見出し画像

75章 関節リウマチの病態 Pathogenesis of Rheumatoid Arthritis

お待ちかねの、Firestein & Kelley's Textbook of Rheumatology, Eleventh Edition、75章、RAのPathogenesis

キーポイント

 関節リウマチ患者の滑膜は、内膜の過形成と単核球、特にCD4 +T 細胞、マクロファージ、B細胞の浸潤が目立つ。
TNF、IL-6など多くのサイトカインにより関節炎が持続しており、サイトカインは治療薬の標的となる。
滑膜炎の発症メカニズムには、血管新生、細胞接着、活性シグナル伝達カスケード、活性酸素などがある。
滑液には多くの炎症性メディエーター、免疫複合体、大量の好中球が含まれ、プロテアーゼやサイトカインを産生されている。
骨と軟骨の破壊は、それぞれ主に破骨細胞と線維芽細胞様の滑膜細胞によって生じる

全体のキーポイント

はじめに
・関節リウマチの病態は数十年にわたり広く研究されており、滑膜炎や関節障害の持続に寄与する多くの機序が明らかにされてきた。これらの知見の多くは、炎症反応を標的とし、臨床的に大きな利益をもたらす新規薬剤の開発につながった。本章では、RAに関与する多様な炎症性・破壊性経路について述べる。

Synovial Disease and Biologyのキーポイント

滑膜の内膜のマクロファージが活性化され、多くのサイトカインを産生している。
RA患者の内膜の滑膜線維芽細胞(FLS)は異常な攻撃性を示す。
FLS: fibroblast-like synoviocytes (also called type B synoviocytes ). 
リンパ球は滑膜表層にびまん性に浸潤するか、胚中心を伴うリンパ球凝集塊を形成する。
滑膜表層のCD4 + T 細胞は主にメモリー細胞表現型を示す。
RAにおける滑膜線維芽細胞および形質細胞は、抗原主導型の成熟と抗体産生を示し、オリゴクローナリティを示す。
DCは滑膜胚中心でT細胞に抗原を提示できる可能性がある。
マスト細胞は炎症の低分子メディエーターを産生し、血管透過性を亢進させることで疾患の発症に関与する。
好中球はRAの滑膜ではあまりいないが、滑液には多くいる。

滑膜のキーポイント

Pearl: 正常関節では、内膜は1~2層の細胞層しかないが、RAでは4~10層の細胞層となることが多い。

Comment: The increase in cell number in RA can be substantial. In the normal joint, the lining is only one to two cell layers deep, whereas in RA it is often 4 to 10 cells deep.
 ・関節リウマチの炎症の主は滑膜である。滑膜組織はT細胞とマクロファージが浸潤し、滑膜内膜は過形成をきたしている。
・通常1-2層の内膜だが、RA患者では4-10層と分厚くなる。
・内膜表層には、マクロファージ様滑膜細胞(MLS, またはA型滑膜細胞)と、線維芽細胞用滑膜細胞(FLS, B型滑膜細胞)が存在する。
・MLSは骨髄由来であり、CD68、Fcレセプター、CD14などのマクロファージ表面マーカーや豊富なHLA-DRを発現している
・FLSはMHCクラスII 抗原をほとんど発現せず、マクロファージマーカーもなく、小胞体も乏しい。FLSは、血管細胞接着分子-1(VCAM-1)、CD55(崩壊活性化因子)、カドヘリン-11、接合接着分子C(JAM-C)、プロテオグリカン合成酵素であるウリジン二ホスホグルコースデヒドロゲナーゼなど、間葉系細胞としては珍しいタンパク質を発現している。
・RAではMLS、FLS両方とも絶対数は増加し、MLSは内膜のより表層部に集積する傾向にある。

Pearl: 疾患が進行すると、線維芽細胞用滑膜細胞(FLS)はより刺激性の表現型となり、血管内皮を活性化させる。これらのデータは、疾患の進展過程で起こるDNAメチル化の変化と一致しており、早期の介入がより侵攻性の高い疾患への進行を防ぐ可能性を示唆している。

Comment: As the disease evolves, the FLS assume a more stimulatory phenotype and can activate vascular endothelium. These data are consistent with DNA methylation changes that occur during the evolution of disease and suggest that early interventions might prevent progression to more aggressive disease.
・初期のRA患者のFLSは、サイトカインによる血管内皮細胞の活性化とリンパ球を動員することはできない。
・しかし、疾患がすすむとFLSは攻撃性を増し、血管内皮を活性化することができるようになる。RAは「Window of opportunity」というものがあり、早期の治療が重要と言わますが、FLSが攻撃性を増す前にしっかり炎症を抑え込む、ということが大事だということなのでしょうか。FLSはIL-6を出す細胞です。

Pearl: リウマチ様FLSは、おそらくリンパ管や血流を介して、ある部位から別の部位へ移動することができる。 この発見は、攻撃的な細胞であるFLSが関節から関節へ移動することで、多関節炎に進展することを示唆している。

Comment:  The rheumatoid FLS can migrate from one site to another, presumably via lymphatics and the bloodstream. This finding raises the intriguing possibility that imprinted, aggressive cells can “metastasize” from joint to joint and contribute to the polyarticular nature of RA.
- Synovial fibroblasts spread rheumatoid arthritis to unaffected joints, Nat Med 15(12):1414– 1420, 2009. PMCID: PMC3678354.

・マウスのデータであるがかなり興味深い記載です。関節炎を抑えないと炎症が波及していくんですよね、実際。

Pearl: 組織学的パターンには、患者ごと、また一つの関節内でもかなりの異質性がある。滑膜生検の研究によると、サンプリングエラーのリスクを10%~20%以下に減少させるためには、少なくとも6部位を評価する必要があるらしい。

Commment: Considerable heterogeneity exists in the histologic patterns from patient to patient and within a single joint. Synovial biopsy studies suggest that at least six sites must be evaluated to decrease the risk of sampling error to 10% to 20% or less. 
・複数の関節の滑膜細胞を採取した場合は、通常は同じ組織学的パターンのことが多いが、違うパターンのこともそれなりにある、とのこと。6部位とはおそらく1関節のなかで6回とるという意味だと思います。
・組織パターンで薬剤の治療反応性をみる、という過去のスタディーがあるが、JAKiやリツキシマブ、アバタセプトでは失敗している。まだこのテーマで研究されているようですので乞うご期待。

  • Synovial tissue research: a state-of-the-art review, Nat Rev Rheumatol 13(8):463–475, 2017. PMID: 28701760.

Pearl: RAの滑膜Tリンパ球は活性化された表面表現型を示し、共刺激分子CD28を高発現している。そのリガンドであるCD80/CD86は関節の抗原提示細胞にも発現しており、T細胞の活性化に最適な環境を提供している。CD80/86-CD28相互作用の重要性は、アバタセプトがCD80/86を遮断し、RAに有効であるという観察からも支持される。

・T細胞はRA患者の滑膜細胞の30-50%を占め、そのほとんどがCD4+T細胞であり、5%はB細胞または形質細胞である。
・そのT細胞にCD28が高発現していることから、CD28のリガンドのCD80/86を遮断するアバタセプトが有効であるとうのは納得できる話である。

T 細胞の話

Pearl: シトルリン化などの過程を経て修飾されたタンパク質がT細胞を活性化させる。シトルリン化タンパクは抗原刺激の重要な供給源となる。

・Comment: There are ample opportunities in the rheumatoid synovial environment for exposure to antigens and T cell activation. For example, proteins modified through processes such as citrullination provide a rich source of antigenic stimulation by T cell clones that were not deleted during development.
・RAは喫煙や歯周病など炎症によりシトルリン化酵素が誘導され、体の中のタンパクがシトルリン化されます。約3000種類のシトルリン化ペプチドが検出されるようです。
・そのシトルリン化タンパクが、滑膜にいるT細胞を活性化させます。T細胞を活性化させるのは、そのタンパクを抗原提示する必要があるのですが、その抗原提示しやすいかどうかがHLAの遺伝子により決まります。
・活性化したT細胞は膜のマクロファージ(MLS)やFLSを直接刺激しサイトカインを産生させ関節炎が増悪します。つまり、T細胞はMLSやFLSの上流ですね。

B細胞の話

Pearl: リウマチ滑膜には比較的少数のB細胞(全細胞集団の5%未満)が存在するが、滑膜形質細胞とともに、ACPA、RF、および免疫複合体を形成し補体を活性化することができる他の抗体の主要産生細胞である。

Comment:The rheumatoid synovium contains a relatively small number of B cells (<5% of the total cell population), but they, along with synovial plasma cells, are major producers of ACPAs, RFs, and other antibodies that can form immune complexes and fix complement.
・滑膜にいる細胞の5%程度である滑膜のB細胞と形質細胞の過剰反応性も、RAの発症と関節炎の維持に大きく関係しており、抗CD20抗体などのB細胞をターゲットにした治療は有効である。
・B細胞・形質細胞により、ACPA(シトルリン化タンパクに対する抗体)、リウマトイド因子などの抗体により、免疫複合体を形成し、補体を活性化させる。
※リウマトイド因子とはIgGに対する抗体の総称であり、そのほとんどがFc部分に反応するIgM型の抗体である。
・つまり、シトルリン化タンパクに反応するT細胞もいて、B細胞/形質細胞もいる。その形質細胞はACPAを産生する、ということです。やっとACPAがでてきました。
※補体カスケードを活性化し、炎症性メディエーターの産生を促進する(PMID 27621417)。また最近のin vitro研究ではRFがACPA免疫複合体の活性化を高め、マクロファージによる炎症サイトカインの産生を促進することが示唆されている(PMID 24757134, 24618262, 25769920)

Pearl: RAでは、リツキシマブ治療後、末梢のB細胞が消失しているにもかかわらず、滑膜生検では部分的なB細胞減少しか認められない。臨床効果は滑膜のB細胞減少の程度と必ずしも密接な相関はないが、最も著効を示す患者の中には、治療後の滑膜標本中のB細胞数が著しく減少しているものもある。驚くべきことに、B細胞枯渇は滑膜における自己抗体産生やサイトカイン産生を一貫して減少させるものではなく、ACPAやRFレベルの変化は臨床効果を予測するものでもない。 長期間の生検研究から、リツキシマブ治療24週後には滑膜で形質細胞が減少し、この結果は症状の減少と相関することが示唆されている。

Comment: In RA, serial synovial biopsies demonstrate only partial B cell depletion after rituximab therapy despite the virtual absence of peripheral B cells. The clinical responses do not always correlate closely with the extent of synovial depletion, although some patients with the most impressive responses appear to have marked declines in the number of B cells in the post-treatment synovial specimens. Surprisingly, B cell depletion does not consistently decrease autoantibody production or cytokine production in the synovium, nor does a change in ACPA or RF levels predict a clinical response. Longer term biopsy studies suggest that plasma cells are decreased in synovium 24 weeks after treatment with rituximab and that this outcome correlates with decreased symptoms.
・つまり、リツキシマブ血液中のB細胞を消失しても滑膜のB細胞は残っていることがあるので、安心できない、そしてACPAやRFが下がっても、臨床的に良くなることを期待してはだめだ、ということ。

Pearl: 滑膜の自己抗体産生に関する滑膜生検のデータから、B細胞は単にACPAやRFを産生するというだけでなく、疾患においてより複雑で微妙な役割を果たしていることが示唆される。B細胞は強力な抗原提示細胞であり、炎症を起こしている滑膜や中枢リンパ器官でも疾患に関与している可能性がある。

Comment: The synovial biopsy data on synovial autoantibody production suggest that B cells play a more complex and nuanced role in the disease than simply producers of ACPAs or RF. B cells are potent antigen-presenting cells that could also contribute to disease in the inflamed synovium or in central lymphoid organs. ・ここはAbbasのcellular and molecular immunologyを見てみよう。

  • 特異的なBCRにより認識されたタンパク質抗原は細胞内に取り込まれ、MHCclassⅡ分子にペプチドは結合し、CD4+T細胞へ抗原提示する。

  • そうかんがえると、B細胞はCD4+T細胞のさらに上流、というイメージでしょうか?

滑液と滑液軟骨- Synovial Fluid and the Synovial Fluid Cartilage Interface

キーポイント

RAの滑液貯留液には好中球とTリンパ球やマクロファージを含む単核球が含まれる。
RFやACPAのような自己抗体を含む免疫複合体は補体を活性化させ、サイトカインなどの炎症を引き起こす
RAの滑液には、プロスタグランジンやロイコトリエンといった炎症の低分子メディエーターが存在する。

滑液、軟骨のキーポイント

Pearl: RF、免疫グロブリン、ACPA、および様々なペプチドの凝集体は、滑液と接触している軟骨やその他の組織に埋め込まれる。

Comment: The aggregates of RF, immunoglobulin, ACPAs, and various peptides become embedded into cartilage and other tissues that are in contact with synovial fluids. 
・免疫複合体は患者の血液や滑液中に多く存在し、特にIgMやシトルリン化タンパク質を含むものが多い。これらの複合体は補体を活性化させ、好中球や他の炎症細胞をさらに活性化させる。
・RFやACPAなどの抗体は軟骨にも多く検出される。リウマチ患者の軟骨を調べると、健常人のそれと比べて、IgMは40倍以上、IgGは10倍以上含まれている。

Myth: 補体タンパク質を阻害することでRAの活動性は改善される。

Reality: Inhibiting complement proteins has clear therapeutic potential in RA. However,  a humanized anti-C5 antibody has been evaluated in a placebo-controlled study in RA patients. The antibody inhibits C5 activation and function of the C5b-C9 attack complex. Although the monoclonal antibody was well tolerated, only modest evidence of clinical efficacy was found. 
・RA患者ではシトルリン化タンパクの刺激で多くの抗体が産生され、さらに免疫複合体から補体が活性される。ということで、補体を阻害することでRAが良くなる可能性が期待され、ヒト化抗C5抗体がRA患者を対象としたプラセボ対照試験で評価された。この抗体はC5の活性化とC5b-C9攻撃複合体の機能を阻害する。
・しかし、臨床的な有効性はわずかであった。同様に、C5a受容体拮抗薬も炎症を抑制できなかった。

  • Blocking the recep- tor for C5a in patients with rheumatoid arthritis does not reduce synovial inflammation, Rheumatology (Oxford) 46(12):1773–1778, 2007. PMID: 17965442.

・なぜだ!

Macrophage and Fibroblast Cytokines

またまたMLSとFLS再び登場
キーポイント

マクロファージと線維芽細胞のサイトカインはRAの滑膜に豊富である。
サイトカインネットワークには、IL-1、TNF、IL-6、IL-15、IL-18、GM-CSF、IL-33などの炎症性サイトカインが関与している。これらや他の多くの因子が滑膜の炎症を持続させる。
炎症細胞を関節に誘導するケモカインは、マクロファージや線維芽細胞によってよく産生される。
IL-1Ra、IFN-β、IL-10などの抗炎症活性を持つサイトカインはリウマチ滑膜で産生されるが、その量は炎症性サイトカインの機能や産生を抑制するには不十分である。

滑膜のマクロファージ、線維芽細胞のキーポイント

ここでいうマクロファージと線維芽細胞は、MLSとFLSのこと、または含むということでしょうか。ここ復習です。滑膜にいる、RAだと活性化されるマクロファージ様滑膜細胞(MLS, またはA型滑膜細胞)と、線維芽細胞用滑膜細胞(FLS, B型滑膜細胞)
・RAの関節内ではIL-1は線維芽細胞の増殖を誘導させ、滑膜細胞によるIL-6、IL-8、GM-CSFの合成を刺激させて、コラゲナーゼやプロスタグランジンの産生が促進される。

Myth: IL-1を抑制すると関節リウマチの炎症はおさまる。

Reality: IL-1 has been implicated in RA, but inhibition of this mediator using various IL-1–targeted biologic agents has only a modest clinical benefit. Even combinations of IL-1 and TNF-directed therapy do not provide significant benefit beyond TNF blockade alone despite biologic effects on acute-phase reactants and rates of infection. 
・IL-1はRAに関与しているが、IL-1を阻害する様々な生物学的製剤を用いても、RAへの効果はわずかしかない。
・IL-1とTNFの併用療法であっても、TNFを単独に抑制する以上の大きな効果は得られない。 つまり、IL-1はRAの臨床症状において控えめな役割しかない。

Myth: TNFは主に滑膜の線維芽細胞(FLS)によって産生される。
Reality: TNF is a pleiotropic cytokine that has been implicated as a key pro-inflammatory cytokine in RA and is detected in rheumatoid synovial fluid and serum. It is produced as a membrane-bound protein, primarily by synovial macrophages, which is released from the cell surface after proteolytic cleavage by TNF convertase, a membrane MMP. 
・FLSではなく、滑膜マクロファージ(おそらくMLS)によってTNFは産生される。
・IL-1とTNFは、サイトカイン産生、接着分子発現、増殖、培養滑膜細胞によるMMP産生を増強する能力など、多くの類似した活性を持っている。
・TNFを阻害すると多くのRA患者の関節炎は抑制されることから、RAにおけるTNFの重要は明らか出る。

Pearl: TNF阻害薬に十分な効果が得られない患者でも、リツキシマブやアバタセプトのような他の標的薬に反応することがあり、これは複数の独立した経路がRAの病態に寄与しうるという考え方と、疾患の不均一性を裏付けている。

Comment:  Patients with an inadequate response to a TNF inhibitor can still respond to other targeted agents like rituximab or abatacept, which supports the notion that multiple independent pathways can contribute to the pathogenesis of RA and the heterogeneous nature of the disease. 
・TNFの反応性が人によって違うのは不思議ですね。

Myth: IL-6は主に滑膜のマクロファージ(MLS)によって産生されている

Reality: Although many synovial macrophages express the IL-6 gene, much of the IL-6 in the joint is produced by type B synoviocytes.
・多くの滑膜マクロファージがIL-6遺伝子を発現しているが、関節内のIL-6の多くはB型滑膜細胞、つまり線維芽細胞用滑膜細胞(FLS)によって産生されている。
・IL-6阻害薬の臨床効果はTNF阻害薬と同様で、骨や軟骨の損傷に対する保護効果もある。IL-6阻害薬は、TNF阻害薬に反応しなかった一部の患者にも有効である。
・RAにおけるサイトカインネットワークは複雑であり、TNFのような単一のサイトカインを頂点とする明確な階層はない。

Pearl: JAK阻害薬はIL-6阻害の効果により関節リウマチの臨床効果を発揮している。
Comment: JAK inhibitors have also demonstrated efficacy in RA, which decreases activation of STAT1 and STAT3 in FLS and mimics the effect of IL-6 blockade by decreasing IL-6 signaling. 

  • Ann Rheum Dis 71(3):440–447, 2012. PMID: 22121136.

・JAK阻害剤もRAに有効であり、FLSにおけるSTAT1とSTAT3の活性化を減少させ、IL-6シグナル伝達を減少させることでIL-6遮断の効果を模倣している。140
・JAKiもIL-6阻害薬もFLSのところをおさえます。

Pearl: 抗GM-CSF抗体は関節リウマチに有効である

Comment: . Clinical trials demonstrate clinical benefit with anti–GM-CSF antibodies in RA.
・GM-CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子:Granulocyte Macrophage colony-stimulating Factor)はマクロファージへの分化を促進するものであり、協力な好中球およびマクロファージ活性化因子である。
・RAの滑液および滑膜にはGM-CSFが含まれている。主な供給源は滑膜マクロファージであるが、IL-1やTNFで刺激されたFSLもGM-CSFをコードするCSF2遺伝子を発現する。
・抗GM-CSF抗体、mavrilimumabですね。効果があって、副作用も少なかったに広がらなかったのはなぜか。すでにTNF阻害薬などの薬があって、市場に割って入れなかったと聞いていますが、抗GM-CSF抗体が効果があるというのは、病態を理解するうえでも重要ですね。
・と思ったら、抗GM-CSF抗体のotilimabはphaseⅢまできてました。まさかのサリルマブとのガチンコ試験で非劣性は認められず。サリムマブに負け、JAK阻害薬に負けて、完敗してました。

(A)12週目、24週目、(B)各評価時点でACR20を達成した患者の割合。オチリマブとプラセボの統計的比較。その他の比較のP値はデータ表に記載。https://ard.bmj.com/content/82/12/1527

最後に、サイトカインネットワークと滑膜炎のまとめです- ここ大事!テストに出るところ!

関節リウマチ(RA)におけるサイトカインネットワーク。パラクリン経路とオートクリン経路は滑膜内膜の線維芽細胞様滑膜細胞とマクロファージ様滑膜細胞の活性化につながる。正の(+)フィードバックループと負の(-)フィードバックループの両方が存在するが、RAでは前者が優勢である。1型Tヘルパー(Th)またはTh17サイトカインはネットワークを増強する可能性があるが、Th2サイトカインは抑制的である。 FGF、 線維芽細胞増殖因子; GM-CSF、 顆粒球マクロファージコロニー刺激因子; M-CSF、 マクロファージコロニー刺激因子; TGF、 トランスフォーミング増殖因子。

関節リウマチ(RA)におけるサイトカインネットワーク。パラクリン経路とオートクリン経路は滑膜内膜の線維芽細胞様滑膜細胞とマクロファージ様滑膜細胞の活性化につながる。正の(+)フィードバックループと負の(-)フィードバックループの両方が存在するが、RAでは前者が優勢である。1型Tヘルパー(Th)またはTh17サイトカインはネットワークを増強する可能性があるが、Th2サイトカインは抑制的である。 FGF、 線維芽細胞増殖因子; GM-CSF、 顆粒球マクロファージコロニー刺激因子; M-CSF、 マクロファージコロニー刺激因子; TGF、 トランスフォーミング増殖因子。

上の図をながめながら、滑膜のマクロファージ(MLS)と、線維芽細胞用滑膜細胞(FLS)と、T細胞とB細胞あたりを整理します。自信はありませんがKelleyに書いてある内容を強引につなげてみました。

・MLS(Macrophage)- TNF、 GM-CSFを出すので、ここは治療ターゲット。
・FLS(Fibroblast) - IL-6を産生する。IL-6阻害薬や JAK阻害薬がここを抑える。
さらに復習、T細胞と、B細胞について。
・滑膜に多いCD4+T細胞はMLS、FLSを活性化させる働き。これは図だとTh1/Th17サイトカインあたり。
・図にはないが、B細胞はACPAやRFを産生させ免疫複合体をつくり補体を活性させ、滑膜炎を引き起こす。これに加えて、抗原提示細胞としてT細胞を活性化させる。ここを抑えるのがリツキシマブ。

関節炎に関連する細胞とサイトカイン-治療のまとめ

・Th2 cytokinesについては他と比べてRAに関しては重要度が下がるので今回は省きました。

いろいろ飛ばしながら、重要なポイントにしぼって取り上げました。締めの言葉です。

・関節リウマチ(RA)の原因と発症過程は、環境と遺伝子の複雑な相互作用によって引き起こされます。実際、臨床症状が現れる何年も前から、体内で免疫系の異常が始まっていることが分かっています。
・これには、特定のペプチド(タンパク質の一部)に対する免疫反応や、炎症を促進するサイトカインやケモカインと呼ばれる物質の増加が含まれます。やがて、何らかの追加的な刺激(「セカンドヒット」と呼ばれる)を受けた後、体内の抗体が関節内で補体系を活性化させ、他の免疫細胞を関節に引き寄せることで、病気が進行する転換点に達します。
関節の滑膜では、サイトカイン、炎症を引き起こす細胞、タンパク質を分解するプロテアーゼが多く見られ、これらがさらなる免疫反応や関節の損傷を引き起こします
・このように、RAにはさまざまな原因が関与しているため、治療法も多岐にわたります。これには、炎症を引き起こすTNFやIL-6といった物質をブロックする薬、T細胞の共刺激阻害薬、B細胞を減少させるリツキシマブ、サイトカインのシグナル伝達を阻害する薬などがあります。また、「プレRA」と呼ばれる病気の初期段階についての研究が進むにつれて、治療ではなく予防に焦点を当てた新しいアプローチが可能になるかもしれません。

全体の締めの言葉

以上、最後まで読んでいただきありがとうございます!お疲れ様でした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?