Winter Holiday Humour
しばらくGrammar and Intonationの更新が滞っていてすみません.早々に第3回の記事に着手したいと思っておりますが,なかなか本腰を入れようとすると結構時間がかります.色々と事情があって都内の実家と自分の家を行ったり来たりしています.記事やマガジンを購入しただいている方,もうしばらくお待ちください.筆休めではありませんが,最近触れた英語のジョークについてご紹介したいと思います.
前の職場で13年間兄弟のように慕ってきたイギリス人の元同僚から,先日こんな英文をSMSで送られてきました.
Just done my good deed for today. This morning at the supermarket check out I was behind an old lady in the queue. Her bill came to £52.80 but when she counted out all her change she only had just under £50. I thought she was probably someone’s nan and I’d like to think someone would have helped my nan out in that situation. She didn’t want me to help her but I insisted, and in no time we had all her shopping back on the shelves...
Have a great holiday.
高校生くらいでも理解しやすいように,少し文法・語法などの解説を加えたいと思います.
第1文:主語のIと助動詞haveが省略されています.現在完了が使われており,「ちょうどいい行いをしたばかりだ」ということを伝えています.my good deedのdeedは名詞で「(善悪の)行為,行い」を指し,do a good [bad] deedのような形でよく使われます.
第2文:時や場所を表す副詞表現が文頭にくることはよくありますが,この場合もそれぞれ時と場所を表す副詞表現が文頭にきています.それぞれthis morning(時間),at the supermarket check out(場所)がその副詞表現になります.ここで注意が必要なのが,check outという英語は「チェックアウトする」のような動詞の意味しかないと思っていると,正しい文構造が把握できないということです.このcheck outは[tʃek ˈaʊt]ではなく[ˈtʃek aʊt]のようにcheckにアクセント(そこで声のピッチを一気に落とす)がきます.つまるところこのcheck outは「レジ,精算場所」を意味する名詞ということになります.「紛らわしくないようにcheck-outやcheckoutのように表記すべきだ」という意見もあるかもしれませんが,世の中には単独の表現を一見しただけではアクセントパターンや品詞がわからない英語であふれていますので,気をつけましょう.
そしてqueueという語ですが,[kjuː]のように発音します.「列,行列」を意味する名詞で,主にイギリスで使われます(アメリカでは同じ意味ではlineという表現が一般的とのこと).この語もまたPeople queued in front of the gate.のように動詞で使われることもあります.
第3文:この文に登場する£という記号はイギリスの通貨単位のポンドのことで[paʊnd]と発音します(2019年12月28日現在は1 pound ≒ 143円).Her bill came to £52.80...ですが,billというのは「勘定」のことで,come to ~には「(勘定が合計して)~になる」という意味です(e.g. How much does it come to?「全部でいくらですか」).£52.80はfifty two pounds eighty penceと読みます(1 penceは1 poundの1/100).she only had just under £50で「彼女はちょうど50ポンドにいかない金額しか持っていなかった」の意.changeというのは「小銭」の意.ちなみにこうした意味では不可算名詞扱いになるためchangesのように-sはつけません.似た意味で「釣り銭」という意味で使われる場合もありますね(e.g. Keep the change.「お釣りは取っておいてください」).
第4文:nanというのはnannyのことで「おばあちゃん」の意.こちらも主にイギリス英語で使われるとのこと(米語ではgrandmaが一般的でしょうか).
I would like to think that someone would have helped my nan out in that situation. ここで少し頭を使います.I would like to think that...「...だと考えたい」の...の中身に自分の祖母が困っている場合を想定した仮定法が使われています.my nam「うちのおばあちゃん」とin that situation「(もし)そうした状況だったなら」が条件節の代わりになっていると考えるとわかりやすいかもしれません.someone would have helped my nan outでは仮定法過去完了の主節の形「would + have + p.p.」で表現されており「(もしうちのおばあちゃんがそうした状況にいたなら)誰かが助けてくれていただろう(と考えたい)」という意味になっています.ちなみに,help + O + out(またはhelp out + O)で「(困った状況などで)Oに手を差し伸べる」という意味で,単なるhelp + Oと同様に頻繁に使われる表現なので,発音の響などもしっかり覚えておくといいでしょう.
第5文:insistは「主張する」という意味の動詞ですが,会話では遠慮している相手に何かを勧めるさいによくI insist.「(遠慮しないで)ぜひどうぞ」という具合で使われます.ここでは,遠慮している女性に対して「ぜひぜひお手伝いさせてください」という風に申し出た,という意味になっています.
ここまでは普通に読んでいれば,「お金を少し払ってあげたのかな」と誰もが思う仕掛けになっています.and in no time...からがこのジョークのオチになります.in no timeは「すかさず,すぐさま」の意(この表現が余計に笑いを誘う).we had all her shopping back on the shelvesで使われているhaveはいわゆる使役動詞.'have + O + C'で「OをCの状態にさせる」の意で,ここでのCはback on the shelves「棚の上に戻して」という表現になっています.つまり,おばあさんの商品を元の棚に戻してあげた,ということになります.
まあこんな感じのジョークでした.笑いというのは想定を裏切られた時に起こることが多いですが,これはまさにそういった類のユーモアですね(ややblackなユーモアですが).ジョークを読み上げた音源もこちらに置いておきます.
ということで,みなさん,今年も残すところあと少し.健やかなよい年末年始をお過ごしください!Have a happy winter holiday!
記事を書き続けるのはモチベーションとの戦いです.書きたい内容はたくさんあります.反応を示していただくのが一番の励みになります.よろしくお願いします.