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右横書きについて

現在日本語を横書きで書くときは、左から右にかけて文字が並んでいく左横書きが主流ですが、戦前までは右から左にかけて文字が並ぶ右横書きもかなりありました。

この右横書きを一行1文字の縦書きであるとする見方があり、『ウィキペディア』にもその記述があります。

扁額や石碑の題字などは一見すると右横書きのように見えるが、前近代にあっては、これらは「1行1文字の縦書き」、つまり縦書きの規範で書かれたものであって右横書きではないのが通常である。

縦書きと横書き」『ウィキペディア』日本語版

しかし本当に縦書きだと言い切れるでしょうか。戦前の右横書きにはこういうのもあります。

右から「テイチクレコード」

「レコード」の長音符が横向きになっています。もしこれが縦書きなら、縦向きになっていないといけないはずです。

私は、文字の並ぶ方向(書字方向)の他に、紙の流れる方向も影響していると考えています。現代で譬えればプリンターが紙を送る方向といえるでしょうか。この方向に沿って、横向きに文字を配置したというのが私の見解です。

古代では竹簡や巻物は左手で持って右手で引っ張るものだったので、目線は自ずと右から左に移っていきます。それにあわせて、縦書きの文章は左方向への改行が定着したわけです。

扁額など横に長いものも、右から左に目線を移動させる巻物などの習慣に倣って、左方向に記述する方法が採られたのでしょう。したがって、ここでは「あくまで縦書き」という意識は稀薄だったのではないでしょうか。

現在でも、車の右側には右から左にかけて文字が排列されているのをよく見かけます。言うまでもなく、これは車が移動する方向に合わせたもので、右横書きもこれと同種のものといえます。

なお、右横書きが本文に用いられることはほとんどなく、多くが見出しなどの大きな文字で、また縦書きの本文と併用されるのが通例でした。この点から見ても、ミクロでは上から下へ、マクロでは右から左へ、という2種類の目線の移動が同居していることを裏づけるものです。

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