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『随想録』から

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時評ブログ『随想録』https://ja.takeotamashiro.com では、政治、社会、時事、哲学を中心に記事を配信しています。
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2023年10月の記事一覧

ジェンダーに禍根を残した最高裁の違憲判断

性腺摘出を性別変更の要件とする性同一性障害特例法の規定について、最高裁大法廷は25日、違憲で無効とする司法判断を示した。 大法廷は今回、医学の進展で「必要な治療を受けたかは手術を受けたか否かで決まるものではなくなった」と指摘し、妊孕性(生殖機能)の喪失を性別変更の要件とする特例法の規定は、手術を強制されない自由に見合うものではないと判断した。 だが、「必要な治療を受けた」ことはそのまま「性別変更を認めるべき」であることを意味しない。なぜなら、一口に性同一性障碍と言ってもそ

AIは言語の世界に閉じこもっている

人工知能(AI)の領域で長年議論されている課題として、記号接地問題というものがある。これは、どれだけ優れた回答を出そうとも、言語の世界に閉じこもっており、実の世界と結びついていない以上、その内容を理解していることにはならないというAIの弱点である。これは、カントが明らかにしたように、言語上の抽象的な思考だけでなく、五感も含めた感覚的な要素があって初めて人間の認識が成り立つことを示している。したがって、AIへの依存は、そのまま直観的な認識を抛棄することにもなりかねないのである。

パレスチナ問題の原因はイギリスの「三枚舌外交」ではない

今なお続くパレスチナ問題の原因として、よく槍玉に挙げられるイギリスの「三枚舌外交」。アラブ人、ユダヤ人、仏露に対するそれぞれの協定が互いに矛盾しているというのがその内容である。しかし、3つの協定のうちパレスチナに言及しているのはユダヤ人向けのバルフォア宣言のみで、各協定間に齟齬は見られない以上、パレスチナ問題の原因と結論づけることはできない。 記事はこちら

生成AIの利用に必要なのは結局ネット・リテラシー

「ChatGPT」などの生成AI(人工知能)は、人間のように根拠や確信があって判断を下しているのではなく、関連度合いが高い単語を確率的に並べているに過ぎない。蓄積されたデータから情報を抽出するのだから、結局のところ生成AIもネット検索も、利用する上で大事なのはネット・リテラシーである。 記事はこちら