アマガミプレイ後における虚無感とその治療法

「アマガミ」というゲームをプレイしたことのある多くの人が、ある感覚を覚えたに違いない。それは、虚無感、虚脱感、あるいは〈現実〉との面晤─すなわちアマガミという〈物語世界〉からの疎外感のようなものだろう。

その虚無感とは、エンドを迎えた瞬間ゲーム内の〈物語世界〉が姿を消し、水泡に帰してしまうことに起因している感情である。

私はその脱力感の症状に酷く悩まされる患者の一人である。私の自己分析を通して、一人でも多くのアマガミストがこの病から立ち直れることを願って止まない。

さて、アマガミには多くのエンドが存在する。その中でも「スキBEST」はこの上ないハッピーエンドであり、プレイヤーは至上の幸福感に包まれる。
この時点でのプレイヤーは、まるで四肢の感覚が失せ、幽体離脱かのように意識が〈アマガミの世界〉の囚われている状態にある。それは俗世のしがらみから解放され、自由で楽しい状態である。
しかし、エンドを迎えた後、現実に戻ることを余儀なくされたプレイヤーはどうなってしまうか?
一度〈物語世界〉にのめり込み、心を奪われたプレイヤーは、〈現実〉を受け入れることができないのである。もちろん、ゲーム脳(死語)になってしまった訳ではない。天国を飛ぶオオトリが、翼をもがれ地獄に堕ちるようなものである。その絶望は計り知れない。それが虚無感の正体である。

では、その状態を克服するにはどうすればよいのだろうか。
一度天国を見た以上、地獄に生きることは難しい。アマガミの〈物語世界〉に囚われた心は、そう簡単に〈現実〉を受容れることができない。
そこで私が提示する治療法とは、「地獄に遊べ」すなわち、現実を楽しむこと、それのみである。友達と遊ぶ、家族と遊ぶ、恋人と遊ぶ…日常に転がっている〈物語世界〉を避けて〈現実〉を楽しむには、〈現実〉の楽しさを知るしかないのである。
ここで注意しなければならないのは、逃避に走ってしまうことであり、症状をより悪化させることに繋がる。
もしアマガミの世界を忘れられず、何度も同じルートを辿るようなことがあれば、それは最悪の結果を招くことになる。それは「天国が作り物である」ことを知ることだ。もちろん、アマガミがゲームであることは皆知っている。しかし患者にとっては最も残酷な事実なのである。
さあ、外に出て人と話そう。

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