化学物質過敏症について
はじめに
発症してからこれまで、絵本や漫画の原作やパンフレットの作協力、また新聞雑誌などで取材を受ける機会をいただき発信してきましたが、自身のnoteでも記すことにしました。
今後も書き続けていこうと思いますが、まずはこの病をまったく知らない人でも1記事で読めるよう、概要を綴ってみました。
発症時と現在
2017年6月に発症し、8月に診断確定しました。
すぐに坂を転がり落ちるように悪くなり、発症して半年の間は特に酷かった印象です。
しばらくは日常生活も困難でした。
たとえば、玄関のドアや窓をほんの少し開けることさえできず、一時は寝たきりという日もありました。
現在は復調し、外出も可能です。
ただし反応するものがあれば、喉が締めつけられて咳が出たり、呼吸が苦しくなったりすることは変わりません。
ドアや窓は開けっぱなしにはできず、外出中は活性炭マスクが手放せず、帰宅後は服や持ち物をすべて洗って、すぐにシャワーを浴びます。
外から持ち込まれたものは、すべて洗ったり干したりする必要があります。
発症時のこと
職場で、ある日突然、発症しました。
化学物質過敏症を発症した患者さんの多くが、自分が発症した日付まで覚えています。
それほど爆発的で、衝撃的な体験なのだと思います。
例に漏れず、日付も、その時の景色も覚えています。
数週間前から周辺の強い香りに反応して、喉に違和感があり、たまに咳が出ていたのですが、その時は、ドカンと爆発したように咳が止まらなくなりました。
息を吸おうとしても喉が締めつけられて空気が入ってこず、その場にいられなくなって、ビルの前庭に出ました。
広い外に出てしばらくすると落ち着きました。
しかしオフィス内に戻ると、同じように呼吸ができなくなります。
その日はすぐに早退することになりました。
ところが帰りの電車内で柔軟剤等の強い香りを感じると、また同じような感覚とともに咳が出ます。
以後、毎日その繰り返しになりました。
日増しに反応する対象も増え(後述します)、咳や気管狭窄のみならず、頭痛、めまい、痒み、全身を覆う痛み、記憶力や思考力の低下、光を眩しく感じる、わずかな音を煩く感じるなど、多種多様の不調が出るようになります。
発症して半年ほどで職場は長期休養となり、復帰できず約1年後に退職しました。
発症の原因は?
発症のメカニズムはまだ解明されていないそうです。
いまだに「香りの好き嫌い」や「気のせい」など、個人の問題に落とし込まれがちです。
国際疾病分類(ICD10)ではT65.9、中毒の項目に分類されていますが、中毒症状を引き起こす原因物質の量はミリグラムの単位であるのに対して、化学物質過敏症の場合は、一度でも過敏性を獲得してしまう(「感作する」という)と、ナノグラムやピコグラムという、日常的な使用状況では考えられないほど微量な単位で発症してしまうといわれています。
最近では中枢神経炎症、視床下部炎症が関係していると認められつつあるそうで、今後さらなる研究が待たれます。
症状が出る、反応するものは?
発症に先立って、数年前から、たとえば電車に乗り込むときなどに「甘い匂いが漂っているな」と感じることや、合成洗剤・柔軟剤・芳香剤などの人工的な香りに違和感を覚えることはありました。
発症の数週間前からは特に、職場で周辺の席にいる人たちが強い香りつきの洗剤を使用していたり、喫煙者であったりしたことで、ニオイが強いと感じたり、喉に違和感を覚えたり、あるいは多少咳き込むこともありました。
完全分煙で、喫煙所は別のフロアにありましたが、喫煙から戻った同僚の髪や服や呼気からは煙のにおいがします。
また彼らもそれを気にして消臭剤や香水などをよく使用していました。
発症も、同僚が喫煙所から戻り、隣席で消臭剤のようなスプレーを噴霧した瞬間でした。
そのため発症の直接の原因となったのは煙草、消臭剤(と思われるスプレー)あたりが考えられますが、発症後に反応する対象は次々と増えていきました。
思いつく順にざっと羅列します。
香料入りの柔軟剤、合成洗剤(洗濯洗剤も食器用洗剤もすべて)、香りつきの石鹸やアロマ、食品に入っている香料(つまり人工香料すべて)、農薬、殺虫剤、防虫剤、抗菌・除菌剤、消臭剤、油性ペン
これらのものは今でも近くにあったり使われたりすると、程度の差はありますが、喉が焼けつくように痛んだり苦しくなったりします。
それ以外にも、今はそれほど反応しないけれども、重篤化していたときに反応したものも思いつく限り書き出します。
印刷物(インク、紙、糊すべて、特にカラー印刷)、新聞、合板、建材、接着剤、ウレタン製品など
一番重篤化していたときには、ヒノキの木そのものにも反応しました。
考えてみれば、ヒノキは天然の防虫剤なので当たり前かもしれません。
これらの反応物は、多かれ少なかれ、発症者誰しもに共通するようです。
どんな症状が?
主に締めつけられるような喉の痛み、息苦しさ、咳、めまい、記憶力や思考力の低下。
また、これまでに感じたことのある症状は他にも、頭痛、痒み、全身の痛み、肩や首の凝りなどがあります。
症状は発症者によって様々あり、それがこの病を難しくしている一端ではないかと考えられます。
「化学物質過敏症ならこれ」という症状がひとつに絞れないため、たとえば頭痛を感じれば頭痛薬を飲み、下痢をすれば内科を受診し、うつ状態が続けば精神科へ、というように、なかなか病名にたどり着けなかったという当事者の経験をよく聞きます。
個人差が大きく、広範囲にわたる症状が現れるのが化学物質過敏症といえるようです。
参考までに、以下に症状を並べます。
医療機関について
化学物質過敏症を診断できる医療機関は非常に少なく、全国に数カ所しかありません。
上記のとおり、発症者は多種多様な症状を訴えるため「不定愁訴」と判断され、いくつもの診療科を回っても原因が特定できないという例も多いそうです。今後、非専門医にも十分認知されることを願います。
良くなるためにしたこと
主治医からの指示は以下の通りでした。
発症の機序が解明されていないことや反応する物質とその症状の現れ方に個人差があることと同様、回復状況も人それぞれあるそうです。
同じように主治医の指示に従っていても、ある人は順調に回復し、別の人はなかなか思うように調子が良くならない、ということもあります。
あせらず、あきらめず、誰かと比べたりせず、ご自身の状況や周囲の環境に合わせて取り組まれることをお勧めします。
どうぞお大事に。少しでも楽に呼吸できますように。
書籍
■化学物質過敏症関係の書籍で参考になったもの
『プロブレムQ&A 化学物質過敏症対策』緑風社
『化学物質過敏症BOOK』AEHF JAPAN
『おそい・はやい・ひくい・たかい 79号
香り、化学物質で苦しむお友だち』ジャパンマシニスト社
『マイクロカプセル香害』ジャパンマシニスト社
■作協力
『「香害」パンフ』ジャパンマシニスト 社
『転校生はかがくぶっしつかびんしょう』ジャパンマシニスト 社
『「ただの空気」が吸えなくなりました。』ぶんか社
ご購入いただけたら嬉しいです。
おわりに
1記事にまとめるため、ざっとした内容になりました。
興味のある方は、ぜひ上記の書籍をお求めください。
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