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「いざ知らず」

「いざ」は、「さあ」と同じく、行動を呼びかける感動詞。

打ち消しの語を伴って判断を曖昧にする言い回しは「いさ」。

人はいさ心も知らずふるさとは花ぞ昔の香(か)ににほひける
(あなたの方は、さあどうかしら、心の内は私にはわかりません。ただ、昔なじみのこの土地に梅の花は昔のままの香りで匂っていますね)

──紀貫之

したがって、「他のことについてはよくわからないが」の意味で言うなら「いさ知らず」となります。

このように、「いさ」と「いざ」は別の語ですが、『古語林』(大修館書店)には「中世に『いさ』が濁音化して『いざよふ』『いざよひ月』『いざ知らず』などと用いられたため、混同されることがある」と記されています。

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