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商店街 魅力ある店舗 減少のメカニズム

 「魅力ある店舗の減少」と書くと、店舗そのものが転・廃業したように取られがちですが、それだけではありません。従来は、お客が多く出入りして活気があり魅力があったのに、いつの間にお客の出入りも少なくなり、外からうかがれる売場の雰囲気も色褪せているような、という状況に陥っている、魅力的だった売場がいつの間にか魅力をあまり感じられない売場に変わっている、という場合も「魅力ある店舗の減少」に含まれますね。
だから「魅力ある店舗の減少=魅力ある売場の減少」と書いた方が誤解が少ない。店舗と考えると”魅力ある店舗の誘致”が課題になったりしそうです。
魅力ある店舗を誘致すれば、既存の魅力の乏しい店舗のお客が増えるということはないのですからご用心。

 魅力ある売場は、なぜ魅力の無い・ありふれた・陳腐な・どの客相からも     ”私が使える売場じゃ無い” と評価されるような売場に変化(転落)していくのか?

    ここが分からないと「魅力ある店舗(以下「売場」)の減少」という問題に取り組むことはできません。(「自称万能特効策・通行量増大」を除く)

   発端は、商圏外からこれまで我が国には存在しなかった類いの店舗の相次ぐ進出です(以下「進駐組」)。
歴史的に追うと、スーパーマーケット、GMS(ビッグストア)、ショッピングセンター、コンビニ、ドラッグストア、モール。その間にロードサイトにはふりースタンディング(*)でディスカウントストア、カテゴリーキラー、SPA(無印、ユニクロ)などが続々と。
*フリースタンディング:単独出店で持続可能な業種&業態の出店戦略、これが集積を構成するとパワーセンターですね。

これらの間歇的出店ラッシュが商店街に対する影響はといえば・・。

註:間歇的出店ラッシュで商圏内に進駐してきた各種業態、以下、まとめて[競合]と呼ぶことにしますのでよろしく。
競合進駐の影響は、いわゆる「ゆでガエル」症候群的症状で現れます。
1.最初に現れる影響は、既存店のうち、業容が進駐競合の業に包み込まれる業種店の客数減として現れる
新規出店の新奇性を期待して商店街のお客さん達が一斉にでかけます。
ところが、「見物」のつもり出かけたきり、商店街に帰ってこないお客が現れる、数は知れているのですが。
出かけてみたら、あれこれ条件を総合的に比較してみると、新しい売場の方が商店街・行きつけの売場よりも私には合ってるみたい・・と、評価して向こうの得意客になったわけですね。

 もう少し、分析すると・・
今日の今日まで、商店街行きつけの売り場に何の不満も感じていなかったのが、競合の売場を体験、比較したとたん、急に色褪せて見えてきた・・
(全部のお客じゃ無いですよ)
これが[売場の陳腐化(*)]の始まり。

※売場の陳腐化:売場づくり、これまで特に問題無く使っていたけど、自分向きの売場じゃ無くなった(原因不問)、もう行くことは無いし、有っても無くてもかまわない、と評価されるようになること
売場の陳腐化は売場からでは無く、売場―商店街の外で始まります。
商店街―特に直接「客数減」の現象が発生した売場は、何をどうすればよいのか・・
なにしろ昨日まで得意客(当店売場を買物行先として常用してくれる人)だった人たちが櫛の歯を引くように姿を消す・・、売場はまったく変わっていないのに・・
直撃を蒙ると客数2割減は珍しくない(大店法当時)。

 次の段階、売場はどうなる?
減収減益
在庫回転鈍化
がセットで襲来します。
 結果、[業容の意図せざる劣化]がスタートします。
運転資金逼迫:スタッフ、売場維持コスト削減
品揃え:鮮度低下 
一部の顧客から陳腐と見限られた売場は、この二つが継起することで劣化します。陳腐化との評価に基づくお客の行動に対する売場の「対策」の結果、誰の眼にも明らかな[売場の劣化]が始まるのです。
対策としてどのような施策が講じられたか?

競合対策=競合との競争に突入
メディア、取引先等の細切れ情報を参考に競合登場以降の消費購買行動の変容に合わせるため競合の業容を基準に業容を模倣または逆にr差別化する
商品構成:価格帯下落or差別化という二極化
提供方法:セルフ、セミセルフ
環境(結果):什器増加、売場在庫増大
・・・
 このような変化が、各種競合業種・業態が出店するつど、その影響を蒙る業種、業容の売場で起こる結果として、業容の劣化のいっそうの進展→得意客離れの増加、買い回りルートからの脱落等で[魅力の無い、劣化した売場]へ転落する店舗が次第に増え、とおりは陳腐化―劣化した売場が連袂、[魅力ある店舗の減少]が誰の眼にも(店主さん達自身の眼にさえも)明らかとなっています。→商店街の実態が現れた経緯です。

 さらにこの実態をさらに進展させたのが組合の活性化事業です。

組合の三大事業分野
1.通行量増大事業 来街―回遊促進
2.環境整備事業 共同施設整備、景観整備
3.核施設整備事業 商業施設、非商業施設、複合施設一目明らかなのは[魅力ある個店の減少]に対応する効果的な取り組みの不在、特に:景観整備事業が個店に及ぼした負の影響・・。

景観整備という大義の下に組合が取り組んだ
1.ノボリの配付・設置
2.統一看板の整備
3.フラワーポットの配付・設置
4.個店の現状―課題とは無縁の街路灯へのフラッグ配置
5.その他アーケードへのディスプレイ
等々は、商業集積としての魅力の根幹である個店ファサードのアピール=AIDCAプロセスの導入機能―を著しく阻害する[負の効果]を発揮し、今も発揮し続けている・・。
景観を維持するために、陳腐化、劣化している売場をお客には見せない、といいう意思でもあるかのように個店ファサードは[目隠し]の対象・・・?
 
ちなみに個店売場アピールの路面部分への展開は、モールではすべて禁止ですね

通路への販促その他のはみだしはすべて禁止

結 論:
「魅力ある個店の減少」への対策=既存個店群の「魅力ある売場」への転換は、これから先、国、自治体の商店街政策がどう変わっても・変わらなくても、商店街が主体的に取り組まなければならない課題です。
政策が変わるのを待つわけにはいかないし、個店がその気になるのを待つのも、どちらにしても実際に「魅力ある個店への転換」という、「今、眼前にある問題」を解決する取り組み、それに必要な力は商店街組織が獲得しないかぎり、手に入ることはありません。
 考えて見て下さい。「商店街に魅力ある個店を揃える方法と方向」を行政が補助金付きで提案してくれることは無いし(もし実現しても結局取り組むのは各個店、行政にそこまで面倒を見てくれる力は無い)、個店の自主努力を後押しすれば魅力ある個店への転換が実現するということも無いことは火を見るより明らかです。
商店街に立地する中小商業者の組織としての組合(あるいは非方針組織)を結成している目的は、商店街という商業集積を持続していく、その中で個店の繁盛を実現していくということ。
そのためには、すべての小売業にとって不可欠である環境の変化への適応という課題に結束して取り組んで行く方向と方法を今すぐ決定、採用すべきです。

商店街組織の目的と[魅力ある個店の減少]という課題への取り組みは、不可欠の関係にあることをあらためて確認して、[魅力ある売場への転換]の取り組みを中核に据えた「商店店街再生への道」の選択の時だと思われますが、あなたの考えは如何ですか?

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