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交ぜ書きへの違和感

新聞などでは、「常用漢字表」に含まれていない漢字は平仮名で代用することが半ば通例となっています。例えば、「改竄」「漏洩」「隠蔽」はそれぞれ、「改ざん」「漏えい」「隠ぺい」という具合にです(因みに「漏洩」の正しい読みはロウセツで、ロウエイは誤読による慣用読みです)。小学生じゃあるまいし、難しい漢字には読み仮名を付ければ済むのに、どうしてわざわざ平仮名に置き換えるのでしょうか。

漢語の一部を平仮名に置き換える一番の問題点は、形態素を崩してしまうことです。形態素(morpheme)とは、意味を担う最小単位のこと。例えば、「私は台所で料理します」は

私(代名詞)/は(副助詞)/台所(名詞)/で(助詞)/料理(名詞)/し(動詞)/ます(助動詞)

というように品詞毎に分解できます。この斜線で区切られた部分一つひとつが形態素です。形態素のうち、名詞などの内容語(一般的な意味をもつ語)には主に漢字が、助詞などの機能語(文法的な役割を担う語)には主にかな文字が使われていることがわかると思います。日本語は、漢字と仮名文字を使い分けることで、形態素を視覚的に把握できる仕組みになっているのです。

ここで、漢語の一文字だけを平仮名にするとどうなるでしょうか。具体例を挙げると、最近の芸能人の税金申告漏れに関するニュース記事で「過少申告ほ脱罪」という記述を目にしたとき、私なんかは一瞬「過少申告は脱税」というふうに見えたものです。そもそも難読漢字が使われている言葉自体、日常で馴染みがないのですから、一文字だけ平仮名にしたところで、読者にとっては何の手助けにもなりません。それならば、「過少申告逋脱(ほだつ)罪」と読みを併記する方がよほど親切です。形態素を崩すこともありませんし、たとえ「逋」という字を知らなくても、勘のいい人なら辵部(しんにょう)から「のがれる」意味がイメージできることだってあるかもしれません。

更に、読者によっては、「読み仮名を付ければ、それを通じて読み方を覚えられるのでよい」という方もいるようです。このようにせっかく読者の向学心も十分あるのに、その学習の機会をなくしてしまうのは、何とも勿体ないことではないでしょうか。

植字工がいた時代ならいさ知らず、今は組版も全て電子化されているのですから、交ぜ書きを敢えて維持すべき理由などないはずなのです。

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