増減されず、それに従った金額が支払われていたことを示唆している。このため、対価は、宗教倫理的行為としての喜捨ではなく、役務等の対価であったと認められている。つまり、判旨は、上述した引用部分に続けて、「したがって、これらに伴う金員の移転は、Xの提供する役務等の対価の支払として行われる性質のものとみるのが相当であり、依頼者において宗教法人が行う葬儀等について宗教行為としての意味を感じて金員の支払をしていたとしても、いわゆる喜捨等の性格を有するものということはできない」と説示している。したがって、料金表が存在し、その価格が増減されなかったことは、結論に影響していると考える。

設問②について
 現に、ペット供養業を行う業者の数は、結論に影響はないと考える。なぜなら、新規参入者との競争条件の平等を図る必要があるからである。

⑷ 判旨の採用する収益事業該当性の判断基準は、次の場合に当てはまるだろうか。
 ①宗教法人以外の公益法人等がペット葬祭業を営む場合。
 ②宗教法人がペット葬祭業以外の事業を営む場合。

(ケースブック租税法〔第6版〕360頁)

設問①について
 ペット知識の普及等を目的とする公益法人等がペット葬祭業を営む場合であっても、判旨の法人税法の趣旨理解はあてはまると思われる。このため、判旨の採用する収益事業該当性の判断基準を援用することができる。ただ、①の観点については、宗教的行為である喜捨は想定できないため、寄付なのか、役務等の対価なのかという枠組みで、考えるべきであると思われる。

設問②について
 宗教法人がペット葬祭業以外の事業を営む場合であっても、判旨の法人税法の趣旨理解はあてはまると思われる。このため、判旨の採用する収益事業該当性の判断基準を援用することができる。

3.関連裁判例

(略)

(ケースブック租税法〔第6版〕360-361頁)

4.公益法人に関する税制改正

(略)

(ケースブック租税法〔第6版〕361頁)

5.相互参照

(略)

(ケースブック租税法〔第6版〕361頁)

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