![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/150440142/rectangle_large_type_2_d8cefec6697b3a0e0316650528ea83d5.jpeg?width=1200)
一乗谷アラカルト 33
朝倉時代の本物の「飛び石」
![](https://assets.st-note.com/img/1723435884311-fH2KQZIbSs.jpg?width=1200)
2011年のことです。この飛び石の存在に初めて気がつきました。
上の画像は大規模武家屋敷跡の前の道路です。
朝倉時代の本物の道路は発掘後は原状保存のため埋め戻され、約30㎝嵩上げされてコンクリート舗装になっています。
その舗装面に石塁(土塀跡)に沿って飛び石が一列に30mほど続いていることに気づきました。
「これは何?」 「なぜここに?」 「何のために?」 観光案内書等にはこの区域そのものさえまったく触れられていません。
頑固者で「?」と思ったらとことん調べないと気が済まない性格です。現場百ペン主義の北野ですから、まずは現場検証です。
その結果、あの有名な風景写真家、中西敏貴氏のお言葉を借りれば、まさに「発見」と「気づき」がありました。
![](https://assets.st-note.com/img/1723436789195-tAxfLxioHH.jpg?width=1200)
低いアングルで撮っているうちに次の4点に気がつきました。
① 道路が向かって左側から右へわずかに傾斜している。
② この南北道路の特徴の一つである道路右脇の排水溝がここの区域には存
在しない。(排水溝が無ければ大雨時には道路が冠水することもあるだろ
う。)
③ 半数以上の飛び石の表面が明らかに加工されている。(滑りやすい石の
表面には滑り止めの刻みを入れたのだろう👇)
![](https://assets.st-note.com/img/1723437361473-1vas8EpE63.jpg?width=1200)
④ さらには、飛び石は土塀沿いの道路面で最も高い位置に並んでいる。
以上の4点から、私の逞しい(?)妄想では
この30mほどの道路区間は水捌けが悪く
雨が降ると、しばしば水たまりになり通行に支障をきたした。
通行の便宜を図るため、交互一方通行だが飛び石を設けた。
しかし、これでも専門家の先生に話せば、いつものように「発想は面白いが北野さん、その根拠は何?」と一笑されるのがオチです。
調べました。一乗城下町の「飛び石」に触れている史書等はないか、根気よく探しました。
ありました!
朝倉氏遺跡博物館の史料の中に、ほんの僅かですが論考の片隅にチラッと記載されていました。要約して以下に記します👇
この道路は復原町並の中では5m幅であるが、この区間では4m幅に狭まっている。
路面は全面に砂利を敷き詰めて固めてあるが、一部には路面のぬかるみに対応するため、笏谷石の切り石を踏み台のように並べている。
上記のような文言を見つけたとき、私の90%の確信は100%になった瞬間でした。
「道路幅が狭くなっている」ことには気づきませんでしたが、
私の妄想の中の「水捌けの悪さ」と史料にある「ぬかるみ」には多少のニュアンスの差はありますが、ほぼ同じことだと解釈しています。
そう考えて現場に佇んでみると、朝倉ロマン、朝倉人への想いがこみ上げてきます。まさしく「タイムスリップ」です。
雨の日には朝倉人はこの飛び石の上を難儀しながらも歩いて通行していたのです。
現在の現場道路は原状保存のため30㎝ほど嵩上げしてありますので、飛び石の実際の高さは往時の道路表面から30㎝の高さだったはずです。
朝倉時代の発掘済の道路は全て埋め戻されていて、私たち現代人が直に往時の本物の道路を歩けるのは、この飛び石の上だけです。
再度、最初の画像を貼らせていただきます👇
![](https://assets.st-note.com/img/1723439328431-AbAkov60nG.jpg?width=1200)
ホラ! 向こうから和傘を差した朝倉人が飛び石の上を、ある人は慣れた足取りで、またある人はおぼつかない姿で歩いてくるのが見えるでしょう。
朝倉時代の本物の庭園
![](https://assets.st-note.com/img/1723498028777-78GcaWSGz0.jpg?width=1200)
最近、
眼が遠くなり、耳も難聴がどくなってきました。
でも湯殿跡庭園では、
見えないものが見えてきたり、聴こえないものが聴こえてくることがあります。
それが、
岡本太郎をはじめ幾多の芸術家をひきつけてきた所以でしょう。
さすがに戦国時代の我が国随一の名庭だと思います。
朝倉氏遺跡見学の本質・醍醐味は、
本物に触れて、見えないものを見る、聴こえてこないものを聴く、これに尽きると思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?