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【昭和講談】幕間の思索⑤ 現代講談の難しさと可能性について

 4作目で吉田秀雄さんを取上げました。ここで一つ業務連絡を申し上げたいと思います。

《電通の皆様 並びに 関係者の皆様》 
もし問題がある様でしたら掲載を取り下げますので、まずはご連絡下さい

 株式会社電通にとって吉田秀雄さんは雲上人みたいな方なので、それを取上げるなら、やはり本来は許可が必要ではないかと思った次第で、それに、いきなり

「誰に断って、うちの吉田をネタにしとんじゃい!」

 と怒鳴り込まれては困りますので、一応お断りを入れさせて頂きました。 とは言え、全く金になっていない拙文なので、目くじらを立てられることもないでしょう。でも、相手はあの電通です。社会的な配慮も必要でしょう。

 これが現代講談の難しさだと思います。
 講談はやはり「フィクション」を多分に含みます。それに、芸能ですので、お客さんを喜ばそうとあの手この手を繰り出していく。すると、ちょっとずつオーバーになったり、話が脱線したりで、実像がゆがむことだってある。いやむしろ、歪んでいくものなんです。
 「水戸黄門漫遊記」なんて何処に史実があるのか分からない程、ツッコミどころ満載の大嘘話です。あんな大嘘、許していいんですか? もちろん、許していいんです。

 でも、現代はそうはいきません。取り上げた人、或いは関係者から
「私、そんなこと言ってませんよ」

 そう主張されれば困ってしまいます。また、事実と違うことを話したことで相手に多大な、…たとえ多大でなくてもマイナスの影響が出るなら、責任問題も浮上します。これは結構気を使います。

 その場合、先に「お断り事項、免責事項を述べる」という手もあります。例えばこんな感じです。

さあさ、この度申し上げますお話は、どこまで真実か、はたまた偽りか、真偽のほどは保証致し兼ねますが、此処にお越しの皆様の、好奇心をばくすぐることは請け合いの巷の話題をこの席で、少々大げさちりばめながら、皆さまのお耳に入れたいと、そう思って居る次第でございます。さて、今回のお題でございますが……

 と、先にやってしまうという感じです。
 寄席、劇場の閉鎖空間は必要ないかも知れませんが、放送、配信ではこうした口上が必須かなとも思っています。

 とにかく、「講談なんて嘘八百だよ」という認識をしっかり持ってもらう必要がある訳です。
(それでも本当の話に聴こえる、というのが講談の凄い所なんですが…)
  

 さて、講談の可能性です。
 ストレートに寄席や劇場で楽しんでもらうのが本筋だと思いますが、それ以外にこの芸能を楽しんでもらうためにどんな形で出来るかも考えねばなりません。

 その前に、講談の特徴を整理します。
「講談と落語の違いは?」
「講談と朗読は?」
 そんな疑問を軸にして、こう整理できると思います。

落語よりも概念を説明しやすく、朗読よりも感情や表現で変化を出せる

 渋沢栄一の資本主義を説明するのに落語では堅すぎ、親子の情や義理人情を読み上げるなら朗読よりも深くできる。
 落語よりも堅い読み物ができ、朗読よりも情に訴えかける読み方が出来る。そんなところに講談の強みがあると思います。
 
 ただし、尺の注意は必要です。一席20分くらいが普通ですが、放送では不向きです。だから3分といった短縮講談を工夫する必要があります。
 そんな条件を考慮しながら企画を考えてみました。

 一つ目は「ワイドショー」での講談です。
 芸能人のゴシップを芸能記者のネタを基に演じるというもの。誰々の破局なんていうのはやり易いでしょう。他にも、岸田首相誕生の裏側とか、五輪開催のドタバタ劇など、真実が見えない事柄を取り上げるのも面白いのではと思います。
 講談披露後に、コメンテーターがああだこうだとトークを展開できるでしょう。

 二つ目はゲストを呼んでのトーク番組で、ゲストのエピソードを講談仕立てにします。
 ゲストの大ピンチを救った出来事など、誇張などを交えて披露し、その真偽のほどをゲスト本人から聞くという流れになります。
 これまではフリップが主ですが、それを講談にしようという意図です。その効果を高めるのは、講談でどれだけ感情を高められるかがカギになるかなと思います。
 フリップよりも手間がかかりますが、VTRよりは時間もお金もかからないはずです。

 以上二つですが、要は、講談をもっと使いやすくできないか、講談の強み、魅力を気軽に知ってもらうにはどうしたら良いか、に腐心しなくてはいけないということです。
 
 そして、ここからが重要ですが、講談の方も、笑いやユーモアをもっと磨かなくてはいけないということです。
 これはまだまだ私も届いていないところですが、現代は難しいテーマでも笑いの要素が求められます。そこに応えていかなくては大衆も講談を求めてはくれないのでは、という危機感があります。
 正直、難しいなぁ…と思っていますが、いずれここにも自分なりのやり方を見つけたいと思っています。


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