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「一木一草」 (一乗谷編)

 前田真三写真集「一木一草」(グラフィック社刊、1984年)に、楠本憲吉氏(俳人)が序文を寄せています。少し長いですが、抜粋して紹介させていただきます。

 かねて「写俳同源」という考えを持っている小生とって、春夏秋冬に及ぶ一葉一葉の写真が、まるで一句一句の世界のように完結し、充実した作品として私には迫ってくるのである。
 俳句の世界では「写生」ということをやかましくいい、それが俳句の根幹となっている。写生の目的は何かというと、詠む対象に迫って、対象の持つ「真実性」を引き出すことにある。この場合、「真実性」と「現実性」は次元の異なるものである。真実性とは、モノの持つ現実性の外形の殻を破ってその本質を見極めることをいう。モノの持つアクチュアリティの奥に潜むリアリティを揺り起こすことをいうのである。
 そのためには対象に対する鋭い目くばせからはじまって長い凝視という精神的試練に耐えねばならない。その試練に耐え、その試練を濾過することにより〝発見〟したものを一句に仕上げる――これが写生の本質なのである。
 (中略)
作者の心眼がとらえた対象のリアリティが、見る者を感動の縁に誘い、時に、心のたかぶりを与え、発見の驚きに眩惑させるのであろう。
 (中略)
私たち日本人は、一木一草にもっと深い関心を持ち、熱い愛情を注ぐべきだと思う。しかも自然は人間なんかいなくても存続するが、人間は自然なくしては生きていけないことに思いを到し、山川や草木や鳥獣や虫魚にもっともっと〝熱いまなざし〟を注ぐべきである――というのが、俳人としての、私の、かねてよりの念願であり、人生観であったのだ。

(前田真三写真集「一木一草」グラフィック社刊、1984)

 以上の引用文の前後にもまだ楠本健吉氏の想いが綴られていますが、一部のみ紹介させていただきました。

 前田真三は我が国の代表的な自然風景写真家でした。北海道美瑛を世に知らしめた写真家としても有名です。多くのカメラマンや観光客が彼の作品に魅かれて美瑛を訪れようになりました。

 私は表面的に美しいだけの風景にはあまり心が動きません。しかし、美瑛に限らず前田真三の撮った風景作品には、内面的な美も感じられ時折、写真集を観て感動をいただいています。

 以下は有料記事で恐縮ですが、私が「一木一草」を意図して朝倉氏遺跡で撮った画像です。


国特別史跡「一乗谷朝倉氏遺跡」 門の内地区(推定;武家屋敷跡)



国特別史跡「一乗谷朝倉氏遺跡」 諏訪館跡庭園


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