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§231.01 収入金額の意義

1.収入金額の意義と計算

⑴ (略)

(ケースブック租税法〔第6版〕275頁)

⑵ 所得税法36条1項、2項を読み、収入金額がどのように計算されるかを確認せよ。特に、現金による収入と現金以外の収入との違いを指摘せよ。

(ケースブック租税法〔第6版〕275頁)

 収入金額は、その年において収入すべき金額として計算される(所得税法36条1項)。現金であるときは、その金額によることは明示されていないが当然のこととされている。そのうえで、現金以外の収入については、「その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額」(同項かっこ書き)とされている。そして、現金以外の収入に係る「その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額」の評価時期については、その物あるいは権利を取得し、または、その利益を享受する時における価額とされている(同条2項)。

2.債務免除益に関する立法

 この①②③において、債務免除を受ける納税者の経済的な危機の水準は同じであると考えられるか。また、相続税法8条で相続税や贈与税が課されない債務免除益や所得税法9条1項10号が適用される場面との整合性についても検討せよ。

(ケースブック租税法〔第6版〕276頁)

1.所得税法44条の2の通達関係

 所得税法基本通達44条の2は、③である場合とは、破産手続開始の申立て、再生手続開始の申立てをしたならば、免責許可の決定(①)あるいは再生計画認可の決定(②)がされると認められるような場合をいうことに留意すると定めている。このため、債務免除を受ける納税者の経済的な危機の水準は、同じであると考えられている。そして、国税庁の解説では、「すなわち、既往の債務を弁済できなくなった個人の債務者であって法的整理の要件に該当することとなった債務者について、法的整理によらず、債権者と債務者の合意に基づき、債務の全部又は一部を免除される場合がこれに当たります。」と説明されている(国税庁「平成26年度税制改正に伴う所得税基本通達等の主な改正事項について」2-3頁)。

2.相続税法8条と所得税法9条1項10号

 「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難」である場合(所得税法9条1項10号)は、「債務者の債務超過の状態が著しく、その者の信用、才能等を活用しても、現にその債務の全部を弁済するための資金を調達することができないのみならず、近い将来においても調達することができないと認められる場合」と考えられている(所得税法基本通達9-12の2)。
 そして、「債務者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合」(相続税法8条1号・2号)とは、「その者の債務の金額が積極財産の価額を超えるときのように社会通念上債務の支払が不能(破産手続開始の原因となる程度に至らないものを含む。)と認められる場合をいう」と考えられている(相続税法基本通達8-4、7-4)。
 所得税法44条の2の③と所得税法9条1項10号は、いずれも「著しく困難」である場合であるのに対して、相続税法8条は「困難」である場合であり、「著しく」が含まれていないという違いがある。
 このためか、相続税法8条は、帳簿上の債務超過で足り、いわゆる支払不能(債務者が支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものについて、一般的かつ継続的に弁済することができない客観的状態にあること(破産法2条11項))までは、求めていない(つまり、通達ではかっこ書きで破産手続開始原因に至らないものを含むと注意書きをしている)。
 これに対して、所得税法9条1項10号の「著しく」困難であるといえるためには、支払不能のように一般的・継続的に支払いができないことを要求している。ただ、一時的に支払いができない状態も含めることで、厳密に、破産手続開始原因に限定していないようである。

3.相違点

 1において検討した所得税法44条の2の通達は、破産手続開始原因(自然人については支払不能)(破産法15条1項)あるいは支払不能のおそれ(民事再生法21条)を要求しているようにみえる。これに対して、2において検討した所得税法9条1項10号は、一時的に支払いができない状態を含めているように見受けられる。この相違点について、どのように考えるべきか問題となるが、所得税法9条1項10号と同法44条の2第1項の同じ文言を用いている以上、同じに解すべきであるから、破産手続開始原因のあるときに限定する必要はないのではなかろうか。これは、同項の文言が、(「その他の」ではなく)「その他」とし、「免責許可の決定」と「再生計画認可の決定」と並列して「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合」を列挙していることとも整合するのではないか。

3.関連裁判例

 (略)

(ケースブック租税法〔第6版〕276頁)

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