_間違える_と_間違う_

「間違える」と「間違う」

これらは似たような意味なので、いざ使う段となると、どちらを使うべきかわからなくなってくることがあるのではないでしょうか。

まず、両者には微妙な意味の違いがあります。「間違える」は「ある2つのものについて『取り違える』こと」を、「間違う」は「ある『正しい状態』があるのにそのようになっていない」ことを表します(塩田雄大・NHK放送文化研究所主任研究員)。

文法の観点からもう少し掘り下げてみましょう。「間違える」はア行下一段活用の他動詞、「間違う」はワ行五段活用の自動詞です。

他動詞とは目的語(……を)を伴う動詞です。「<人>が<物>を間違える」という形をとって、対象物に焦点が当てられます。主語には対象の物を選別する主体が来ることになるので、「間違える」は選択を誤るという意味になります。

部屋を間違えない(*間違わない)ように注意してください。
花子は道を間違えて(*間違って)しまったので、30分遅刻してしまった。

自動詞とは目的語を伴わない動詞です。「<人>が間違う」というように、主語自体の動作に焦点が当てられています。したがって、「間違う」は正しい状態から外れているということになるのです。

自信を持て。君は間違って(*間違えて)いない。

両者の違いをより明確にするために、次の2つの例文を考えてみましょう。

数値に間違いがあります。
数値を間違えてしまった。

「間違い」は自動詞「間違う」の連用形が名詞になったものです。第1文は「数値が間違っています」とも言い換えられるでしょう。「数値」自体は本来から外れた状態に身を置いていますが、実際にそういう状況を作り出したのは人間です。ですから、「数値」が主体の第1文には自動詞「間違う」が、取り違えた人間が主体の第2文には他動詞「間違える」が使われているのです。


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玉城武生
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